終末映画に出てきそうな外観ですが…。
湯水のようにお金を使うためだけに作られたとも批判される次世代戦闘機、F-35ですが、もうすぐ戦闘態勢に入ることが発表されました。今回米空軍のパイロットが米Gizmodo編集部にやってきて、Adam Clark Estes記者にF-35専用ヘルメットの実物を見せてくれたそうです。見た目だけでも異様な迫力がありますが、実際どんな感じで何ができるのか、以下Estes記者からどうぞ。
まず最初に、F-35開発は本当にはちゃめちゃです。それでもお金がかかっているだけあって、F-35がかなえるであろうことは本当に素晴らしいです。良いんだか悪いんだかというこの思いが、F-35の40万ドル(約4400万円)もするヘルメットを前にしてますます僕を悩ませました。
このヘルメットは米空軍ルーク基地の熟練戦闘機パイロットでF-35Aヘリテッジ隊編隊長のWill Andreotta少佐が実際使っているもので、カーボンファイバーの下にはコンピュータが隠れています。これまで不具合やスケジュール延期が相次いできたF-35開発ですが、いよいよ本当に飛び立てる日が近づいています。そしてそのパイロットがかぶるヘルメットは間違いなく美しく、最新鋭の戦闘機にふさわしいものになっています。
とはいえ残念ながら、僕はこのヘルメットの全機能を試すことはできませんでした。たとえば音声コマンドを聞きとるマイク、ナイトビジョンシステム、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、などです。HUDではフライト情報が見えるだけでなく、赤外線カメラを使ってリアルタイムで全方位が見られたりもするそうです。こちらがそのビューサンプル動画です。
F-35に乗ったパイロットが足元を見ると、戦闘機の床の向こうの地面まで見えます。Andreotta少佐が説明してくれてますが、40万ドルというお値段にはヘルメット本体だけでなく、ヘルメットとF-35をつなぐシステムのコストも反映されています。このヘルメットはF-35という兵器の一部であって、ヘルメット単体だけ切り離してしまうと、ただのものすごく高級なヘルメットになってしまいます。

この「WALL-E」の目みたいなものがHUDのプロジェクターです。そしてその上にあるのがナイトビジョンシステムです。これだけ機能を盛り込みながらも全体の重さは5.4ポンド(約2.5kg)と、アメフトのヘルメットとほとんど同じくらいです(とはいえ、F-35にまつわるあらゆる点が批判されているのと同様、これももっと軽くしろというダメ出しがされていますが)。快適性と安全性をより高めるべく、ヘルメットはひとつひとつ、パイロットに合わせて3Dスキャナーでカスタムフィットされます。でも、Andreotta少佐のヘルメットは(僕専用にできていなくても)、つけ心地がすごく良かったです。

僕は子供のころ、戦闘機のパイロットになりたいと思ってましたし、僕の祖父も父も兄弟もみんな空軍に入ってました。でも僕は目も耳も悪かったのでブロガーになりました。F-35の多難な道のりもずっと追っていて、不具合だらけの戦闘機にペンタゴンが莫大な税金を投入しているのはもう何やってんだという感じでしたね。でも、実際F-35に乗るパイロットにも会えて、話には聞いていたヘルメットをこの手にできて不思議なワクワク感がありました。
ただ今回、ヘルメットのHUD機能を体験できなかったことは、F-35プログラム全体のメタファーのようにも感じられました。テクノロジーとしてはすごそうだし、多分最終的にはすごいことになるんでしょう。このHUDがなければ気づかなかった危険にも対応できるようになって、たくさんの命を救えるんだと思います。あと一歩、なんです。

実際戦場にはまだ出ていないF-35ですが、その姿はすでに航空ショーで見られます。そしてヘルメットだって、こういう機会に拝めます。このカーボンファイバー、ほんとに素晴らしいですよ。
image by Adam Clark Estes
source: Reuters、Defense News
Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文]
(miho)