TVを再定義するTV、みたいなものはなくても。
かつてTVは、CESにおける花型でしたが、今年CESに出されたTVたちはかなり退屈でした。でもそれは、悪いことではないんです。
CES 2016でもっとも印象に残ったTVは、やはりというべきか、LGのものでした。これまで長年、奇妙でクレイジーで高価なリビングルームテクノロジーを手がけてきた同社は、今年はクレジットカード4枚分より薄い4K有機ELTVを披露しました。今一般的にTVは壁に掛けるか、壁際に置かれるかで、厚さが2センチなのか2ミリなのかというのはそこまで気にしない人が多いと思いますが…。
もうひとつ注目だったのは、サムスンやソニーの背面美人TVでしょう。スティーブ・ジョブズも「良い家具職人は家具の裏の板にも良いものを使う」と言っていましたし、TVだって裏側まできれいにしなきゃ、ということなのでしょうか。

一方ソニーが発表したBacklight Master Technologyなるものは、TV画面がものすごく明るくて目がくらむほどです。まばゆいほどの美しさというか、まぶしくてよく見えないというか、微妙なとこです。
またサムスンからはもうひとつ、「世界初のベゼルなしTV」を謳うカーブした88インチTVも発表されました。ただ実際はほんのちょっとだけ、ベゼルあるんですけどね。

他にもありとあらゆるTVメーカーがあらゆるTVのスペックをそれなりに向上させ、画質を高め、スマートTV機能を搭載し、ハイダイナミックレンジ(HDR)ビデオをサポートするなどしています。黒はより黒く、白はより白く、それは素晴らしいことです。でもどれもこれも、TVの見方を根本的に変えるものではありません。
実際、きれいなTVを見ようと思ったら、飛行機乗ってラスベガスのCESまで行く必要なんかないんです。今家電量販店にある新しいTVがすでにものすごくきれいなんです。言い換えれば、今年CESで華々しく発表されたTVが物足りないってことは、今までのTV技術の進歩のあらわれなんです。
今売られている一番安い4KTVでも、古い720pのスクリーンと見比べれば、そのシャープな解像度に目はとろけ、バリバリのコントラスト比に垂涎すること必至です。かつてLED TVも当時としてはきれいだったけれど、最初はすごく高価だったし、薄くもありませんでした。比べると今どきの4KTVはもっときれいでもっと薄く、しかも手頃な価格から手に入ります。
さらにCESでムダにすごい新機種が登場することで、地味だけど実用上充分以上の機種の価格は下がっていきます。ごく普通の4Kの55インチTVなんて、どこのメーカーのものでもだいたい800ドル(約9万6000円)とかで買えます。一方ソニーのLEDバックライトTVの場合、2004年の時点で46インチのモデルが1万ドル(約120万円)以上してました。米Gizmodoの当時の記事がこれです。
我々は、TVが大きな箱に真空管を詰めたものだった時代から、液晶やLEDが高価だった時代を越えて現在に至ります。そして今、イノベーションはちょっと飽和状態にあります。とりあえず4Kの次は8Kへと解像度を追求していくんでしょうが、じゃあその次は画面が割れるんでしょうか? 何が来るのか、予想は難しいのが現状です。
でも退屈だろうが的外れだろうが、新しいTVが出てくることで、既存のモデルは確実に安くなっていきます。最先端でなくても相当すごいものがより手頃に手に入るなんて、素晴らしい時代じゃないでしょうか?
Adam Clark Estes-Gizmodo US[原文]
(miho)