悔しかった。いや、どこか寂しかったのかもしれません。いま、Appleプロダクトの主役はiPhoneです。いちばん売り上げてるのはiPhone。いちばんポピュラーなのもiPhone。わかってます。iPhone 7、素晴らしい。
でも、ずっと待ってたんです。新しいMacBook Proを。
4年ぶりに生まれ変わったMacBook ProにAppleはこれまでに見たことのないものを与えました。Touch Barです。これまでファンクションキーが並んでいたところに横に長い棒状のマルチタッチディスプレイが見事に収まっています。あたかもずっと前からここにいたよ?というような顔をして。それも表情をコロコロ変えながら。MacBook Airからの乗り換えを検討しているひとも多いであろう、この新しいMacBook Proを4日ほどの短い時間ではあるものの、実際に使ってみたのでレビューします。今回メインで使ったのは13インチモデルのMacBook Pro。もちろんTouch Bar付きです。
Touch Bar
ずらっと並ぶ絵文字アイコンを見るだけでテンション上がります。
長年キーボードを操作してきた人の習慣はすぐには変わりません。対応しているアプリもまだお世辞にも多いとは言い難い状況ではあります。が、このTouch Barにはそれを押してもまだ有り余る魅力ありです。何よりもまずこれに触れなければならないでしょう。

キーボードの上に第3の入力インターフェースが増えたと思ってください。いや、改めて書く理由もなく間違いなくその通りなのですが、言いたいのは、ときどきちょこちょこタップするだけの、ボタンでもいいものをタッチディスプレイにしただけのものではないということです。
Apple純正の写真アプリ、iTunes、Final Cut Pro、メッセージ、メモに加えて、Pixelmator、djay ProなどのアプリでTouch Barを使ってみたのですが、トラックパッドやキーボードを操作せず、Touch Barだけで一連のタスクをこなすことができたのは、誇張なく新体験です。

写真アプリで写真を編集する際やdjay ProでのDJプレイが想像しやすいでしょうか。写真を選択し、編集画面を開いてトリミング。フィルターをかけ、細かな色味を調整する。今かかっている曲にかけるフィルターを選び、楽曲の展開に合わせてリアルタイムでエフェクトのかかり具合を調整する。その一連の動作をキーボードとトラックパッドを使わず、Touch Barだけでできます。
似たもので言えばiPadで両手の指を使ってタスクをこなす感覚に似ているのですが、それをMacでできている新鮮さはこれまでに体験したことのないものだったのは間違いありません。Touch Barはたった1列のラインで、Macの新しい可能性を見せてくれています。アプリによっては、キーボードよりも使用頻度が高くなるものも出てきそうです。
これまでのように画面の明るさやミュージックコントロールなどにすぐアクセスしたい場合も、fnキーを押している間はそれらが表示されるので、まったく問題ありません。ちなみに、この設定はシステム環境設定で細かく設定が可能です。
Touch ID


Touch Barの右端にあるMac初搭載のTouch IDもとても便利です。ストレスなく素早く認証してくれるため、ログイン時やApple Payでの支払い時に重宝しそうです。人類はこうやってパスワードを忘れていくんですね。
キーボード
心配せねばならないのは、キーボードです。MacBookで採用されたバタフライ構造キーボードの第2世代が搭載されているのですが、使いはじめてすぐはペチペチしたタイプ音が気になりました。近くで仕事をしている同僚がいるオフィスでは、音が迷惑になっていないか心配になったほど。少し神経を使い過ぎたのかもしれませんが、MacBook Airのキーボードより大きな音がすることは確かです。
ファン
逆にファンは驚くほど静か。ファンレスなのかと疑うほどです。SafariとChromeで複数のタブを開き、夜フクロウとiTunes、写真アプリ、Reeder、Slackが常駐している僕の環境では一度もファンの音を聞いていません。この原稿を書いているのはとても静かな部屋ですが、それでもファンの音は聞こえません。
トラックパッド

大きくなった感圧トラックパッドはタッチジェスチャの操作が多くなった今のmacOSにとってはいい入力インターフェースです。とにかく大きくて気持ちがいいくらい。米Gizmodoのレビュアーが自分の手と大きさを比較したくなる気持ちもわかります。特に15インチモデルは冗談かと思うほどのデカさ。
筐体




さらに薄くなった筐体、スペースグレイのカラーリング、新しくなったスピーカーグリルなど見た目はこれまでのMacBook Proでいちばんかっこいいデザインです。今となっては天板のAppleロゴも光らない方がクールに感じます。13インチモデルはMacBook Airの13インチモデルよりもフットプリントが小さい上に薄いので、満足度が高いです。
バッテリー
バッテリーは、Appleの公称ではiTunesのムービー再生とネットサーフィンで10時間保ちます。今回1日の仕事のなかでどのくらい保つのか試してみたところ、午前10時半から上に書いた環境で編集作業を行い、午後5時25分に力尽きました。節約などなしでガンガン回して7時間ほどの持続です。厳密なテストではないので参考までに。
Thunderboltポート

そして忘れてはいけないのが、4つのThunderbolt 3ポート。外部入力ポートはこれ以外にはイヤホンジャックしかありません。このレビュー用の撮影データをソニーα6300から取り込みたかったのですが、SDカードスロットはもちろんUSBの変換アダプタも手元にないため、一旦普段使っているMacBook Airに取り込み、AirDropでMacBook Proに移しました。今回は時間が許したので問題なしですが、これが撮影中のカメラマンの身に起こるとなると……。Appleは良心的に変換アダプタを値下げする対応を行なっていますが、それでも今はまだ過渡期だと感じざるを得ません。
買い?

やはりこのMacBook Proには最後までTouch Barと外部ポート問題が残ります。逆に言うと、それ以外はほとんど完璧なんです。Touch Barは必要ないと言ってしまえばそれまでですが、そう言うにはまだ時期尚早で、Macに新しい可能性をもたらした期待はとても大きなものです。
ポート問題はいずれなくなるものが今なくなっただけ、とも言えます。4年かかったアップデートは、この先の数年を見据えてのアップデートでもあるわけで、それがProの名を冠するMacBook Proであればこの飛躍は我々ユーザーとしてもこの先数年のメリットになり得るのです。

MacBook Airの代わりと考えれば、少し値が張りますが14万8800円〜のTouch Barなしモデルは間違いなく買いでしょう。完成度の高い新世代のMacBookを体験することができます。3万円の差があるTouch Barありのモデル(17万8800円〜)は、役立つ使い方が想像できるクリエイティブ系のアプリを使うのなら断然おすすめです。そうでなくてもTouch Barは+3万円を棒に振る価値のあるBarに仕上がってます。
あとほら、Touch BarにはNyan Catが走りますし!
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source: Apple
(suzuko)