さまざまな映画で本物と区別のつかないようなCGIがところせましと暴れ回っている昨今、SFやアクションに限らず、どのジャンルもその技術の恩恵にあずかっています。
しかしホラー映画においては、諸手を挙げてCGIを歓迎するムードではないようです。なぜなら観客は、実体がない作り物であるとわかった瞬間に怖さが半減してしまったり、興ざめしてしまったりするから(モンスターや殺人鬼はともかく怨霊に実体はないはずなので、ちょっと不思議な話でもありますが)。
では、最恐のホラーと言われるような作品にCGIは使われていないのでしょうか?
たとえば「死霊館 エンフィールド事件」のVFXの裏側を見ると、確かにそれほど大がかりなVFXは見当たりません。しかし、複数の評論家が「どう見てもCGIにしか見えないキャラクターが登場している」と主張しています。
そこで今回は、Bloody Disgustingが取り上げた「CGIにしか見えない男」をご紹介。以下、一部のホラー映画のネタバレが少しありますので、ご注意ください。
数人の評論家が「『死霊館 エンフィールド事件』にはCGIかストップ・モーションのキャラクターが登場している」と書いているのを見かけたけど、あれはハビエル・ボテットという本物の男性が演じているんだ。彼の体が作り出す動きは最高だね。生きたストップモーション・パペットそのものだ。
これはジェームズ・ワン監督がTwitterに投稿したコメント。
ホラーファンなら何度か彼の演技を目にしたことがあるくらい、ホラーに欠かせない人物となったハビエル・ボテットさんは、1977年にスペインのシウダー・レアルに生まれたマルファン症候群という先天性の難病を抱えている男性です。
マルファン症候群の症状はいくつかあり、その中に長身痩躯(ちょうしんそうく)や細くて長い指があります。ボテットさんは6フィート7インチ(約2メートル4センチ)で100ポンド(約45キロ)という人間離れした体型を生かして、CGIでは作れないリアルな悪夢を生み出してきました。
彼が注目されたのは、2007年に公開されたスペインのパニック・ホラー「REC/レック」。ボテットさんは終盤に登場するガリガリで半裸の人物を演じました。全体像をハッキリ見せなかったことが余計に観客をおびえさせた、ナイトビジョン越しのシーンです。
以下の「REC/レック」のメイキング動画の7分ごろから、彼が特殊メイクを施されている様子が見られます。
ボテットさんをホラー界のスターにのし上げたのは、2013年公開の映画「MAMA」。同氏は、2人の子供に異様な執着を見せる凶暴な女性の霊を演じましたが、今回の「死霊館2」のワン監督と同様、本作を手がけたアンディ・ムスキエティ監督もCGIのモンスターを使ったと批判されました。しかし、浮かび上がる髪の毛といった部分にはデジタル処理が施されているものの、実際はほぼ全てのシーンがボテットさんによって実際に演じられています。
その1年後、ギレルモ・デル・トロ監督はソーシャルメディアを通じて、ゴシックホラー映画「クリムゾン・ピーク」に登場するマーガレット、パメラ、エノーラの3人の幽霊は、世間一般の認識とは異なり、フルCGIではなく、CGIでより怖さを増した俳優によって演じられていると発言。本作でも、ボテットさんのゴーストがCGIだと勘違いされてしまいました。
そんなボテットさんの写真をご覧ください。







最後に「MAMA」のムーブメント・テストをどうぞ。
なお、ボテットさんはホラー映画だけでなく、レオナルド・ディカプリオ主演の「レヴェナント: 蘇えりし者」などにも出演しています。
Image by Bloody Disgusting
source: Bloody Disgusting, Twitter1, 2, YouTube 1, 2
(中川真知子)