DCコミックスの生ける伝説! 世界最高のコミック・アーティストのジム・リーにインタビュー

DCコミックスの生ける伝説! 世界最高のコミック・アーティストのジム・リーにインタビュー

スーパーマンバットマンなどの超有名ヒーローを創り出し、コミックとしてはもちろんのこと、アニメ、ゲーム、映画など幅広いジャンルでファンを持つ出版社、DCコミックス

今回はその共同発行人であり、世界最高のアーティストのひとりとしても活躍するジム・リーにインタビューして参りました!

しかも、今回はギズモード・ジャパンのためにインタビュー中にスケッチも描いていただき、作品が完成するまでの過程を動画に収めましたので、併せてご覧ください!

ジム・リーの略歴

コミック・アーティスト兼DCコミックス(DCエンターテインメント)の共同発行人。1987年にマーベルのコミック『Alpha Flight #52』でペンシラーとしてデビューを果たし、『Xメン』シリーズで絶大な人気を獲得。1991年に発売された『X-Men #1』は800万部を売上げ、世界一売れたコミックとしてギネスブックに登録されています。いまだにその記録は破られていません。

その後マーベルを離れ、1992年に自身のプロダクション会社のワイルドストーム・プロダクションズを設立し、アーティスト仲間とともにコミック出版社のイメージ・コミックスの立ち上げに参加。同社はトッド・マクファーレンの『スポーン』などのタイトルを発表し、世界中で大ブームを巻き起こしました。また、その中でジム・リーはイメージのユニバースである「ワイルドストーム」の中で、『ワイルドキャッツ』を展開し、人気を博しました。

しかし、1998年にDCコミックスによってワイルドストーム・プロダクションズが買収されたことをきっかけにイメージ・コミックスを離れ、DCコミックスのクリエイティブ・チームに参加。

2010年にはDCコミックスの共同発行人に任命され、その翌年に始まったシリーズのために、スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマンなどのジャスティス・リーグの面々の新デザインを手がけます。2016年、『スーサイド・スクワッド』の新シリーズにペンシラーとして参加。要職に付きながらも、コミックの最前線で現在も活躍しています。

ちなみに、90年代には彼のアートをベースとしたアニメ版『Xメン』が制作され、日本でも放送されました。カプコンからタイアップ商品として格闘ゲーム『エックス・メン チルドレン オブ ジ アトム』も発売。本作は後の『MARVEL VS. CAPCOM』シリーズにつながっていきます。

時を同じくして『スポーン』や『Xメン』のアクションフィギュアを中心にアメトイ(アメリカントイ)が日本で大ブームとなったこともあり、先述の『Xメン』を含め、邦訳アメコミがたくさん刊行されました。この頃に初めてアメコミに触れたという方も多いのではないでしょうか?(筆者はそのひとりです)

ジム・リーはコミック・アーティストにして、日本のアメトイ/アメコミブームに火をつけ、後の大人気格闘ゲームにも大きな影響を与えた、生ける伝説と言っても過言ではない偉人です。

インタビュー

――そもそもコミック業界にはどういった経緯で入られたのでしょうか?

ジム・リー(以下、リー):1986年に大学を卒業したのですが、専攻していた内容に興味を持てずにいました。そんな頃に読んだ、フランク・ミラーの『ダークナイト・リターンズ』に大きな刺激を受けたんです。

子どもの頃からコミックは好きでしたが、『ダークナイト・リターンズ』は今までにない、それはもう凄い作品でした。そんな作品に出会ったことがきっかけで、自分もコミック業界でアーティストとして働こうと決心したんです。

しかし、当時はインターネットがなかったので、そもそもどうやって働き始めればいいのかわかりませんでした。いろんな人に尋ねて回った結果、ニューヨークのコミック・コンベンションで編集者にポートフォリオを見てもらう機会があり、そこから仕事へとつながっていきました。

――フランク・ミラー以外にはどんなアーティストに影響を受けたのでしょうか?

リー:アメリカのコミック・アーティストだと、ジョン・バーンアーサー・アダムスです。あとは、大友克洋の『AKIRA』や士郎正宗の『アップルシード』、『攻殻機動隊』は本当にすばらしい作品で、とても大きな影響を受けました。デザイン面だけでなく、ストーリーを見せる技術といったところでも影響を受けています。

ジブリ美術館に昨日行ってきたのですが、宮崎駿の作品にはいつも驚かされます。子どもだけでなく、大人も惹き込むデザインと、作品作りに没頭する熱意には感銘を受けました。誰かの作品を見て人生が変わるにはちょっと遅すぎるくらいかもしれませんが、それでもあのような作品を見ると、今でも大きな刺激を受けます。

――子どもの頃からコミックが好きだったとのことですが、人生で初めて描いたスーパーヒーローは覚えているでしょうか?

リー:あまり明確には覚えていませんが、子どもの頃に見たマックス・フライシャーのアニメ版のスーパーマンをクレヨンで描いたのが最初だと思います。

他にもアニメのキャラクターやスタートレックの絵なども描いていました。本やテレビで見たストーリーの続きを自分で描いていく、といったことをよくやっていましたね。

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――マーベルでのデビュー以来、さまざまな出版社で活躍されてきていますが、DCコミックスでの仕事の中で一番楽しいことはなんでしょうか?

リー最高に豊かな歴史を持ったコンテンツを使って仕事ができるところですね。ただ一つの世界だけでなく、たくさんの並行世界があるのも非常に魅力的です。

コミックの世界観を使ったドラマや映画もたくさん登場しています。最近ではコメディ作品にもなりました。DCではそういった作品の基盤作りに関われるんです。

しかし最大の魅力は、DCのキャラクターを使って話を作れるところでしょう。マスクの男に耳を書き足すだけで誰もが「バットマンだ!」と認識するくらいにDCのキャラクターは有名ですし、現代の神話の登場人物として希望の象徴になっていると思います。こんな時代だからこそ、そんなキャラクターたちが求められていのだと思います。

DCのキャラクターは世代を超えて愛されていて、読者にとってさまざまな意味を持っています。そんなキャラクターたちを使うことで、読者の人生に大きな影響を与える作品が作れるんです。

――DCには長い歴史を持ったキャラクターがいると同時に、新しいキャラクターもどんどん登場しています。かつて「ワイルドストーム」で新しいユニバースを1から作ることも経験されていますが、そういった新キャラクターを作る上で気をつけていることは何かあるのでしょうか?

リー:第一に、すでにたくさんのキャラクターがいるので、同じようなものにならないことに気をつけます。また、今生きている時代を反映させたキャラクターにします。

しかし何より大事なのは、もう片方の親であるライターとの協力を欠かさないことです。愛されるキャラクターを作り上げるためにはライターと一丸となり、長い時間をかけて愛と情熱を注ぐ必要があります。たまたま生まれたキャラクターが大成功するなんてことはめったにありませんからね。

――DCコミックスで将来働いてみたいというアーティストはまず何をしたら良いのでしょうか?

リー:アーティストの年齢次第でアドバイスの内容は変わってきますね。

16歳まではとにかく楽しく描き続けることが重要です。将来がどうとかそういうことは考えず、自分にプレッシャーをかけずに楽しんでください。そして好きなものに情熱を注いでください。例えば車が好きなら、車をずっと描き続けてみてください。

最初は基本的な絵の描き方の本を読んで、アーティストとして働きたいと真剣に考えるようになってきたら、構図から製図や人物画も勉強したほうが良いでしょう。そして、苦手だと思うものを描いていきましょう

コミックの仕事では登場人物だけでなく、その背景の街並みや行き交う車、さらには戦車、動物、木などなど、あらゆるものを描く必要があります。それらを描けるようになるまで努力をしてから、絵でストーリーを見せる方法を学んでいきましょう。今はインターネットがあるので、資料には困らないはずです。

それから、作業部屋にこもって絵を描き続けて技を学んでいくと同時に、外に出て旅をし、人生を楽しんでください。写真で見るのではなく、実際に行って見てみることが大事です。現実に存在する立体物が持っている感情をいかにして平面に落とし込むかを考えましょう。

――アーティストとして、絵を描くこと以外で日々やっていることはなんでしょうか?

リー自分のアートのスタイルを変えるために、いろいろなものに触れるようにしています。自分より前の世代のアーティストの作品を見ると、スタイルを確立してからずっとそのスタイルを使い続けていることが多いのですが、私はそんなに急激ではないにせよ、少しずつ変えるようにしています。

触れるものはアートだけではありません。私にはたくさん子どもがいるので、彼らが好きなK-POPや『マインクラフト』などにも日々触れています。どれも自分だけでは自発的に触れなかったと思いますが、自分の将来の読者が一体どんなものが好きなのかを知っておくのは大事なことだと思っています。

私がファンとしてコミックを読んでいた頃と今では大きく状況は違います。時間を問わず、携帯電話でいろんなことができる時代に育った世代に、どうやってコミックに興味を持ってもらうか?をアーティストとして、出版社として日々考えなくてはいけません。

――すばらしい作品をたくさん世に送り出していますが、自分の中での最高傑作は何でしょうか?

リー作品は自分の子どものようなものなので、どれが一番かを選ぶのは難しいですね(笑)。なにより、製作中はその作品が最高にお気に入りだと自分を完全に信じ込ませながら作業をしなければなりません。

私の作品だと『バットマン:ハッシュ』がベストだと言ってくれるファンが多いですね。私が初めてバットマンの有名ヴィランの面々を描いた作品で、バットケイブやスーパーマンも登場するバットマンを語る上で重要な要素が詰まった作品でもあります。だから、自分で描いていても非常に楽しかったです。

ただ、私の中でのベストは『スーサイド・スクワッド』や『スーパーマン:アンチェインド』かもしれません。どちらも、制作の過程で今までにやったとのないことに挑戦した作品です。

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――90年代から最前線で活躍し続けているあなたから見て、コミック業界はどう変わったと感じているでしょうか?

リー:90年代からコミック業界は大きく変わりました。クリエイターからすれば、仕事のやり方の選択肢が大きく増えた、いい変化が起こったと思います。

75年以上の長い歴史と多くのファンを持つDCコミックスのキャラクターを活かした作品作りはもちろん、独自の作品を生み出すことも可能です。DCコミックスでは、バットマンやジャスティス・リーグといった作品だけでなく、「ヴァーティゴ(DCコミックス内のブランド)」などを通じてオリジナルの作品を出せる環境が用意されています。

また、作品を紙で出版するのではなく、インターネット上で発表してアーティストとしてのスタートを切るなんていうこともできるようになりました。どれも25年前にはなかった選択肢です。それにしても、90年代が25年も前になるんですね。5年前ぐらいの気分でしたよ(笑)。

ともかく、クリエイターはより自由になったので、創造性に富んだ作品が生まれるようになったと思います。

――立場上選びづらいとは思うのですが、これからのDCコミックス原作の映画で一番楽しみな作品は何でしょうか?

リー:すごく難しいですが、『ワンダーウーマン』です。(近年のアメコミ映画の流れの中では)初めての女性スーパーヒーローが主人公の作品になりますし、多くの観客の女性ヒーローへの見る目を変える作品として楽しみにしています。また、ワンダーウーマンは悲劇的な誕生秘話を持つバットマンやスーパーマンとは大きく異なるキャラクターなので、その面でもすごく楽しみですね。

そしてなにより、そういった作品を待ち望んでいる観客と市場があることに期待しています。DCコミックスにはワンダーウーマンはもちろん、スーパーガールやバットガールなど、たくさんの女性ヒーローがいるので、そういった作品にも注目が集まるといいですね。

ここまで言いましたが、やっぱり『ジャスティス・リーグ』も楽しみにしています。映画のチームが初めて揃う作品ですし、予告にもあったようなヒーロー間のやり取りが早く見たいです。なので、一番見たい作品は同点で『ワンダーウーマン』と『ジャスティス・リーグ』です(笑)。

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――映像作品からコミックにハマっていったという人は増えていると思いますし、90年代に放送されたアニメの『Xメン』を観て、そのデザインのカッコよさに惚れ、当時販売されていたジムさんの『Xメン』からコミックにハマっていったという人も日本にはたくさんいます。

リー:『ワンダーウーマン』や『ジャスティス・リーグ』がそういった作品になることに、大いに期待しています。コミックでは映画とは異なるストーリーが展開されていますし、より奥深い世界も広がっています。

コミックは人生をかけてハマれる素晴らしいものだと思いますよ。

***

イラストを描きながらも非常に丁寧に答えてくださり、その人柄の良さが全力で伝わってくるのと同時に、身振り手振りを交えてコミックの話を楽しそうに語る様子も非常に印象的でした。

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ジム・リー直筆のバットマン!

そしてインタビューを受けながら描いているにもかかわらず、凄まじい速度でこんなにもカッコよくて美しいバットマンが出来上がっていくのには、本当に驚きです(動画では一部手を止めていたところをカットしていますが、早送りはしていません)。

コミック史を語る上で欠かせない伝説級のアーティストにお話を伺えただけでなく、子どもの頃に、最初にハマったアメコミを作った本人と会い、その上バットマンを描いてもらい、目の前でその作業風景を見られるなんていう、クアドラプルで信じられない最高にも程があるインタビューでした。

まだジム・リーの作品を読んだことがないという方は、まずは今回のインタビューの中でも登場した『バットマン:ハッシュ』で、そのカッコよくて美しいアートの醍醐味を堪能してみてはいかがでしょうか?

映画『ワンダーウーマン』は8月25日(金)全国ロードショー。映画『ジャスティス・リーグ』は2017年冬に公開。
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夢の対決「モハメド・アリ対スーパーマン」が実現した経緯

image: (C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNEENTERTAINMENT LLC
source: DCコミックス, 映画『ワンダーウーマン』公式サイト, 映画『ジャスティス・リーグ』公式サイト

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