もしや「iPhone 7」の最大の功績?
相変わらず発売時の大行列で世界を沸かせた、Apple(アップル)のiPhone 7シリーズ。でも、やっぱり今回の発表は、2年ごとのフルモデルチェンジが伝統だったiPhoneにしては、寂しい限りでした。そもそもこれ以上の進化は望めない? AppleがiPhoneで稼ぎ続けるのは限界かもしれません…。
いろいろとネガティブな批評も目立つ、最新のiPhone。ところが、平凡な似たデザインの踏襲こそ、最大のライバルとされるSamsungへ致命的な打撃を与える要因になった可能性が指摘されています。
すでに今年初めの段階で、iPhone 7はたいした変更点がなく、ユーザーを驚かせる革新的な発表には欠けるものであろうことは予測されていました。そして、いち早く情報をキャッチしたSamsungの首脳陣は、これぞ大チャンスと発奮。とにかく革新性で勝る「Galaxy Note」シリーズの新モデルを、予定より前倒しで発売し、一気にAppleを出し抜く戦略が立てられたんだとか。
実は2011年に初代Galaxy Noteが発売された当時、あんなデカいスマホをだれが使うのか?と世の多くの人があざ笑ったにもかかわらず、いざふたを開けてみると、その後のファブレットブームをけん引する大ヒットシリーズとなったのでした。対するAppleも我慢できなくなり、ビッグサイズの「iPhone 6」シリーズの投入にいたったといわれています。
せっかくiPhoneより大きくて使いやすいことを前面に出していたGalaxy Noteシリーズが、iPhoneのデザインの大型化で失速したのを受け、Samsungは虎視眈々と反撃の機会をうかがっていました。そして、最新のGalaxy Noteの試作機が社内で披露されると、高解像度の新たなディスプレイと進化したエッジスクリーン、虹彩認証システム、高速充電に対応したビッグサイズのバッテリーなどなど、これならiPhone 7を十分に出し抜ける! その確信のもと、異例の突貫工事にて発売前倒しが敢行されたんだとか。
新しいモバイル製品の発売は、適正な開発プロセスの完了と市場への投入時期を十分に考慮し、モバイル事業部によって決定されたものだ。
一連の不十分な準備での未完成な製品投入を批判する声を受けて、Samsungは、このようなコメントを出しました。しかしながら、明らかにiPhone 7を意識しつつ、バージョンナンバーまで飛ばして「Galaxy Note 7」にモデル名をアップし、前倒しに前倒しを重ねてリリースされたといわれています。結果として、相次ぐバッテリー不良の発火問題を受けて全面リコールに追い込まれてしまったのが現実です。
なにかを見過ごす失敗を犯したことは明らかだ。あまりにもライバルのAppleを意識し、出し抜かんと急ぎすぎて、過ちを犯してしまったのだ。
今回のGalaxy Note 7の失敗を、Bloomberg IntelligenceのアナリストのAnthea Lai氏は、こんなふうに総括しています。配下にディスプレイもバッテリーも半導体も自前で製造できるSamsungならではの強みで、全社一丸体制にて急ごしらえで作り上げられた可能性を否定できないGalaxy Note 7。無理な販売スケジュールによるしわ寄せから、前例にない規模のリコール問題へつながったと指摘されています。
いずれにせよ、今回のGalaxy Note 7のつまずきは、Samsungに巨額の損失をもたらすばかりか、企業イメージの大幅ダウンは避けられません。リコールに応じるまでのプロセスの悪さも、かえって非難を高めてしまった形でしょう。平凡なiPhone 7、ライバルのSamsungを吹き飛ばす大手柄か!? そんなふうに米国では揶揄されてもいるみたいですけれどね。
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source: Bloomberg
Hudson Hongo - Gizmodo US[原文]
(湯木進悟)