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グーグルがAIの研究に注力していることは知られていますが、彼らが開発した囲碁ソフト、その名も「AlphaGo」がついにプロ棋士を打ち負かすという、衝撃のニュースが飛び込んできました。対戦したのは、欧州チャンピオンに3度輝いたこともあるFan Huiさん。結果は5局すべてコンピューターの勝利という圧勝で、同社の開発チームは「今日はAI研究の歴史に残る1日だ」と語っています。
以下がその時の動画。実際の対戦の様子や、Fan Huiさんご本人も登場します。
これがどれだけすごいことなのかは、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグが、まさに昨日出していたコメントからもわかります。彼は「囲碁は、コンピューターが人間に勝つ最も難しいゲームの1つといわれる。研究がはじまってすでに20年経っているが、フェイスブックのAI開発チームは、間もなくその歴史的な瞬間を迎えようとしている」と語っていたばかりだったのです。
The ancient Chinese game of Go is one of the last games where the best human players can still beat the best artificial...
Posted by Mark Zuckerberg on 2016年1月26日
さすがのザッカーバーグも、まさか次の日にそれが訪れるとは思っていなかったでしょうね…。これでグーグルは、AIの世界で少なくともフェイスブックの一歩先を行ったと言えそうです。
囲碁において、コンピューターが人間に勝てないと言われていた理由は、その「手数の多さ」です。コンピューターが得意なのは、なんと言っても計算。膨大な手数をしらみつぶしにシミュレーションし、最良の解を選択するのがコンピューターの得意とする戦法です。しかし囲碁は石や線の数が非常に多く、可能な手数は、10の360乗とも700乗とも言われます。チェスが10の60乗と言われるので、その膨大さがわかりますよね。
この数の多さゆえ、現在のコンピューターの能力では計算が不可能だと言われており、人間に勝つ日はもっと先だというのが一般的な認識でした。しかし、今回グーグルが開発したAlphaGoはディープラーニング技術を応用。従来のようにひたすらシミュレーションするのではなく、コンピューターが自ら学習を繰り返すことで、局面を見極めることを可能としたのです。
これにより、従来の「演算能力の進歩」に大きく依存していたAIが、自ら考え、判断することにも可能性を示したことになり、今後の研究にとって大きな一歩となりうるわけです。
この勝利を受け、AlphaGoは今年3月、現在世界最強の囲碁棋士の1人と名高い韓国のLee Sedolさんとの対決を予定しています。
奇しくも、IBMのディープ・ブルーと、チェスの世界王者カスパロフの初対戦から、ちょうど20年。はたして、再び歴史が塗り替わる日が来るのでしょうか。AIの進歩にももちろん期待したいですが、人間にもまだまだ頑張って欲しいような、なんだか複雑な気分ですね…。
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Michael Nunez - Gizmodo US[原文]
(渡邊徹則)