キーワードは、水上システム。
ニューヨークのイースト川両岸、ブルックリンとマンハッタン間を結ぶ、地下鉄Lトレインが修繕工事のため一時的に閉鎖されることになりました。当初は多くのニューヨーカーがこの話を冗談だと受け止めて笑っていましたが、工事には数カ月から数年かかると見込まれていることが明らかになり、次第にビジネスへの影響を嘆く声が上がるようになりました。
イースト川を渡るための交通インフラとして一部から提案されたのは、新たにゴンドラを設置するというアイデア。移動時間はたったの4分、1時間に5,000人もの乗客が利用できるというメリットがある一方で、地下鉄修繕工事とほぼ同じ建設費用と時間がかかることが指摘されていました、そんななか、建築家やエンジニアが集まり、共同デザインを話し合うシャレットの場がVan Alen Instituteによって開催されたことがGothamistで報じられました。

特に好評だったのが、ウィリアムズバーグからロウアーマンハッタンを徒歩で移動できる「Light Transporter(Lトレイン・トランスポーター)」というアイデア。
巨大な風船のようにモコモコした仮設トンネルで、内部にはインタラクティブに反応するようプログラムされたグラフィックが彩られる仕様なのだとか。また安全性について、AECOMのエンジニアたちは十分に丈夫であるといいます。
どうでしょう? アイデアとしては面白くて話題性もありますよね。ただ、最終的にシャレットで優勝したのは、もっとシンプルなアイデアだったようです。

ブルックリンからマンハッタン間だけでなく、ブルックリンからクイーンズ周辺にある小さな小川や運河をも結ぶ水上シャトルを発案したのは、Youngjin Yiさん、Dillon Prangerさん。
まるで水の都・ベネチアの水上バス「ヴァポレット」のようなアイデアですが、地域の交通システムとしてはかなり現実的。実際、ニューヨークのビル・デブラシオ市長が公表したのも、同じような構想でした。

市長は先日、325億ドルを投じて、2017年6月末までにフェリーの運行サービスを拡大する意向を発表しました。地下鉄を利用するのととほぼ同じ料金で、マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタテンアイランドの5つの行政区で通勤問題を軽減する手段として、2018年には追加ルートの走行も予定されているのだとか。
これはモコモコ巨大な風船のように浮かぶ橋の建設よりも、たしかに現実的。とはいえ、主要な交通インフラとして水上フェリーが以前利用されていたのは、1世紀ほど前のこと。1900年頃、ニューヨークでまだ橋が建設中だった頃です。
ただニューヨークでは地下鉄の利用者が多く、すでに超満員状態であることを踏まえると、公共交通機関の利用者を分散させるのは悪くないアイデアともいえます。特に、多かれ少なかれ今回のLトレイン修繕工事によって起きる交通混乱を考えてみても、もっと長期的な海面上昇を視野に入れても、水上フェリーは市民にとって頼れる交通システムとなる可能性は大いにあります。
そんな一方で頭をよぎるのは、やっぱり東京の満員電車...。もはや数十年のあいだ世界トップレベルで超満員状態にあるはずですが、こちらもいつの日かどうにかなるのでしょうか…。
Top image by AECOM’s Gonzalo Cruz, Xiaofei Shen, Garrett Avery, Rayana Hossain
source: Gothamist
Alissa Walker - Gizmodo US [原文]
(Rina Fukazu)