「重力波の直接検出に成功」の噂でサイエンス系ネットが騒然

  • author 福田ミホ
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「重力波の直接検出に成功」の噂でサイエンス系ネットが騒然

震源は物理学者のツイッター、でも期待!

今週、「重力波が史上初めて直接検出されたらしい」という噂でサイエンス系ツイッター界隈が騒然となりました。重力波とはアルベルト・アインシュタインがその存在を予言した時空の波動ですが、それを直接検出した人はまだ誰もいません。世界中の多くの研究機関が大がかりな装置を使ってその検出に取り組んでいて、もし本当に確認できたなら、100年に1度レベルの大発見になりそうです。

巨大な物体を急に動かしたり、ふたつの巨大な物体を急激に衝突させたり、または超新星爆発などがおこると、静かな池に石を投げ込んだときのように、時空の波が生まれます。物体が大きければ大きいほど周りの時空への影響は大きく、そこでできる重力波も大きくなります。アインシュタインはその存在を1915年に一般相対性理論の中で予言していましたが、それを実験で確認することは不可能だと考えていたようです。

今回その不可能を可能にしたと言われているのは、米国のLIGO(Laser Interferometer Gravitational Wave Observatory、レーザー干渉計重力波観測所)というプロジェクトです。マサチューセッツ工科大学やカリフォルニア工科大学など米国の大学が共同運営しており、2015年には以前より3倍検出感度の高いAdvanced LIGOへとアップグレードしていました。

実はそのアップグレード直後にも、Advanced LIGOによる重力波検出の噂が出回っていました。アリゾナ州立大学の物理学者、ローレンス・クラウス氏が「LIGOで重力波を検出したという噂だ」とツイッターでもらしたのです。とはいえクラウス氏も、それが事実である可能性は「10~15%の確率」だとしていましたし、ネイチャーにコメントを求められたLIGOのスポークスパーソンも「現在データを分析中」だと言うだけでした。

でもその噂が今、クラウス氏のツイッターから再燃しているんです。

以前あったLIGOの噂が、独立した情報源から確認できた。引き続き要注目! 重力波が見つかったかも! ワクワク。

権威ある先生の口がこんなに軽くて大丈夫なのかという気もしますが、LIGOグループの責任者でカリフォルニア工科大学のアラン・ワインシュタイン氏も、米Gizmodoへのメールでこう釘を刺しています。「私の回答は公式なもの以上でも以下でもなく、事実でしかありません。つまり『我々は01(訳注:Advanced LIGOによる1回目の実験)のデータを分析中であり、準備ができたら新たな情報を公開する』ということです。今はただじっと待つのが賢明です。」

たしかにこの手の「世紀の発見」みたいな話を手放しで喜んでしまうと、あとあとダメージがある(かも)、ということは我々も学習しています。でも今回の話は、本当に本当であるという期待が高いんです。ロヨラ大学の物理学者、ロバート・マクニーズ氏も年明け早々、「2016年の予想:Advanced LIGOの重力波直接検出」とツイートしていました。

ただしマクニーズ氏は、情報の出処はLIGOの内部者ではないはずだから、ある程度差し引いて考える必要があるとも言っています。彼はまた米Gizmodoに対し「科学者をサポートする最善の方法は、実験や分析を、本来のやり方でさせてあげることです。正しいやり方でできるだけの時間を取らせてあげましょう。」とも言っています。

そんなわけで、今はとにかく見守るしかなさそうです。

image: Visualization of gravity waves

image Credit: Werner Benger / Wikimedia

Jennifer Ouellette - Gizmodo US[原文

(miho)