仕事にはどのくらい使える?
12.9インチスクリーン搭載のiPad Proが発売されました。プロっていうからには、仕事でラップトップ代わりに使えてもいいはずです。ということで、Gizmodo EspanolのCarolos Rebato記者が1週間使ってレビューしています。ライターの仕事はiPad Proでどの程度こなせたんでしょうか? 以下、Rebato記者です。
かつてないほどにラップトップ
iOS 9のリリースは、iPadにとって大きな前進でした。これまでアップルは、iPadがコンテンツ消費だけでなくコンテンツ制作にも優れた端末だと主張してきましたが、現実は理想に届いていませんでした。iOSには基本的な機能が足りず、そのせいでできる仕事が限られていたんです。
でもiOS 9が、部分的にせよその問題を改善したんです。いまiPad Proでは、アプリを2つ(またはピクチャー・イン・ピクチャーの分も数えれば3つ)同時に画面上に立ち上げられるんです。キーボードと組み合わせた機能も向上し、コマンド+タブでアプリを切り替えるなどのキーボードショートカットも使えるようになりました。でもiPad Proが生産性向上のためにもたらした最大のものは、やっぱり巨大なスクリーンです。
ラップトップは基本的に仕事で使うものですが、「仕事」の定義が厄介です。ラップトップでする作業は誰もが同じではないし、すべてのラップトップがそれらのタスクに向いているわけでもありません。建築家、グラフィックデザイナー、医師、パイロット、などなど、仕事によってラップトップでする仕事は違うはずです。

僕の場合、自分の仕事は書くことです。観察し、考え、それを言葉に書きつけ、なるべくほかの人が楽しんだり便利だと思ったりできるようにする、ということです。なので僕がiPad Proを1週間ラップトップの代わりに使おうとしたとき、まずやろうとしたのは「書く」ということだけでした。
僕は間違ってましたわかったのは、問題は仕事が「可能かどうか」ではなくて「どうやるか」だということです。僕はただ文章を書いているだけでなく、Pixelmator(iPad用アプリもあり)で写真を編集し、Slackでほかの記者や編集者と会話し、友だちとはTelegramでメッセンジャーをやりとりし、ReederでRSSフィードをチェックし、Wunderlistで日々のタスク管理をしているんです。ラップトップでこれらを並行して使うのは簡単で、これだけのことをしているという意識もないんですが、いざiPad Proで同じことをしようとすると、けっこういろいろやってるんだなと痛感することになりました。
まだまだ足りない
これらのサービスはみんなiPadアプリを用意していて、そのほとんどはiOS 9やiPad Proの大きな画面に対応しています。そういう意味では問題ないんです。ただ問題は、そんな美しく便利なソフトウェアをいかに協調的に使えるかということです。

たとえば、僕は仕事の95%をブラウザ経由でしていますが、ネット関係で仕事している人の多くは同じだと思います。それで僕はすぐ気付きました、iPad Proでは、Safariのタブをふたつ同時に開いておけないんです。だからWebページをふたつ同時に並べたいときは、ChromeとSafariを画面分割して使う必要がありました。それから、画像をデスクトップからブラウザにドラッグアンドドロップもできないし、キーボードからSonosのスピーカーをコントロールもできません。
iPad Proを従来のラップトップの代わりにしようとすると、障害の多くはiOS 9にあります。iPad Proを仕事で本当に使えるようにするには、細かい調整がかなり必要そうです。
それから、今回テスト中に使っていた純正のSmart Keyboardは170ドル(日本向け価格1万9,800円)もして、僕の中ではチープとは言えません。でもサードパーティのBluetoothキーボードも使えます。

Apple Pencilも組み合わせると、iPad Proは多分グラフィックデザイナーや建築家みたいな、ワコムのタブレットを1日中使っているような仕事の人には良い道具になると思います。グラフィックタブレットとラップトップの興味深い融合、とも言えますが、ただそれだけです。やっぱり、エディタやブラウザやメッセンジャーや画像処理ソフトなどなど、1度に3つ、4つ、5つもアプリを立ち上げる必要がある人には、まだ不十分です。
良いとこもある
とはいえ、iPad Proは僕がタブレットを使った中ではもっとも積極的かつ生産的に使えたと思います。いまのところは。ただそれは、最初に「ラップトップが好きじゃない」と書いたことの裏返しでもあります。つまり、ラップトップだって完ぺきじゃないんです。
トラックパッドは便利だし、MacBookなら3D Touchも使えます。でもそれはスクリーンで直接のタッチ操作と比べれば、ユーザー体験という意味でもインターフェースという意味でも、全然かないません。それにラップトップは持ち運ぶようにできてはいますが、iPadよりずっとかさばります。iPad Proなら、仕事もまあまあこなしつつ、普通のタブレットのようにソファでくつろぎながらも使えます。

iPad Proは、少なくとも机上では、長年PCメーカーがハイブリッド機という形で作ろうとしてきて結局そこそこにしかできなかったものを体現しています。僕はハイブリッド機の使い勝手が好きではなく、Surface Proでも良いと思いませんでした。でもiPad Proなら、多分iOSやアプリのおかげで、うまくできている感じがしました。
だから、iPad Proで仕事がしたいのはやまやまなんです。
でもいまのところ、それはライトな仕事をする程度の道具です。何か書いたり、スケッチしたり、調べものをしたりといった程度です。学生なら、ノートを取ったり、Apple Pencilでスケッチしたりして、それ以外のときは普通にiPadとして使えるのが便利だと思う人もいるかもしれません。でも僕のようなライターにとっては、ただ文章を書くのには使えても、仕事のリアルな現場で、〆切に間に合わせようと必死なときには、やっぱりラップトップが恋しくなることでしょう。
OS:iOS 9
サイズ:12 x 8.68 x 0.27インチ(305.7 x 220.6 x 6.9mm)
重量:713グラム(Wi-Fiモデル)
ディスプレイ:12.9インチ 液晶Retinaディスプレイ
解像度:2732 x 2048(264PPI)
プロセッサ:A9x(モーション・コプロセッサ M9搭載)
カメラ:背面800万画素、前面120万画素
バッテリー:1万307mAhリチウムポリマー電池
RAM:4GB
ストレージ:32GBまたは128GB(950ドル)
セルラーモデル:あり
NFC:対応
指紋センサー:あり
価格:800~1080ドル(日本向け価格9万4,800~12万8,800円)
※Apple Pencil・Smart Keyboard別売り
Carlos Rebato-Gizmodo Espanol[原文]
(miho)