自動運転車にハンドルが要らない理由

  • author 福田ミホ
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自動運転車にハンドルが要らない理由

自動車事故の94%がヒューマンエラー。

人間が運転しなくても、目的地さえ入力すればあとは勝手に安全に走ってくれる(はずの)自動運転車。最適なルートの判断はもちろんのこと、周りの状況を察して適宜スピードを変えたり、車線変更したりもしてくれることになっています。とはいえ、何か不測の事態があったときは人間の判断で操作した方がいいんでしょうか? でも自動運転車を開発するグーグルは、人が気まぐれに手を出すのは危険だというスタンスを取っています。

自動運転車のハンドルは、むしろ危険

グーグルでは、自動運転車にハンドルやブレーキといった人間向けの機能は不要、というかなくすべきだと考え、政府にもそんな車を認めるよう働きかけています。グーグルの自動運転車開発部門責任者のクリス・アームソン氏はNPRのインタビューで、こう語っています。

タクシーの後部座席に、乗客がいつでも操作できるように余分なハンドルとかブレーキとかを付けようなんて考えませんよね。そんなのクレイジーです。でも一方で、普段の通勤なんかじゃ運転する気も起きないから車が勝手に走ればいいけど、週末の広々した道路に繰り出す機会があれば運転を楽しみたい、とかもあるとは思います。ただ、注意散漫だった人とか夕食で2、3杯お酒を飲んだ人にいきなり上書き操作させようというのは、正しい考え方じゃないと思います。

この発言でアームソン氏は、自動運転車といってもつねに全自動じゃなく、気が向いたら半自動にしたいかもというニーズに触れてはいます。ただ全体的には、やっぱり人間は操作できない方がいいという従来の考え方を繰り返しています。

この2月、全米高速道路交通安全委員会(National Highway Traffic Safety Administration、以下NHTSA)はグーグルに対し、自動運転車のシステムを「ドライバーである」と認める考え方示しました。これを「国がロボットに人権を認めた!」みたいにセンセーショナルに捉える向きもありました。

でもここで最大のニュースは、自動車会社(または自動運転ソフトウェアを作る会社)が、ハンドルやアクセル、ブレーキが不要だと訴えていることです。現段階でのNHTSAは、車を操作するのは人間だという前提の元で考えています。でもグーグルが考えるように、酔っ払った人間がロボットからハンドルを奪おうとするかもしれないという意味で、これら人間向けのインターフェースは危険なんです。

完全自動運転を前提とした基準作り

だから問題は、人間が運転しないという前提の中で、自動運転車がいかに安全基準を満たせるかということなんです。

この問題について、米GizmodoではテキサスA&M大学交通研究所のConnected and Automated TransportationのプログラムマネジャーであるMike Lukuc氏に聞いてみました。彼は以前NHTSAのConnected Vehicle Researchでプログラムマネジャーを務めていて、グーグルが申請したようなルール作りのための文書を扱っていた人物です。

「NHTSAのプロセスにおける問題のひとつは、全体的に彼らが過去の事故データに基づいた基準作りをしており、能動的というより受動的であるということです」とLukuc氏は言います。彼らのやり方だと、自動運転車という新しいものに合わせてルールを変更するまでに、関連する事故のデータを大量に集めて分析するための長い期間が必要になります。

動き出した米国政府

自動運転車で救える命があると考えれば、手続きにこだわって時間をかけるべきではありません。そしてNHTSAのやり方も、変わりつつあります。たとえば2年前、米国では車対車(V2V)の通信機能搭載をすべての車に推奨するルールができましたが、それは過去のデータでなくシミュレーションとモデリングに基づく初めての判断でした。

グーグルの要求も人命に関わるものであり、同様に従来と違う進め方が必要だと思われます。NPRでアームソン氏が指摘していたように、米国では毎年3万3000人が交通事故で死亡していて、そのうち94%がヒューマンエラーによるものなんです。

そこで、オバマ大統領肝いり自動運転車推進政策の出番です。1月の米国運輸省の発表の中で、NHTSAは自動車メーカーに対し、安全性向上のためのイノベーションテストのためには免責を認めると言っているんです。たとえばBMWは、自動駐車技術に関して例外措置を認められています。運輸省とグーグルのやりとりからすると、グーグルもそんな特別扱いを受けられる強力な候補のひとつなのでしょう。

米国ではカリフォルニア州が、自動運転車に人間のドライバーがつねにハンドルの前に乗るべきとする法案を出し、旧態依然だと批判を浴びています。でも米国運輸省が約束通り半年以内に自動運転車に関するガイドラインをまとめ、NHTSAがグーグルによるハンドルやブレーキなしの自動運転車を認めれば、そちらが州の方針より優先されるはずです。そうなれば、単にグーグルの自動運転開発が前進するだけでなく、自動運転車全体の安全性をさらに向上させられるかもしれません。

source: NPR

Alissa Walker - Gizmodo US[原文

(miho)