新国立競技場で話題のアンビルドの女王...。
原案で特徴的であった首都高までのびる巨大なアーチは縮小され、今度は施工が間に合わないと屋根の建設まで取りやめになってしまいそうな新国立競技場ですが、その建設後も心配になる出来事がオーストリアであったようです。
なんだかホラー映画の一幕のような話ですが、オーストリアの新聞が伝えたところによりますと、ザハ・ハディッドが設計したウイーン経済大学(WU)のビルから大きなコンクリートの塊が地面へ落下したことがそうです。
さる今年の1月2日、約80キロ(176パウンド)のコンクリートの塊が、頭上から地面に落ちました。幸いにしてけが人はいなかったのですが、この建物は大学の経済学部と商学部の図書館が入っていて人の出入りが激しいことから、「一歩間違えば」というところではありました。
しかも、さらにおそろしいことに、こういうことはこれがはじめてではなかったようです。このビルが出来て間もなかった昨年の7月にも、約8フィート(約2.4m) × 4フィート(約1.2m)の、鉄筋コンクリートの床版が崩れて落ちる事故が起きているんです。
ただ、このようなアバンギャルドな建設を行なった建物の場合、こうしたことは決して珍しいことではありません。
それは、建築業者がこれまでにやったことのないような建設手法を執らなければいけないからです。そして、その細部のツメの甘いいい加減な作りから、訴訟も生まれています。
実際の話、スペインの有名な建築家サンチアゴ・カラトラーヴァは、その頼りないくらいに弱い骨組みの建物の設計で、ここ数年というもの、訴訟に追われています。また、マサチューセッツ工科大学(MIT)に「レイ・アンド・マリア・スタタ・センター」を建築した、建築の権威であるプリツカー賞まで受賞しているフランク・ゲイリーも、オープンしてわずか3年で、MITから、壁のひびやかび、水漏れや排水の悪さなどで訴えられています。
そういうことで、これらのような特殊な建築物の場合、こうした欠陥は決して珍しいことではありませが、だからと言って許されるわけではありません。
今までみたこともない形のデザインや設備を実現するためには、それを可能とする技術も求められます。旧国立競技場の解体工事の遅れや、建設費の問題以外にも、新国立競技場の案が何度も修正が加えられ形を変えていくのは、こういった建設後に起こる問題も含めた難しい背景があるのかもしれません。
Kelsey Campbell-Dollaghan - Gizmodo US[原文]
(沢田太陽)