ヒトには生まれつき正義感が備わっている可能性…生後6か月の赤ちゃんに見られた「ヒーロー好き」

ヒトには生まれつき正義感が備わっている可能性…生後6か月の赤ちゃんに見られた「ヒーロー好き」

戦隊モノ、プリキュア、しまじろう、コラショ、ドラえもん。

子どもをとりまく環境には、いじめっ子にはきびしく、弱い者にはやさしい正義の味方が多く存在します。子どもたちはそんなヒーロー/ヒロインが大好き。それもそのはず、一緒にテレビを見ていると、親もついつい感情移入して泣いちゃうくらい彼ら/彼女らは大きな感動と癒しを与えてくれます。そしてヒーローたちと心を重ね合わせることで、子どもたちもまた正義感を身につけてくれると期待してしまいます。

しかし、子どもたちはヒーローを見て正義感を習得するのでしょうか? それとも、もともと正義を好む傾向があるために、ヒーローを好むのでしょうか?

このたび、京都大学教育学研究科の明和政子教授率いる研究チームが明らかにした、Nature Human Behaviour誌上の論文(日本語の概要は京都大学のサイト)によれば、まだ言葉をしゃべらない、おすわりもままならない生後6か月の赤ちゃんでも、ヒーローを好む傾向がみられるそうです。

これって、すごいことですよね。つまり正義感は、大人が教えこんだのではなく、もともと赤ちゃんが生まれ持っている可能性を示しています。いままでの研究でも、就学前の幼児にはいじめを止めに入ったり、いじめたほうを罰するよりもいじめられたほうを優先的にケアしたりするなどの正義感あふれる行動が認められていたそうです。でも前言語期の赤ちゃんが、すでに正義を肯定できるというのは驚きです。

京大の研究チームが実験に使った手法も、また驚きです。生後6か月というと、やっとおすわりできるかな~ぐらいのホヤホヤな赤ちゃん。その赤ちゃんたちの正義感をどうやって見極めたのかというと、下の写真のようなぷよぷよライクなキャラクターが登場するアニメーションを見てもらいました。いじめっ子は青い円形、いじめられっ子は黄色い円形です。真ん中の四角い緑が「ヒーローくん」。「青くん」は「黄くん」に体当たりしたり、壁に押しつぶしたり、やりたい放題ですが、そこにヒーローくんが間に入って止めます。そこでアニメーションは終わりです。

正義感 生まれつき

(image: 京都大学)

アニメーションを見終わった赤ちゃんは、四角い緑色と四角いオレンジ色のぬいぐるみを提示され、どちらかを選ばなければなりません。その結果、実験を行なった赤ちゃんの20人中17人が緑色の四角を選びました。つまり、ヒーローくんを選んだのです

また、実験では「青くん」と「黄くん」から目をなくして「無生物」なモノにしたり、「青くん」が「黄くん」をいじめず、「中立な」状態にするなど、部分的に変化を加えたアニメーションも見せたとのこと。でも、赤ちゃんは犠牲者と攻撃者がいて、それを止める場合にだけ介入した「ヒーローくん」をポジティブに評価するという結論にいたったそうです。

研究成果を発表した京都大学のウェブサイトには、研究者からのコメントが寄せられています。

私たちヒトは、「正義」を肯定する心の特性(心的バイアス)を生来的に持っている可能性がみえてきました。こうした本性はヒトに特有のものであるのか、それはどのように育まれていくのか、その後発達する高次の「正義感」の個人差とどう結びつけていくのか。こうした問題を科学的に明らかにしたうえで、子どもたちの社会性発達の支援に生かしていきたいと考えています。

今回は日本人の赤ちゃんが研究対象でしたが、ほかの文化圏の赤ちゃんでも同じ結果が出るのでしょうか。今後の研究にも注目していきたいですね。

「正義」を肯定するということは、その「正義」に守られた弱者に対して思いやりがある証拠。赤ちゃんたちがもつ、弱者に寄り添う思いやりのある正義感が、未来を癒してくれることを願っています。

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image: Andreev Serg / Shutterstock.com, 京都大学
source: Nature Human Behaviour, 京都大学 1, 2
(山田ちとら)

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