北陸新幹線開通後の「そして」を担う、金沢工業大学のイノベーティブな試みとは

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    北陸新幹線開通後の「そして」を担う、金沢工業大学のイノベーティブな試みとは

    北陸新幹線に乗って来ましたよ。金沢までおよそ2時間半、快適な旅を満喫! 金沢駅前も大いに盛り上がっていて、まさに今一番イケてる観光地といった面持ちです。

    とはいえ、実は観光地だけが賑わっている訳ではないのをご存知でしょうか? アクセスが良くなったことにより、地方でもイノベーションが創出される場が作られているんです。その秘密が金沢工業大学(KIT)にありました。

    北陸新幹線の裏には「期待と不安」が

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    金沢工業大学の工学部情報工学科・中沢実教授を中心に行なわれた、とある催し。テーマは「シンカンセン・カイツウ・ソシテ」。そこには、金沢と東京が2時間半で結ばれる「期待と不安」があるといいます。

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    「北陸新幹線が開通し、金沢は今、非常に盛り上がっています。しかし浮かれている間に何か継続できるものを作ることが大事なんです」と中沢教授は語っています。

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    会場となった金沢工業大学のアントレプレナーズラボは、ラウンジやプロジェクトブース、社会イノベーターブース、イノベーションホールからなるKIT独自のスペースです。

    「起業家を養成するだけでなく、学生それぞれが明確な目的を有し、そこに集まるさまざまな人材との交流を通じて、自らがイノベーションに取り組む人材へと常に変化する起業家マインドを醸成する場」という、まさに今回の催しにピッタリな場所なんです。

    金沢の叡智が集まる4日間

    さておよそ60名が参加し、4日間に渡り開催されたのは、KIT Hackathon Vol.2。そう、ハッカソンです。

    このハッカソンは、参加学生を中心に、金沢工業大学、そして企業が連動したイノベーション人材育成プログラムであるということ。新幹線開通後の金沢をいかに盛り上げるか?…三者が互いに知恵とプロダクトを出し合う「地方都市イノベーション創出ハッカソン」なのです。

    初日から、中沢教授をはじめ、クリエイティブディレクターである宮田人司さんソフトウェアアーキテクツの福島健一郎さんMicrosoftテクニカルエバンジェリストの太田寛さんさくらインターネット株式会社、企画業務担当の横田真俊さんなど、金沢やIT業界を代表する面々の講演会や、ハッカソンの準備としてさまざまなアイディアを出し合うアイディアソンなどが行なわれました。

    このように地方の大学で、複数の企業が参加するハッカソンは珍しく、さらにMicrosoftが学生とハッカソンを行なったのは、過去に数回しかなく、それも首都圏だけだったそうです。

    参加企業の「そして」

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    早速、今回の参加企業であるMicrosoftより、デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部クラウドテクノロジー推進部エバンジェリストの太田寛さんにお話をお伺いしました。

    太田寛さんは、金沢工業大学のロボコン夢考房の実績、そしてアントレプレナーズラボの存在など、IoTをより体現しやすい場を持ち、先進的な取り組みをしている金沢工業大学と協力していきたいと思い、参加を決定したそうです。

    太田寛さん「Microsoftは今、IoTの分野に力を入れています。IoTといえばモノとIT、両方の技術が必要です。弊社のクラウドプラットフォーム Microsoft Azureと、そのキットを組みわせて作った学習コンテンツを公開中なんですが、今回、Microsoftが提供しているコンテンツをハッカソンで使うことによって、モノとクラウドを連携させるようなプロダクトを作ってもらえたらうれしいなと思ったんです」

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    Internet of Thingsキット ハンズオントレーニングは、センサー搭載ハードウエア.NET Micro FrameworkMicrosoft Azureで、ソフトウェアをVisual Studioで開発しながら、体系的にIoT実践に必要な開発スキルを獲得できるというもの。今回のハッカソンには、まさにピッタリなコンテンツというわけです。

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    「企業側として、今回参加学生たちにどのような期待をしているか」という問いに、太田さんはこう語ります。

    太田寛さん「2日目にハンズオンセミナーをする時間をいただきました。まずは、それを使ってプロダクトを生み出してほしいのが1点。そして、私は職業柄いろいろなコンテストに関与していますが、年始めにAzureのユーザーグループが行なったイベントでは、とても面白い作品が何点も発表されました。KIT Hackathonでも殻を破った面白い発想で、今のテクノロジーを使い倒してほしい、そう思っています」

    「IoTでモノとモノとがつながるとき、そのモノを作っている人たちがつながる。そういう意味で人とのつながりを増やし、IoTを増やしていきたいですね」

    KIT Hackathon参加学生の「そして」

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    このKIT Hackathonは大学の授業の一環ではありませんので、単位などにはまったく関係ないそうです。

    開催期間中の4日間は、朝早くから休日を返上して自主的に参加している方々なので、よほどのやる気を持っているに違いないと、お話を聞いてみました。

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    ウェブ系のプログラミングをしたことがなかった情報工学科の村上優太さん。今回は「ウェブサイト上で自分の現在地を取得し、自分に近い位置にある写真が一覧で表示され、その写真をクリックすると、そこに行くまでの道順を教えてくれるウェブサイト」を制作中でした。

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    村上優太さん「観光地に行った時、まずパンフレットで行きたい場所を探しますよね。その中で一番最初に目に入ってくるのは観光地の写真です。そこで皆さんが金沢に来たときに、写真を通じてステキな観光地へ行けるように、このアイディアを出しました」

    今回は金沢の現状を理解し、そこから問題点を見つけ、どうやって解決していくかを考えるハッカソン。村上優太さんのチームは「観光をもっと楽しく便利に」がテーマなんですね。

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    街中のスナップをデータベース化し、外出時に何を着ていけばよいのかが分かるアプリケーション「カナザワキルコレ」を制作しているチームの1人、情報工学科の石塚大貴さん。

    石塚大貴さん「今までは1人で作業していることが多く、チームで何かやりたいと思い、このハッカソンに参加をしました。同じ授業を受けている学生同士だと知識が被ってしまうけど、このハッカソンでは社会人や教員なども参加しているので、さまざまな価値観を見つけることができそうです」とハッカソンに対する熱意を語ってくれました。

    一日中作業をしているハズなのに、満面の笑顔が印象的でした。ホントに楽しそうですね。

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    石塚さんと同じチームにいるのは、社会人の政田一夫さんです。

    政田一夫さん「ソフトウェアエンジニアとして外部の勉強会などにもよく参加しますが、社会人同士だと似たような空間で同じ知識の共有しかできないことが多々あります」

    「このハッカソンでは、学生たちから刺激を受けることの方が多いのです。そんな考え方があったんだと、長く生きていると知らないうちに自分のパターンで物事を考えてしまいます。だからすごく新鮮なんです」

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    学生と社会人が同じ場所で制作する機会は少ないので、普段は見えない新しい視点が見つかるのも、このハッカソンの特徴でしょう。

    高校生から社会人までが参加できる唯一無二のスペース

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    情報工学科の高桑春菜さんのチームが制作しているのは、傘のウェアラブルガジェット。

    金沢は「弁当を忘れても、傘を忘れるな」と言われるほど雨が多い地域。雨が降っても楽しく観光してほしいという思いから傘を使ったアイディアが出てきたそうです。

    高桑春菜さん「自分のアイディアが採用されて、技術がなくても新しいことに携われるのが楽しいです」

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    そしてその技術面を担うのが、金沢泉丘高等学校に在籍中の出村賢聖さん。将来は「ロボットでの起業を考えている」という猛者。果たしてアイディア通りのガジェットは出来上がったのでしょうか?

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    取材中に、高校生と大学教授が、社会人と大学生が熱い議論を交わしている光景を少なからず見ることができたのも、ここアントレプレナーズラボだからこそ、KIT Hackathonだからこそ、と言えるかもしれません。

    大学側/教授側の考える「そして」

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    KIT Hackathonの始まりは1年前に数回行っていたアイディアソンだと中沢教授は言います。

    中沢教授「アイディアソンだからアイディアは出る。でもそれだけだったんです。とある学生から言われたのが、モノ作りをしてそれを後につながるようにしていきたいということ。それが最初のきっかけです」

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    中沢教授「研究柄、企業とやり取りが多く、金沢工業大学でハッカソンをやろうと思っているということを4社ほどにダメ元で話してみたんです。もちろんみんな断るだろうなと思っていました。なぜなら、講演料なし、旅費なし、しかも何かプロダクトを持ってきてくれと(笑)」

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    ところが声をかけた、4社すべての参加が決まったそうです。中沢教授も「これは何かがある」と、そのとき初めてそう思ったそうです。

    中沢教授「企業側は新しいデバイスや端末を準備したときに、学生たちがどう使ってくれるか、どう開発を進めてくれるのかを試したい。大学側は学生たちが教員だけに教えてもらっているだけじゃダメだと思っていたところ、そこがうまい具合にマッチしましたね」

    「将来的に一番いいのは会社や組織に頼らない技術や考えを身につけること。学生たちの思考が、今は大手よりベンチャーになってきています。例えば企業でやっていけるか? そんなことに悩まなくても自分で何かできるような人が出てきてほしい。アイディアも生み出せるし、プロトタイプも作ることができる。そうすれば本人だけで自立できますから」

    と、ハッカソンを通して学生に学んでほしいことを笑顔で語ってくれました。

    未来のイノベーターがいる予感

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    そしてKIT Hackathonの最終日には、計9チームによる発表会が行なわれました。

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    各チームは10分の持ち時間で作品の発表が行われ、その後、審査員からは作品に関する改善点や次のステップへの提案などがありました。

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    そんな中で、審査員ダントツの評価だったのが、雨が多い金沢でも旅を楽しんでもらいたいという目的で開発された傘のウェアラブル「Kasadasu」。

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    傘にプログラムをインストールして機能を拡張していくのが特徴で、発表では「見て楽しむことができるLED機能」、「雨を集め、ポイントを稼ぐゲーム機能」、「盗難防止ブザー機能」の3つプログラムを披露していました。この4日間でアイディアからプロトタイプまで完成させた事が評価の対象となったようです。

    大学、学生、そして企業が一丸となって制作をするKIT Hackathon。地方でも十分に学びの場が広がっていると同時に、金沢工業大学でしか体験出来ないことがあると感じさせてくれました。

    たった4日間とはいえ、1つのテーマから見つけ出したアイディアを、しっかりと考え、それを形にしていく過程が学べるのは非常に貴重な体験です。まさに今一番イケてる学びの場は金沢工業大学かもしれませんね!

    source: 金沢工業大学

    (ホシデトモタカ)