アシュレイ・マディソン、不倫やめるってさ。CEO直撃インタビュー

アシュレイ・マディソン、不倫やめるってさ。CEO直撃インタビュー

昨年の全米が泣いたアシュレイ・マディソン事件、覚えているでしょうか?

2015年7月に不倫専用出会い系サービスであるアシュレイ・マディソンの顧客データ3700万人分が、ハッカー集団Impact Teamによって盗まれました。彼らは、顧客データを担保にアシュレイ・マディソンの閉鎖を求めましたが、運営元のAvid Life Media(2016年7月12日に企業名をrubyと変更)は要求を無視。それを受けて8月18日以降、2度に渡って10GB20GBの顧客データ(登録者のヌード写真、性的妄想をふくむ)がダークウェブ上に公開されてしまったという事件です。

サービスの趣旨を考えれば個人情報の保護やセキュリティは最優先事項なはず。ですが、ハッカーたちによると、アシュレイ・マディソンのセキュリティはないも同然、造作なくデータを入手できたとか。情報リーク後には職を失ったり離婚したり、果てには自殺した人が続出しました。

さらに、登録されている女性アカウントにフェムボット(女性ユーザーを装って課金を促すボットプログラム)が大量にふくまれていたことも問題になりました。米Gizmodoのアンナリー・ネウィッツ前編集長たちの解析によると、アシュレイ・マディソンは7万個以上の女性アカウントをフェムボットで偽装していたのです。

つまりアシュレイ・マディソンは、機械が男性からお金を吸い取りながら不倫ファンタジーの夢だけを見せる、ディストピア的な装置だったということです。まして情報リークの対象になった人たちにとっては、地獄へのトラップ以外の何物でもありません。登録がバレた時点で言い訳の余地がないにもかかわらず、フェムボットでない生身の女性登録者はごくわずか。おそらく彼ら本来の願望を満たすことができた人は、ごく一部でしょう。そして情報流出というアポカリプス…。

そんな惨劇の後、当時のCEOのノエル・バイダーマンは辞任、オンラインで最も憎まれる男性の一人に転落してしまいました(現在彼はSEOを駆使した火消しに必死な模様)。

ギズモード編集部は12月1日に来日した新CEO、ロブ・シーガルを訪ね、新しく生まれ変わったアシュレイ・マディソンの向かう方向と、18カ月前の事件についてお話を伺いました。

不倫ではなく、「オープンマインド」

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image: Ashley Madison

ギズモード・ジャパン(以下ギズ):新アシュレイ・マディソンは、日本ではどんな方針で運営されるのでしょうか?

ロブ・シーガル(以下シーガル):2015年9月にCEOのポストへのオファーがあった際に、私はruby(旧Avid Life Media)やアシュレイ・マディソンの過去についてもっと知る必要がありました。そしてわかったことは、サイトに登録している日本人のうち45%以上が独身者だったということです。彼らは非常にオープンマインドで、多くの人たちとの交流を求め、いろいろな経験をしたいと願っています。その根拠としては、顧客が彼らの願望について記入する欄があるのですが、そこにはワクワクする瞬間やセクシーな気持ちになる瞬間を求めているという記入がたくさんあったからです。ですから、タグラインを「今この瞬間を生きよう」と変えました。そのような形でリブランディングをしたところ、女性の会員が20%増えました。

ギズ:ターゲットを不倫希望者から、さまざまなロマンスを求める独身者に変えたということですね。ですが日本にも利用者の多い出会い系サイトがいくつもあります。それらとどう違っているんでしょうか?

シーガル:アシュレイ・マディソンには全世界で5000万人の会員がいて、多様なバックグラウンドや考えを持つ人たちが登録しているので、そこから運命的な出会いを見つけることは、他のサイトよりも簡単だと思います。また、FacebookなどのSNSとの連携が必要ないので、家族や友人に知られることなく利用できますし、アシュレイ・マディソンの利用者の間でも、お互いに先入観のない出会いが期待できるはずです。

ギズ:日本のユーザーの特性について、どう考えていらっしゃいますか? 日本人はバーチャル恋愛やオンラインでのやりとりを楽しむ人もいますが。

シーガル:確かに実際に会わずに、チャットなどオンラインでのやりとりを楽しむ方もたくさんいらっしゃいますが、そういう方は全体の5%程度です。日本人は特に、実際に会って抱きしめ合うとかキスをするとか、そういった体験に対して非常にオープンなマインドを持っていると思います。他の国とは違い、日本人ユーザーの半数以上が独身ということもあるのかもしれません。世界の他の国と比べても実生活での出会いを求めている人たちが多いというのが私たちの分析です。

ただユーザーによって求める体験は違います。異性との会話を楽しみたい人、チャットを楽しみたい人、あるいはもっとセクシャルな体験を期待する人もいるでしょう。つまり、「Find your moment(今この瞬間を生きよう)」ということです。人と人との出会いとコミュニケーションによって、ユーザーそれぞれにとって最高の瞬間を見つけてほしい。それが、私たちのサービスでユーザーに体験してほしいことなのです。

ユーザーへのリテラシー教育も必要だ

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全米が泣いた。不倫サイトの顧客情報、本当にネット上に暴露される」2015年8月19日 ギズモード・ジャパン image: Ashley Madison

ギズ:出会い系サイトのユーザーにとって個人情報の管理やセキュリティは死活問題だと思うのですが、なぜあんな事件が起きてしまったのでしょうか?

シーガル:なぜかということは、はっきりとわかりませんし、ここで申し上げることはできません。過去に起きた情報漏洩は、あってはならないことだと思いますが、今私たちが向かうべきゴールは失った信頼を取り戻すことだと思います。セキュリティの強化は最優先課題です。またユーザーに対しても、自分たちの個人情報を守るためのリテラシー教育をしていく必要があると考えています。

ギズ:事件のネガティブなイメージがついてしまうことで、登録をためらうユーザーも多いかと思います。どのような形でセキュリティを強化したのでしょうか?

シーガル:セキュリティについては現在BCI(Business Continuity Institute:事業継続協会)から最も高いレベル1の認証を受け、デロイトのサイバーセキュリティーチームのスタッフに365日24時間体制で監視してもらっています。企業として可能な限りのことはしていますが、やはり信頼を取り戻すには地道な取り組みと長い時間が必要だと思います。

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アシュレイ・マディソン内のbotアカウント数(2015年9月時点) image: Annalee Newitz / Gizmodo US

ギズ:もうひとつの問題として、女性アカウントの多くがフェムボットだったことも指摘されています。

シーガル:フェムボットについては、私自身がCEOへの就任をオファーされた際に懸念を抱いていたので、話を受ける前に実態調査のためにサードパーティーを入れてユーザーの数を出してもらいました。その結果、ボットではなく実際に利用している女性ユーザーも何百万人単位でいることがわかりました。

ギズ:アシュレイ・マディソン社内のドメインを使った偽アカウントが膨大な数見つかったというレポートもあります。そういった事実はあったのでしょうか?

シーガル:その疑惑についての調査や対応は、私がCEOに就任する以前に終わったことです。というのも、その問題がクリアになることを条件にCEOの仕事を受けたからです。今現在サイトには、偽のアカウントは存在しません

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7月5日に公開されたニューヨークタイムズの記事によると、フェムボットを使った運営が詐欺にあたるということで、ALMは米国連邦取引委員会(FTC)の調査対象になりました。その際、ロブ・シーガルは、脆弱なセキュリティとフェムボットの使用について公式に謝罪をし(つまりボットの存在を正式に認めたということです)、ブランドの再構築の最初の取り組みとしてフェムボットをすべて削除したことを報告しました。

取材前には「どんな質問にも答えます」とのことだったんですが、昨年の事件の核心に迫る質問に対しては、体よくはぐらかされたという印象が否めませんでした…。会社名やブランドイメージを刷新したアシュレイ・マディソン。しかし過去の説明責任を果たすことなしに、全世界のユーザーから失った信頼を取り戻すのは難しいでしょう。

また、ユーザーへのリテラシー教育は確かに大切です。が、彼らの言い分は、浮気をした男性が妻に釈明をするときに「大切なのは過去じゃなく未来だ。僕たちはお互い否があったけど、これからは一緒に良い家庭を再構築しよう」と地雷を踏む様子を想起させます。

良い悪いは別として、さまざまな出会い系サイトがすでにある中、以前のアシュレイ・マディソンの存在感は際だっていました。再ローンチしたアシュレイ・マディソンは、今後どのような位置づけになるのでしょうか。セキュリティについても引き続き注目していきたいところです。なにしろ、アシュレイ・マディソンは情報流出事件が起きる前も、セキュリティ関連のアワードを取っていましたから。

関連記事:不倫サイト「アシュレイ・マディソン」CEO辞任。事の顛末がわかる9つの記事まとめ

source: The Guardian, FUSION, Ashley Madison, New York Times

(文・高橋ミレイ/撮影・斎藤真琴)

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