ディズニー映画『モアナと伝説の海』の監督にインタビュー:「『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のオマージュは意図的」

ディズニー映画『モアナと伝説の海』の監督にインタビュー:「『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のオマージュは意図的」

キャッチーな歌と踊りはもちろんのこと、ポリネシア文化と大自然の映像表現、海に選ばれた少女モアナ(アウリイ・クラヴァーリョ)が自ら道を切り開いていく姿が評判を呼び、世界中でヒットしているディズニー・アニメーション映画モアナと伝説の海』。

「筋王(キング)」ことロック様ことドウェイン・ジョンソンが演じる半神マウイの愉快さも魅力の作品ですが、今回は本作を手がけた、ジョン・マスカー監督とロン・クレメンツ監督にお話を伺いました。

おふたりは『リトル・マーメイド』や『アラジン』などの作品を手がけたことでも知られ、ディズニー・アニメーションのリビングレジェンドと言ってもいい存在です。

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(左から)ロン・クレメンツ監督とジョン・マスカー監督

――CGアニメーションの作品を手がけるのは本作が初めてとのことですが、CGで描くにあたって苦労した点はなんでしょうか? また、CGと手描きアニメーションそれぞれの利点、欠点はなんだと感じましたか?

ジョン・マスカー(以降、マスカー):まず気付いたのは手描きの場合、アイディアを模索していく中で、紙と鉛筆さえあればすぐに描いてアニメーションが作れます。CGの場合、設計と設定をして、動かす仕組みや空間を用意してと、模索ができる状態にするまでに時間がかかります

ただ、一度その段階まで作れば、手描きではできなかったようなアニメーションの試し方が可能です。CGではカメラのアングルをすぐに変えられますが、手描きだともう一度描くしかありません

演出や演技をいろんな方法と方向から何度も試して考えるというのは、CGアニメーションだからこそできることです。手描きアニメーションが主流だった時代、そういった作業はあまり行われませんでした。

ロン・クレメンツ(以降、クレメンツ):私たちが以前手がけた『アラジン』のジーニーは自由に姿形を変えられるキャラクターですが、『アラジン』は手描きアニメーションだったので、単純に手で描けるものであれば変身させられました。

『モアナと伝説の海』のマウイも変身できるキャラクターですが、CGだとこれが非常に難しいんです。まず変身するもののモデルを作って、動かす仕組みや空間を用意してといったことをすべてしないといけないので、とにかく作業が多いんです。そのため、あまり多くのものに変身はできないという制約はありました。

一方で、髪の質感や照明、カメラの動かし方、水による光の屈折の表現、見た目の豊かさなどはCGだからこそ実現できたことです。

――ポリネシア文化を表現するためのリアリティーと物語的なファンタジーの部分はどのようにバランスをとったのでしょうか? また、しゃべるセリフは英語という中で、ポリネシア特有の肉体言語、ジェスチャーなどは取り入れたのでしょうか?

クレメンツ:リサーチが非常に重要でした。おそらく私たちが関わったどの作品よりもリサーチに時間をかけたと思います。

まず、5年ほど前に視察としてフィジー、サモア、タヒチなどの島へと飛んで、だいたい3週間滞在し、多くの人たちに出会いました。村へ行って考古学者、人類学者、言語学者、漁師、長老、村人、村長などと話をしたのですが、そういった体験が『モアナと伝説の海』には盛り込まれています。

とにかく私たちが慣れていない場所、文化ということもあったので、そういった専門家たちを集めて「オセアニック・ストーリー・トラスト(OST)」というチームを作り、制作中も常にSkypeなどを通して情報をやりとりしたんです。

他にも、脚本家のひとりであり、ニュージーランド出身のタイカ・ワイティティ(『ソー:ラグナロク』の監督)がさまざまな情報を書いてくれたり、劇中のオリジナルソングを手がけたオペタイア・フォアイからは音楽という観点からアドバイスをもらいました。私たちが慣れ親しんでいない文化でも、正しく表現できるような体制を作ったんです。

マスカー:リアリティーとファンタジーのバランスという意味では、本作は実際の歴史に基づいたドキュメンタリー作品ではありませんし、エンターテインメント作品なので、たとえば船を出すシーンなども爽快感を出すために現実の船よりも速く描かれています。それは多少誇張してでもその場面の雰囲気、気持ち、感覚を伝えるための演出です。

ポリネシアの地域で使われている伝説というのは口頭伝承なこともあり、島によって、世代によってもばらつきがあるため、実際の内容は多様で、マウイの伝説も地域によって違いがあります。それもあって、正しい文化の雰囲気、感覚を保ちつつも、多少オリジナルな要素を入れたり、作ったりという幅を持たせました。『モアナと伝説の海』はあくまでもポリネシアの島々をインスピレーションとしたつくりを心がけた作品です。

クレメンツ:演技に関して言えば、本作は英語の映画ではありますが、モアナ役のアウリイ・クラヴァーリョ、マウイ役のドウェイン・ジョンソンはもちろんのこと、キャストのほとんどがポリネシア系なので、彼らもバランスをとる一翼を担っています。

マスカー:ポリネシア系の女性スタッフから教わった「yes」という意味での眉毛の動かし方は、まさにわたしたち西洋の人間にはそういう意味にはとれない動作で、そういったポリネシア系ならではの肉体言語、ジェスチャーはいくつか作品の中に取り入れています。

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――ディズニー・プリンセス作品といえば歌ですが、製作の過程で「プリンセスが歌わない」という可能性を考えることはあるのでしょうか? また、多様性の重視される現代において、さまざまな文化や人種を描くことがディズニー・プリンセス作品においても大きな意味を持つようになっているのでしょうか?

クレメンツ:私たちが『アラジン』を作ったとき、もともとプリンセスのジャスミンは歌わない予定でした

英語版ではリンダ・ラーキンが声を当てているのですが、彼女は歌わない女優です。なので、ジャスミンは歌わないということで製作は進んでいたのですが、途中でストーリーに変更があって、魔法のじゅんたんの歌『ホール・ニュー・ワールド』が加えられることになりました。その結果、リア・サロンガに歌ってもらうことになったんです。

過去のこういったケースを考えると、プリンセスが歌わない作品の可能性はなくはないと思います。ただ、『アラジン』の場合は主人公がジャスミンではなくアラジンなので、ジャスミンの歌はないという考え方が生まれたのかもしれません。

マスカー:企画の段階で、物語の一案として「西洋人の主人公がポリネシアの世界に入っていく」というのも考えられました。つまり、主人公が観客と同じ視点でものを見る世界、外から未知の社会を見るといった形です。

しかし、最終的には外部からの視点で物語を描くのではなく、あくまでも内側からという形をとりました。その方が観客の皆さんがより世界に引き込まれるんじゃないかと考えたからです。意識的に行ったことではないのですが、その結果として多様性が感じられるような作品になったのかもしれません。多様性というよりは、内側から描くということを意識しました

声優に関しても、なるべくポリネシア系の俳優を集めたのはそういった理由からで、スタジオの命令があったわけではないです。より地に足の着いた作品にするためにも、自分たちが伝えたい文化に対して忠実であるためにも、という思いでそうしました。

ニワトリのヘイヘイだけは西洋の俳優、アラン・テュディックが担当していますが、彼はディズニーにとっての幸運のお守りなので、なんとか入れる場所を見つけないといけなかったんですね(笑)。その結果、本作で最もおバカなキャラクターだけを西洋の人間が演じるという形になりました(笑)。

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――船での戦闘シーンはもろに『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のオマージュでしたが、本編全体を通して、大自然の描き方や女性の描き方からは宮崎駿監督の影響を感じました。実際に製作の中で参考にした作品などはあるのでしょうか?

マスカー:おっしゃる通り、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のオマージュは意図的です。私たちはジョージ・ミラー(監督)の大ファンですし、あのシーンのストーリーボードを手がけたジョン・リパとクリス・ウィリアムズもジョージ・ミラーの大ファンです。

最終的にはストーリーボードの段階よりもかなり進化したアクションシーンになりました。ディズニーが「怒りのデス・ロード」とクレイジーな出会いを果たしたというわけです(笑)。

そして、企画の初期の段階から宮崎駿監督の映画からの影響はありました。特に幼いモアナが海と出会うシーンやヒロインの強さ、ヒロインの自然とのつながり、水の表現、水のとらえ方などは、ジブリ映画からの影響が感じられると思います。

クレメンツ:私たちが宮崎駿監督からの影響を受けて、意図的にそういったシーンを作ったということももちろんありますし、本作が私たちの作品の中で最も宮崎駿監督の影響が強いのは間違いないと思います。ただ、ポリネシアの島々へリサーチに行った時のインスピレーションも反映されています

島々の伝説では、自然が擬人化されて伝わっている、とらえられているということが多くありました。島の人々が海を生きているととらえていたり、個人的に海とのつながりを持っていたり、という話を実際に聞いたので、『モアナと伝説の海』では海をキャラクターとして描くことにしたんです。

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『モアナと伝説の海』は3月10日(金)全国ロードショー。
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source: モアナと伝説の海|映画|ディズニー|Disney.jp |, YouTube1234

スタナー松井

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