当分アップルカーは幻で終わりそう

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当分アップルカーは幻で終わりそう

「われわれは鋼、粗鋼から車を作っている。それがどれだけのことか、外野にわかるわけがない」

アップルカーの噂が広まった昨年、GMのDan Akerson CEO(当時)はこう言ってましたけど、予言的中ですね。Googleに続きAppleも車が大揺れです。

年初に自動車開発プロジェクト「Titan」のトップが辞めたのと入れ替わりに、BlackBerry傘下の車載OS開発会社「QNX」創業者のDan Dodge氏が夏に起用され、「クルマ作るのあきらめてソフトに専念しちゃうんじゃ…」と部内で混乱が広まり、数百人規模で解雇・異動・辞職が起こっているのだとBloombergが伝えています。

方向性が不透明になったことで辞める人が続き、技術開発で遅れが生じ、サプライチェーン確保も難航し、当初は2020年デビューを目指していたのが2021年に先延ばしに…。残されたメンバーには、2017年後半までに実現可能性を実証しなければならないという魔のデッドラインも設けられました。

となると一番厳しいのはハードウェアの開発の人たちですよね。元GMトップが言っているように、車1台作るのは、コード書くみたいにはサッサカ進みませんものね。デトロイト(自動車産業)はもちろんサプライヤーをがっしり押さえているだろうし。テスラみたいに、ちょうど閉鎖になって困っていたGM&トヨタ夢の合弁NUMMIの自動車工場を破格値で買う、なんていう棚ボタもないだろうし。

ボブ・マンズフィールド新体制のTitanプロジェクトは現在、John Wright(ジョン・ライト)率いるソフトウェア開発チーム、Benjamin Lyon(ベンジャミン・リオン)率いるセンサー開発チーム、D.J. Novotney(D.J.ノビトニー)率いるハードウェア開発チームの3本柱です。夏に入ったドッジ氏はライト氏の直属となって、自動運転のOSを開発して自動車メーカーに売るみたいです。普通に考えれば、デッドラインをクリアできるのはここですので、ここが主力になっていくものと思われます。

世界の自動車産業は年間売上2兆3000億ドルの巨大市場ですけれど、自動車メーカーはどこも薄利のギリギリでがんばってます。超高級車でもない限り、利益マージンは10%未満が普通。利幅30%、35%が当たり前のAppleにとっては旨味が薄いことに遅まきながら気づいたのかもしれません。

それはBusiness Insiderが2015年の早い段階でもう指摘していましたけどね。その試算によると、ポルシェが2013年16万5000台売って得た利益は20億ドル、史上最大級の利幅製品のiPhoneをもつアップルは年間純利益600億ドル。仮にアップルが一夜にしてポルシェ並みに利益マージンの高い車を作って同じ台数を売りさばいたとしても、「利益が5%ぽっきり上がるだけで終わってしまう」んだそうですよ? 士気も下がりますわ…。

image: Digital Trends
source: Bloomberg, 日本版

(satomi)