運動を科学する「スポーツバイオメカニクス」で横綱・稀勢の里の強さを分析

運動を科学する「スポーツバイオメカニクス」で横綱・稀勢の里の強さを分析

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今日から「大相撲」の見方が変わるかも?

2017年3月場所での涙の優勝インタビューが記憶に新しい、横綱・稀勢の里。2016年度は年間最多勝を獲得、日本出身力士として19年ぶりの横綱昇進、さらには新横綱としては貴乃花以来となる22年ぶりの2場所連続優勝など、ここ最近の稀勢の里は本当に強い!

いまでは勝負所での安定感もグッと増し、まだまだ強くなる可能性を秘めている稀勢の里。今回は、そんな稀勢の里の強さをスポーツ専用の動画配信サービス「スポナビライブ」の映像を見ながら「スポーツバイオメカニクス」の視点で探ってみようという企画です。

スポーツバイオメカニクスとは、運動を主として力学的視点から解き明かしていこうという分野。取材にご協力いただいたのは、スポーツバイオメカニクスの分野に詳しく、自身も稀勢の里の大ファンという明治大学の桑森真介教授です。

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桑森先生は、明治大学相撲部在籍中には、全国学生相撲選手権大会個人2位・団体優勝という輝かしい成績の持ち主。相撲に関する著書も多数執筆されています。

「スポナビライブ」にアーカイブされた過去の取組を分析しながら、桑森先生に稀勢の里の強さの秘密をスポーツバイオメカニクスの視点から語っていただきました。はたして、科学的に見た稀勢の里の強さの秘密とは?

スポーツバイオメカニクス的「大相撲」の楽しみ方とは?

── はじめに「スポーツバイオメカニクス」とは、どういった分野なのですか?

桑森教授:昔は「スポーツ力学」とか「キネシオロジー」とも呼ばれていました。運動パフォーマンスを力学を中心として科学的に検証し、その仕組みを分析するという領域ですね。

── 「大相撲」を力学的に観ると、どのようなことが分かるのですか?

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桑森教授:相撲の基本は、前に出て相手を“押す”ことにあります。ただし、相手を押そうとしても、体重の重い相手だと、重力によって相手の足の裏と土俵との摩擦抵抗が大きくなり、移動させることが難しくなります。しかし、力学的に考えると、どんなに重いものでも「氷の上」のような摩擦抵抗が少ない状況なら楽に動かすことができます。

この原理から考えると、相撲の技術は大変理に適っています。相手の足の裏と土俵の摩擦抵抗を小さくするため、相手を「押し上げるようにして前に出る」ことで、体の小さな力士でも大型の力士を動かすことができるのです。

── いうことは、稀勢の里が強い理由は「相手を押し上げる」のがうまいから?

桑森教授:と言いたいのですが、そうじゃないのが稀勢の里なんです(笑)。稀勢の里は身長が187cmと高く、足も長い。こういう大型の力士は、相手の懐に入って押し上げるのは困難です。じゃあ、稀勢の里はどうやって相手を動かすのか? その答えは、上から「引き上げる」なんです。

── 上から、引き上げる?

桑森教授:自分よりも低いものを動かすとき、人はそれを上へ引き上げて動かそうとします。引き上げることで地面との摩擦抵抗を少なくするわけです。ところが、この方法は相撲の技術的にあまりいいものではありません。止まっているものならまだしも、相手はこっちを倒そうとしているわけですから。腰高の構えで、相手を引っ張り上げるようにして前に出ようとすると、相手に投げられたり、動かれて不利な体勢になったりする危険性があります。

稀勢の里の驚異的な「引き上げ力」【大相撲3月場所 5日目 勢戦】

── であれば、なぜ稀勢の里は相手に勝てるのでしょうか?

桑森教授:そこで観てほしいのが3月場所での勢(いきおい)との取組です。実際に「スポナビライブ」で観てみましょう。この取組で稀勢の里は、自分よりも背の高い勢(身長195cm、体重165kg)を引っ張り上げています。

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(動画を観ながら)まず立合いで稀勢の里は左差しから、下手まわしをつかみます。しかし、右の上手がうまく取れない。それにもかかわらず、右腕で相手の左腕を抱え込み、引っ張り上げるようにして、強引に前へ前へと出ていきます。

── うわぁ、すごい! 稀勢の里、ぐいぐい引っ張り上げますね。こうやって相手の足を土俵から浮かせて、前へ前へと出るわけですね。いやぁ、稀勢の里の方が小さいとは思えない…。

桑森教授:そこなんですよね。普通の力士ならこんな相撲は取れません。自分よりも大きな力士に対して、それを引っ張り上げながら前に出るなんて。でも、こういった相撲を稀勢の里は取ることができるんです。

── なぜ、稀勢の里はこういう相撲が可能なんですか?

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桑森教授:スポーツバイオメカニクス的な視点で見ると、その理由の1つに、体幹を伸展する筋群の強さがあります。体を反らせるための「脊柱起立筋」や「大臀部」といった筋群の筋力が強く、使い方も非常にうまい。

── 強さの秘密は、強靭な筋力にあると。

桑森教授:要素の1つではあると思います。そのほかにも、稀勢の里の強さの特徴に、彼は頭が下がらない

── 頭が下がらない?

桑森教授:稀勢の里のような、相手を引っ張り上げる相撲は、どうしても腰の位置が高く不安定になるため、相手に投げられたり、回り込まれて不利な体勢になったりしやすいんです。このとき頭が下がると、さらにバランスを崩して投げられやすくなる。しかし、稀勢の里の頭が下がることはまずありません。

── なぜ、稀勢の里の頭は下がらないのでしょう?

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桑森教授:まず、股関節が非常に柔らかいことですね。稀勢の里の四股や仕切りの動作を見ていると、膝が外によく開き、腰が前に出ている。上体が前かがみにならないのです。これは、柔軟性があるからこそできるんです。柔軟性があるといっても、そう簡単にできることじゃありません。膝が外に開くというのは、ある意味不自然な形になるわけですから。

稀勢の里の知られざる「防御力」【大相撲1月場所 11日目 遠藤戦】

── 引っ張り上げる筋力、そして投げられにくい。稀勢の里の強さの秘密は、そのあたりにあるわけですね。

桑森教授:さらに付け加えるなら、投げに強いだけでなく、相手の横への動きにも強いことです。分かりやすい例が、1月場所での遠藤との取組です。これも「スポナビライブ」で確認してみましょう。

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まずは立合いから左四つになります。そのあと、稀勢の里がグイグイ前に出ますが、ここ(動画0:33秒ごろ)で遠藤が右から出し投げを打ちながら、稀勢の里の左側に回り込んで、体(たい)を入れ替えようとします。

── は、はやい! 遠藤はいい動きをしますね!

桑森教授:稀勢の里からすると、右上手が取れてないため、相撲のうまい遠藤が相手だと、横に回り込まれるリスクがある。実際、途中で体が入れ替わって、土俵際まで追い込まれてしまいます。

── (動画を観ながら)あぁ! おおぉ、うわぁ…すごい! 土俵際まで押されながらも、最後は稀勢の里が勝ちました。

桑森教授:これも稀勢の里の強さの1つです。彼はとにかく反応が早い。彼は175kgの大型力士にもかかわらず、素早さがあります。遠藤が回り込んできても、その動きについていき、すぐに正面を向くだけの俊敏性がある。

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── なるほど。稀勢の里は攻撃力だけでなく、防御力も高いわけですね。

桑森教授:稀勢の里はあまり前傾姿勢を取らずに、四つで組んでお腹をうまく使いながら、体全身で前に出てきます。膝は外に開き、腰が前に出て、頭が下がらない。相手が回り込んでも、それについていく。タイプは違いますが、あの大横綱・双葉山も膝が開き腰が前に出て頭が下がらない力士でしたね。ちょっと褒めすぎかもしれませんが(笑)。

稀勢の里を覚醒させた「歴史的な名勝負」【大相撲1月場所 千秋楽 白鵬戦】

── これまで稀勢の里は、勝負所での弱さを指摘されていました。長年、稀勢の里を見てきた先生からして、なぜここに来て2場所連続優勝ができたと思いますか?

桑森教授:相撲ファンとして感じるのは、彼は本当に力がついてきたということです。これまで後ろに下がったときにふんばり切れなかったところが、土俵際でも残せるようになってきた。そういった展開でも勝てるようになってきたということが、彼に自信を与えているのかもしれません。

そういう意味では、なんといっても1月場所での白鵬戦は、彼に大きな自信を与えた取組でした。これも「スポナビライブ」で観てみましょうか。

── この取組はよく覚えています。とにかく白鵬の寄りがすごかった! 稀勢の里も、本当によくふんばりましたよね。

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桑森教授:それこそスポーツバイオメカニクス的な見方をすると、土俵際での稀勢の里の「脛(すね)」の角度がポイントなんです。動画で確認してみると、脛がすごく前に傾いているのが分かります。

── ああ、かなり倒れてますね。

桑森教授:さらに、土俵に足がかかっているのもポイントです。例えるなら、土俵際の俵に棒をひっかけて、その棒を水平方向にいくら押しても前に進まないのと同じ状況なんです。つまり、脛がちょうど“つっかえ棒”のようになって、白鳳の攻撃を受け止めていたわけです。

── 白鵬の押す力と脛の角度が絶妙にリンクし、力が相殺されていた…。

桑森教授:そうだと思います。ただし、脛が倒れているというのは、押しには強いですが、一方で、相手が引いた瞬間にバランスを崩す可能性もある。

── ああ、なるほど。とうことは、もし白鵬が少しでも力を弱めていたら?

桑森教授:それこそ稀勢の里は簡単に倒れていた可能性もあります。白鵬がバーッと前に出たあと、体を開いて上手投げか上手出し投げで横に揺する。それだけで勝負の行方は変わっていたかもしれませんね。

── そういう目で見ると、大相撲の奥深さが本当によく出た取組でしたね。

桑森教授:(動画を観ながら)こうして動画を確認してみると、白鵬は一気に前に出て勝負を決めることしか考えていないですよね。白鵬の意地のようなものが、このときばかりは裏目に出てしまったように思います。

結果的に、この勝利が稀勢の里に自信を与えた気がします。立ち合いでは左を差しにいくという「自分の型」を貫き、あの白鵬の攻撃にあれだけ耐えることができた。これは彼にとって、大きな意味を持つ勝ち星だったと思います。

── 最後に、5月場所で稀勢の里は優勝すると思いますか?

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桑森教授:うーん、どうですかね(笑)。まずは腕の怪我がどれだけ治っているか。それから立合いに、迷うことなく、左を差しにいくという「自分の型」で立てるか。まずは初日の取組に注目したいですね。

── 本当に初日が楽しみです。本日は、どうもありがとうございました!

注目の大相撲5月場所に向けて「スポナビライブ」の準備を

稀勢の里の3場所連続優勝がかかった大相撲5月場所(5月14日〜5月28日)。絶対王者・白鵬との対戦はもちろん、人気・実力ともに急上昇中の高安、勢といった次世代ニュースターの活躍も見逃せません。

ただし、1つ悩ましいのが、大相撲中継は基本的に夕方にテレビで放送されているため、会社勤めの人はなかなかリアルタイムで見られないこと、ですよね?

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ご安心を。今回、稀勢の里の分析にも使用した「スポナビライブ」では、スマートフォンとネット環境さえあれば、いつでもどこでも“序の口から幕内までの全取組”を生中継で楽しむことができます。しかも「スポナビライブ」は「見逃し配信」にも対応しているため、休憩中や帰りの電車などで気になる取組だけを見ることもOK。早い話が全場所、全取組、すべてが見放題というわけです。

今回の取材で「スポナビライブ」を初めて知ったという桑森先生も、「映像がキレイだし、タブレットで見られるのはすごく便利。何度も繰り返しチェックできるから、相撲ファンだけでなく、指導者にとってもうれしいサービス」と、かなり気に入っていた様子でした。

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スポナビライブ」では大相撲の配信だけでなく、プロ野球・MLB・テニス・サッカー(プレミアリーグとリーガ・エスパニョーラ)など、12種目の人気スポーツを毎日リアルタイムで配信しています。利用料金は月額1,480円で、4端末から同時視聴が可能。さらに、Yahoo!プレミアム会員・ワイモバイルユーザー・ソフトバンクユーザーなら、利用料金が月額980円になります。

先日入ったニュースによると、稀勢の里が5月場所で着用する化粧まわしには、なんと、あの名作漫画『北斗の拳』に登場する「ラオウ」があしらわれているとか。ケンシロウじゃなくラオウというのも、なんだかちょっと稀勢の里っぽいかも? ということで、皆さんご一緒に!

わが生涯に、一片の悔いなし!!」(って優勝コメントで言ってほしいなぁ…)

記事で紹介した取り組みの動画は以下のとおり。すべて無料で見られます!

大相撲3月場所 5日目「勢 - 稀勢の里」
大相撲1月場所 11日目「稀勢の里 - 遠藤」
大相撲1月場所 千秋楽「白鵬 - 稀勢の里」

source: スポナビライブ

(執筆:稲崎吾郎/撮影:小原啓樹)


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