寒いってレベルじゃない。
The Washington Postによると、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)の研究チームが、アルミニウムを絶対零度により近い温度にまで冷却することに成功したそうです。これまでは「量子バックアクション」という絶対零度より少し上の温度までしか冷やせないという量子力学的限界がありました。しかし今回の実験結果では、なんと真空空間の1万倍以上低い温度に冷却できたそうです。この結果によって、より精度の高いセンサーを作ったり、量子力学の研究に役立つことが期待されます。
ここで、一度物理学について復習しましょう。温度というものは、物質の分子が持つ平均運動エネルギーによって定義されています。つまり、何か物質を冷やすということは、その物質の分子の動きをゆっくりにすることを意味します。絶対零度とは、摂氏-273.15度に等しく、このとき分子は完全に停止しています。
たいてい、物質を自然では考えられないくらい冷やしたいときには、レーザーを使って分子の運動エネルギーを減らすことで冷却します。しかしこのとき、量子力学による影響でどうしても熱が残ってしまいます。
今回実験では、サイドバンド冷却という従来の手法に加えて、「スクイーズド光」と呼ばれるものを用いることで、直径20μm、厚さ100nm のドラム状をしたアルミニウム片(トップ画像)を、これまで記録よりも絶対零度に近い温度に冷却しました。研究チームはスクイーズド光の性質によって、レーザー光に含まれるある種の振動を消すことで、量子バックアクションの限界を破ることに成功しました。この結果は、科学誌Natureに掲載されています。
量子力学の限界を超えていくなんて、本当に”クール”ですね。科学者の挑戦はまだまだ続きます。
image: Teufel/NIST
source: The Washington Post, Nature
Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文]
(tmyk)