NASAがついに灼熱地獄の金星でも動作するコンピュータチップを開発

NASAがついに灼熱地獄の金星でも動作するコンピュータチップを開発


あらゆる大気環境を再現する装置GEER

今、宇宙開発で最も人気があるのは火星でしょう。NASAイーロン・マスクも火星への移住を目指していますし、ローバー(探査車)が送り込まれるのも火星です。映画の舞台になるのも火星ばかり。でもちょっと待ってください。地球に一番近い惑星はどこかご存知ですか? 火星じゃないんです。水、金、地、火、木...ってありますよね? 地球の横にある惑星がもう一つ。そう金星です。

金星は地球に最も近い惑星であるにも関わらず、火星と比べて注目度が低い気がしますよね。しかしそれにはれっきとした理由があります。地表の温度が高すぎるんです。表面の温度は昼も夜も常に摂氏460度。最新の研究では極寒エリアも存在するみたいですが、基本は灼熱地獄。その熱烈な大気環境ではコンピュータなどの精密機器が動作できないのです。

しかしNASAは簡単には諦めません。そんな灼熱の中でも動作する新たなコンピュータチップを開発しました。テストでは、冷却剤や保護材を一切使わずとも金星のような高気圧、高気温の環境で動作しています。人類は1982年にソ連が着陸させたベネラ14号(金星地表で57分間稼働)以来、金星に着陸船を送っていません。今回開発されたチップによって再び金星探査への扉が開かれます。

オハイオ州にあるNASAグレン研究センターの電子工学エンジニアPhilip Neudeck博士は米Gizmodoに、「火星の地表ではすでにローバーがあらゆる科学的データを集めているが、金星ではまだ行なわれていない。金星では電子機器が機能しないんだ」と語っています。金星のデータを集めることは人類にとっても利益があります。研究者のレポートによると、金星の地質過程や温室効果ガスを含んだ大気環境を研究することで、地球の環境をより深く理解することが可能になるそうです。

今回開発されたコンピュータチップは、半導体の素材を新たなものに変えています。従来はシリコン(ケイ素)製だったのですが、金星のような高温の環境下では、半導体が正しく動作せず、伝導体のように電気を通してしまいます。そこでNeudeck博士はシリコンの代わりに高温でも半導体として動作する炭化ケイ素(シリコンカーバイド)を使うことに。さらにチップ同士をつなぐ回路がオーバーヒートしないよう、タンタルシリサイドという新素材を使用したことも認めています。

そうして作られた特別なコンピュータチップは、NASAのGEERGlenn Extreme Environments Rig)というあらゆる惑星の環境を再現することができる装置を使って性能を確かめることに。その結果、金星と同じ環境下で、21日間以上動作し続けることに成功しました。下の写真をご覧ください。GEERに入れる前と後の電子回路です。

NASAがついに灼熱地獄の金星でも動作するコンピュータチップを開発2
image: NASA

多少のダメージは確認できますが、きれいなもんです。さあこのチップを使っていざ金星へ!とは残念ながらまだいきません。今回のチップにはたった24個のトランジスタしか搭載されておらず、現代のコンピュータに使われているような高度なマイクロチップには程遠いのです。Neudeck博士も「我々のチップはムーアの法則にのっとると、1970年代の技術に戻ってしまったようなもの」だと語っています。さらに、チップ以外の部分も金星探査機用に設計しなければならず、まだまだやることはたくさんあります。

とはいえNeudeck博士は今回の実験の成功を経て、金星探査への希望を膨らませています。「これほど高温の環境下で、こんなに長く機能した電子回路はこれまで誰も作ることができなかった。これは金星探査ミッションへの大きな一歩だ」と語り、すでに次の実験に向け100個のトランジスタを載せたチップを準備しています。実際に使われている探査機の中にはそれ以下のチップで動いているものもあり、金星探査はより現実的なものとなってきました。ForbesによるとNASAは2023年に金星へローバーを打ち上げる予定です。火星の次は金星だ!

top image by NASA
source: AIP Advances via Ars Technica, Forbes
参考: 地球に最も近い惑星, NASA 1, 2, JAXA

Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文
(Shun)

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