先日行なわれたアップルイベントで発表されたiPad Proの新サイズ。すでに購入したという人もいるでしょうけれど、レビューです。購入した人は自分の感想と照らし合わせつつ、購入を迷っている人は参考にどうぞ。以下、米GizmodoのAlex Cranz記者のiPad Pro、9.7インチのレビューです。
ここ最近、タブレットは少々苦戦中。過去2年、売上げは急落し、生産スピードも落ちている。その理由には、スマートフォンやラップトップ、デスクトップのように、製品サイクルがはっきりしていないというのもあるが、大部分はしょせんタブレットはゴロゴロネットするだけの端末だしってところだろう。ゴロゴロネットするのに、最新のプロセッサやGPUはいらない。事足りれば最新じゃなくても困らない。となれば、すでにタブレットを持っているユーザーにとっては、今持っているやつで十分、買換えなくていいとなってしまうのだ。
iPad Proや、その競合端末にあたる「Surface」や「Galaxy TabPro S」なんかは、寝る前にゴロゴロネットするだけの端末以上のモノになろうと努力している。パジャマ姿でも何か創作できることを証明しようとしている。オリジナルサイズの12.9インチのiPad Proはこれにそぐわないかもしれない。が、もっと小さい9.7インチのiPad Proは、アップルのタブレット兼ラップトップという位置に相応しい。

9.7インチiPad Proは、最近の2in1端末の中では小さいほうだ。例えば、スクリーンはライバル端末よりも3インチ小さい。また、スクリーンがタブレット/ラップトップ系にありがちな16:9ではなく4:3なことで、ワイドスクリーンではなくフルスクリーンに。が、それこそが、このサイズ、この画面比率こそが2in1にぴったりなのだ。
iPad miniは、読書以外に使用するには小さすぎる。12.9インチのiPad Proは、映画「ミクロキッズ」気分になるほど大きい。アプリの配置は間延びするし、片手で持っても両手で持ってもしっくりこない。これは、SurfaceでもGalaxy TabPro Sでも言えることだ。もちろん、ラップトップとして使うならば問題ないのだが、タブレットに切り替えると快適さが消える。
9.7インチiPad Proは、今までのiPadを含むメジャーなタブレット(2in1ではないタブレットオンリー端末)同様のスクリーンサイズ。故に、タブレットモードでの使用に違和感がない。しかし、キーボードの存在によって、仕事モード、つまりタイピングを強く意識した初の9.7インチタブレットになる。

「Smart Connector」とアップグレードされたプロセッサは、iPad Pro両サイズともに共通で、これが価格の大部分になると考えていい。初期のiPadユーザーならば、Smart Connectorの存在が新端末へ買換えの理由にもなる。149ドル(12.9インチ用は1万9800円、9.7インチ用は1万6800円)の「Smart Keyboard」を買う気があるならば、Smart ConnectorはiPad Proに柔軟性を持たせる鍵だ。
Smart Keyboardを手にして箱から出したとき、その小ささに驚いたのはもちろん、使うのが嫌な気分になった。キーを包む布のテクスチャ、小さなボタン、詰め込まれたレイアウト、バックライトの欠如、そのすべてに嫌気がさした。が、これも仕事だと割り切って使い始めてみれば、週末には「ラブ」とまではいかないが、限りなくそれに近い気持ちがわいてきた。悪くない。Smart Keyboardはタイプすると、独特の音がする。また、思ったよりも奥までキーをおせる。ラップトップでのタイピングよりもなんだか楽しい気がする。レビュー中の週末に、このキーボードで1記事にとどまらず3記事と、小説の1章をタイプしてしまったくらいには楽しかった。ただ、iPadはラップトップに比べると、マルチタスクに限りがあるため、ラップトップ作業中よりもアプリを切り替えて使うシーンは少なくなったように思う。

Smart Keyboardでのタイピングに満足はしているが、まだ完璧というにはほど遠い。膝おいて使うと安定しない。下に本を置くか、それこそ使わないラップトップを机代わりにしないと使いづらい。あと、正直高い。高すぎる。もし、これを高いと感じないならばリッチな証拠、どっかに寄付すべき。キーボード市場の中でもかなりメカニックでバックライトもあって、好きな色選んでカスタマイズできてUSBポートもついているやつでも、これと同じ価格、あるいはもっと安くで、あるだろうに。この価格設定は、アップルの恥ずべきところ。
また、SurfaceやGalaxy TabPro S同様トラックパッドもない。なくてもなんとかなるのだけれど、値段的にねぇ。Apple Pencil(1万1800円)を買えってのもねぇ。写真や映像、長文の編集をこれでしようと思ったら、がっかりするだろう。Smart Keyboardはキーボード、つまりタイピングだけならいいのだけれど、ラップトップのキーボード面だと思うと不満があるということ。
2in1端末というほかに、True Toneの存在も忘れてはいけない。周辺環境に合わせてディスプレイの色と明度を自動で調整する機能だ。このおかげで、背景が白/黒の画面で仕事するとき、とても目に優しい。

が、この自動でホワイトバランスを調整する機能が仇となるシーンも。例えば、映画を元の色で見たい場合や写真を編集しているときは困る。写真家やグラフィックデザイナーなど、ディスプレイを特定のホワイトバランスに調整している人にはやっかい、イライラのもとだろう。コンテンツを見る側にとってはいいが、作る側にとってはイマイチな端末。ただ、書くというコンテンツ作りならば問題ない。旅行のために小さいラップトップが欲しいライターの自分にはもってこい。ただ、残念なのかやはり高い値段設定か。
・タブレットに最適のサイズ
・書き物するのにもいい
・キーボードの音が独特だけど、クセになりそう
・True Toneのギミックは素晴らしいけど、フォトグラファーには地獄
答えはでてますね。最後の締めくくりがすべて。価格にさえ目をつぶることができれば、ライターにはもってこいの端末だと。くせになるキーボードは使いたいですけれど。
Alex Cranz - Gizmodo US[原文]
(そうこ)