シェアリングエコノミーだけじゃなく、いろんなところに影響しそうな判断。
Uberの運転手は社員で、自営業者ではない。カリフォルニア州の労働委員会がそんな判断を出しました。Uberにとってはたまったもんじゃないニュースですが、運転手から搾取して一大帝国を築きあげているようにもみえる同社のビジネスモデルに不安を抱いている人には朗報でしょう。Uberは、「自分たちは運転手と乗客をつなぐプラットフォームを提供するテック企業で、タクシーサービスを提供しているわけではない」と主張しています。この言い分は、増えつづける運転手に社員と同じ待遇を与えない理由にもってこいでしょう。しかし、Uberはサービス提供のために運転手を雇用しているということが、今回の判断で明確にされたわけです。
カリフォルニアの労働委員会は次のようにUberのビジネスを表現しています。
「Uberは、自分たちを運転手と乗客が移動するビジネスを単純に仲介する、中立で技術的なプラットフォームだと言い張っています。しかし現実は、オペレーションのあらゆる面にUberが関わっているのです。」
今回の判断は、サンフランシスコ在住の元運転手Barbara BerwickさんがUberに求めた賠償請求に応じて出されたものです。UberはBerwickさんに業務上の費用として約4000ドル(48万円)を支払うように命令されました。
さて、前述のとおりUberは自分のことを「プラットフォーム事業者」と言っていますが、同社が運転手に求める厳しい規則は周知の事実です。Uberは運賃を決め、運転手がチップをもらうことも禁止。車の種類も指定し、アプリで評価が低い運転手はお払い箱に。カリフォルニア州はこのような実態を考慮して、Uberは雇用主だと判断したのです。
今回の判断は、不服を申し立てたBerwickさん個人に対するものではありますが、特にカリフォルニア州の他の運転手にとってもUberと戦う武器になりえるでしょう。実は、Uberの運転手が社員として認められようとしたのは今回が初めてではありません。これまでにも何人かの運転手が、自営業者ではなく社員として見なすよう集団訴訟を起こしています。5月には、仕事中にケガをした元Uberの運転手は社員だという判断をフロリダの当局が出しています。
ちなみにUberによると、2012年にカリフォルニア州は「運転手は自営業者だ」という判断を出していて(これは今回の判断で覆ってしまったのですが)、その他5つの州でも同じ結論が出されているのだそうです。Uberの広報担当者は、「今回の判断は(訴えを起こした)運転手個人に対するもので、すべての運転手に対するものではありません。運転手たちがUberを選ぶ1番の理由が柔軟性とコントロールを得られること、というのは重要な点です。ほとんどのドライバーが、他のライドシェアリング企業も含めた複数の収入源を持っているんです」と話しています。
「社員と見なすべし」という判断とは裏腹に、引き続きUberを使って副業したいという人も大勢いるでしょう。一般的に自営業は社員として働くよりも柔軟性があります。そのため、副業なのかそれとも生計を立てているのかによって、運転手の間でも今回の判断については議論が割れそうです。
Uberのビジネスモデルは、雇用主としての責任をとらずに利益を最大化するものになっているので、この判断は大きな痛手です。Uberはカリフォルニアにおいて一部の運転手に社会保障税や医療保険税などを支払わなければいけなくなるかもしれません。それを知った他の州にいる運転手も社員の立場を求めて立ちあがる…ということも起こるかも。
社員なのか自営業者なのか。さまざまなところに波及するであろう今回の判断。納得できないUberは引き続き、裁判で争う構えです。
source: Reuters
Kate Knibbs - Gizmodo US[原文]
(conejo)