大統領選、ドナルド・トランプ当選で今後の宇宙開発はどうなるの?

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大統領選、ドナルド・トランプ当選で今後の宇宙開発はどうなるの?

大いに盛り上がったアメリカの大統領選挙はドナルド・トランプ氏の当選で幕を閉じました。決着がついた今、改めて気になるのはその政策。次期大統領候補が宇宙開発についてどんな政策を考えているのか、米GizmodoのMaddie Stone氏が記事にしています。

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現時点で確証をもって言うのは難しいものの、NASAは今後4年間はおそらく宇宙での活動や有人宇宙飛行にもっと注力するように指示され、Ars Technicaによると地球科学のプログラムは深刻な予算削減に苦しむかもしれないとのこと。

これまでトランプは宇宙開発についてほとんど発言していませんでしたが、数カ月前になって、宇宙がいかにすばらしくてアメリカがどうリーダーシップを取るべきかという中身のないきれいごとを言い始めました(しかしながらChemical & Engineering Newsの報道では、9月の政策綱領において、宇宙はアメリカだけのものではない、とも発言しています)。

全体的にみて、トランプの宇宙開発に関する発言は、彼の政治全般についての発言を反映する傾向にあり、それはつまりお役所的なムダな仕事をしているNASAを、アメリカが誇るリーダーシップと発明の才が再生したシンボルへと変身させる救済者の役を自身に与えているということです。彼はこの間、オーランド・サンフォード国際空港で行なった集会で「トランプ政権下では、フロリダとアメリカが星々への道へと導く」語っていました。

では、次期大統領候補は実際には宇宙開発の分野で何を成し遂げたいと思っているのか? 数週間前、トランプ陣営は元下院議員のRobert Walker氏を起用しSpace News上で宇宙開発についてのアウトラインや論点を詰めるための動きを見せていました。10月26日に行なわれたFAA(連邦航空局)商業宇宙輸送諮問委員会の会議でWalker氏が論じた宇宙政策の変化で最も重要だと思われたのが、トランプ政権はNASAの予算を再び「宇宙探査」にあてる一方で、地球科学のリサーチは縮小するというものでした。

「NASAが地球観測ビジネスから撤退すべきだというアイデアは全く何の価値もない」とジョージ・ワシントン大学宇宙政策研究所のJohn Logsdon教授は言います。オバマ政権では最優先事項だったNASAの地球科学部門はこのところ上手くいっており、その予算は2009年の15億ドル(約1580億円)から今年の19億ドル(約2000億円)へと着々と増えていました。

もしトランプ政権と協力的な上下両院がその予算をカットしたら、地球のバイタルサインのデータを24時間体制で集めている地球観測衛星が関わるこのプログラムがどうなるかはまだわかりません。Walker氏はNASAの地球観測ミッションのいくつかをNOAA(アメリカ海洋大気庁)に移すかもしれないと言っていましたが、Logsdon教授が指摘するようにNASAとNOAAの科学的なリサーチ能力は互いに代替できるとは限らないのです。

Walker氏はさらに、「今世紀が終わるまでは人類が太陽系を探査する」、そして「低軌道での活動はSpaceXやOrbital ATKのような民間企業にこれまでよりも譲渡する」といったトランプの選挙運動の公約も強調していました。後者は、ジョージ・W・ブッシュによって始められ、オバマ政権でも存続された政策の継続を表しています。この政策目標のめざすところは、国際宇宙ステーション(ISS)を官民パートナーシップに変えることです。

Walker氏が提案したなかでもう1つ注目すべき点は、アメリカ国家宇宙委員会(NASC)を再び設立し、副大統領がその指揮を執るということ。元々は民間そして軍事での宇宙活動を調整するため、1958年にその前身が設立、1973年に当時のニクソン大統領によって廃止され、チャレンジャー号爆発事故のすぐ後、ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領によって数年の間再び設立されました。現時点では、今後のアメリカの宇宙政策の立役者としてマイク・ペンスが任命される以外は、復活したアメリカ国家宇宙委員会が何をするのかは不明です。

以上のことからトランプと宇宙開発に関してわかったのは、地球観測から距離を置いた彼の政策目標は今のところ、夢見がちな発言に重きを置いていて、詳細を軽んじているということ。

NASAの全体予算は変わるのか? SLS(スペース・ローンチ・システム)はどうなるのか? 再び人類を月に送ることのほうが、NASAの小惑星再配置ミッションよりも支持を得るのか? などの疑問に答えが出るにはしばらくかかりそうです。

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image by SpaceX - Flickr
source: SpaceNews, SpacePolicyOnline, Chemical and Engineering News, Space.com, Ars Technica

Maddie Stone - Gizmodo US[原文
(たもり)