時速60マイル(約96.5km/h)という凄まじい速度で移動し、さらに空中で静止することもできるハチドリ。通常の鳥とはまったく異なる動きをするハチドリの目に、この世界はどんなふうに見えているのでしょうか? Current Biology誌に掲載された研究では、そんなハチドリがいかにユニークな方法で視覚情報を処理しているかを解き明かそうとしました。
すでにこれまでの研究で、ハチドリは動的な視覚情報を感知するLentiformis Mesencephalic(LM)と呼ばれる脳の領域、哺乳類では視索核にあたる部分が大きく発達していること、そして空中で静止するホバリング飛翔中は周囲の微細な動きにも反応できることが明らかになっていました。
今回の研究では、ハチドリ、キンカチョウ、鳩の3種類の鳥に、異なる方向に動き回るドットの映像を見せ、それぞれの鳥の脳がどのように反応しているかを記録しました。すると、他の鳥が背後からの動的情報に対して敏感に反応するのに対して、ハチドリはあらゆる方向からの情報にほぼ同様の反応を示していたことがわかりました。ハチドリ以外の動物では、捕食者による不意打ちを避けるため、背後からの動きに反応するのが普通なのです。
また、ホバリングするハチドリが自分の位置を微調整していることから、研究者たちはハチドリの発達した視覚処理神経が速度の遅い動きにより敏感に反応すると予想していました。ところが、ハチドリはむしろ高速な動きに対して、どの鳥よりも敏感に感知していたのです。
研究を率いたAndrea Gaedeさんは、今後はさらに、脳の処理がハチドリの飛行にどう変換されていくのかを詳しく調査していきたいと述べています。こうした研究は、ドローンの制御など、視覚情報によるコントロールに用いるアルゴリズムの開発にも役立つのではと期待が込められています。
・「歌う鳥」キンカチョウは、歌の音と音の「間」もきちんと理解しているらしい
top image: Ondrej Prosicky/Shutterstock
source:Current Biology, Science Daily, Smithosonian.com, YouTube
(Haruka Mukai)