カバーアートのその先へ。
エレクトロニック・ミュージシャンのDaedelusが先月リリースした最新アルバム『Labyrinths』。このアルバムはデジタル・アルバム・アートとしても展開されていて、音楽を3Dアニメとしてリアルタイムで生成するメディアプレイヤーからも視聴できます。
さらにこのアートワークのすごいところは、オーディエンスがその3Dアニメをいじることが可能なインタラクティブなアートワークでもあるという点です。
Daedelusと制作に携わったインタラクティブ・グループのWhitestoneが、このようなインタラクティブ化したアートワークの制作意図をネタ元The Creators Projectに語っています。
かつてはアルバムを購入して、そのカバーアートを眺め、中身にワクワクしていたことを懐かしく思うというDaedelusは、今やカバーアートなんてサムネイルで表示されるぐらいのものだと指摘します。最近の音楽業界で得たものや失ったものについて考えるなかでWhitestoneと出会った彼は、制作の意図についてこのように説明しています。
僕たちは、カバーアートに見向きもしないオーディエンスにとって、それがどのような役割を果たすのか、そしてポストフラットメディア時代はどうなるのか?ということを想像し始めたんです。僕たちが作った作品は、オーディエンスに再び(アートワークに)触れて驚いてもらおうとするものです。
「オーディオビジュアルの次の避けられないステップはインタラクティブ性だ」と語るWhitestoneのRoey Tsemah氏の協力によって実現したLabyrinthsのアートワークは、ブラウザ内でカーソルを動かすと、表示されている3Dアニメがそれに従って変化するようになっています。同氏いわく…
アルバムを聴くというコンテクストの中で、歪ませたり、広げたり、自分自身がいじったものを保存したりして、ファンたちはアートワークの3Dアニメ化されたバージョンに触れることができる。
…とのことで、実際に3Dアニメをいじった動画のGIFがこちら。

これまでアルバムのアートワークというと、オーディエンスは鑑賞するのみで一方的なものでした。それが思いのままにアートワークをリミックスしたり、シェアできるようになったりとインタラクティブになることで、アナログ時代に比べて注視しなくなった「アルバムのアート部分」が改めて注目されるようになるかもしれません。それは、アナログ時代に持っていたであろう新譜のカバーアートを見たときの高揚感とは別物かもしれませんが、デジタルへと媒体が変わっても「アルバムのアートに触れる」という体験を提供しようというアイデアは、どこか人間らしくてステキだと思います。
さらに、こうした音楽とインタラクティブのアプローチはオーディオヴィジュアルの新たな地平へとつながっていくかもしれません。オーディオヴィジュアルにおいてインタラクティブ性が重要とTsemah氏が語るように、音楽の領域においてもインタラクティブな仕掛けは多く登場してきています。そのなかでこうしたデジタルアートが生まれたことがどのように影響を与えるか、も楽しみです。
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image by Whitestone
source: Whitestone, The Creators Project
(たもり)