輪郭のぼやけた鶴しか折れない自分が恥ずかしいです。
宇宙工学などにも応用されてきた日本の伝統工芸「折り紙」。先日、Proceedings of the National Academy of Sciencesにおいて、超頑丈な折り紙展開構造物「zippered tube」が発表されました。紙を組み立てていくことで、元の紙よりはるかに頑丈な構造が実現できるのです。
「折り紙工学はここ数年で大きく進歩してきました」と語るのは、共同制作者でイリノイ大学博士課程のEvgueni Filipovさん。彼らが発表したシステムは、橋や建物の設計だけでなく、宇宙船の構造や物流のあり方をも変える可能性をもっているのだとか。研究室で地道に作った折り紙のモデルが、壮大な規模なイノベーションに繋がる...。折り紙のポテンシャルの高さに驚かされます。

「zippered tube」は、「ミウラ折り」とよばれるパターンから生まれたアイディアです。「ミウラ折り」とは、規則に沿って山折りと谷折りを繰り返し、超カンタンに広げたり折り畳んだりできる折りパターンのこと。現・東京大学名誉教授の三浦公亮さんが、人工衛星の機械的構造を簡素化するような、太陽光パネルの自動的に展開する方法を研究しているときに発明されました。1970年に考案されて以来、いまでもNASAの宇宙工学に影響を与え続けています。
下のGIFを見てみましょう。折り目をつけた紙に力を加えると、意図しない方向にも曲がってしまいます。

そこでもうひとつ同じ折り紙を足してキューブ状にします。さっきよりは強度が増しました。

もっとパーツを足していきます。いらない方向に折れ曲がることはなくなり、力を加えた方向にぺしゃんこになってくれます。

曲げようとしても曲がりません。

こんなふうに複数の柱を組み合わせるのは、ウィリスタワーなどの高層ビルにもみられる建築方法。風や地震など横向きの力に対してより耐久性が高くなるそう。ただし、「zippered tubes」がユニークなのは、折り曲げられるようにデザインされていることです。
何枚もの紙で完成させた複雑な構造。じっと見つめてると、なんとなくミツバチの巣にも見えてきました。以下のように思いっきりぺちゃんこにしてもバネのように元通りです。

嬉しいことに今回の研究以外にも折り紙工学の研究はたくさん進行中。「ミウラ折り」の三浦公亮教授が会長を務める「日本折紙学会」などもあります。2014年には、NASAが折り紙を応用した太陽光パネルを発表して話題になりましたよね。
Flipovsさんは次のように話しています。
折り紙工学のおもしろい点は、形を自由自在に変えられること。今までは頑丈な仕組みを作るために重く、耐久性のある材料に頼ってきましたが、今後は頑丈でありながら移動しやすいという新たな材料の時代がくるでしょう。親しみのある折り紙がそんなイノベーションの中心にあると思うと、ちょっと誇らしい気持ちになりますね。
Kelsey Campbell-Dollaghan - Gizmodo US [原文]
(Haruka Mukai)