父親がいなくなったら、共食いを始めるおたまじゃくしたち
image credit : Lisa Schulte / Journal of Zoology

父親がいなくなったら、共食いを始めるおたまじゃくしたち

バトルロワイアルな毒ガエル家族。

バリアビリスヤドクガエルという毒ガエルの親ガエルは、愛情深いと言われています。特にお父さんガエルは子ども達の世話役。でもお父さんのちょっとしたしくじりで、おたまじゃくしは兄弟で食うか食われるかのバトルロワイアル状態になってしまうんだそうです。一体なぜ?

毒ガエルは一般的に自分たちの子どもを大切に世話をすることで知られていますが、バリアビリスヤドクガエルも例外ではありません。まずお母さんガエルは葉っぱについた水滴などに卵を産み付けます。敵から見つからないようにするためです。卵が孵りおたまじゃくしになると、お父さんガエルはおたまじゃくし達を背中に乗せて、育てるのにいい環境を探しに行きます。おたまじゃくしは一つの水たまりに一匹ずつ置かれ、自分だけの水たまりでそれぞれ、親の愛情を十分に受けて大きくなります。

哺乳類以外では、このような親の世話っていうのはとても珍しく、科学者たちはこのカエルの親子のコミュニケーションについて研究を進めたいと考えているそうです。しかし、ペルーでリサーチをおこなったドイツ・トリア大学の生物学者Lisa SchulteさんとMichael Mayerさんによると、バリアビリスヤドクガエルは私たちが思っているような親子愛を持っているというわけではないとのこと。理由はわかりませんが、たまにお父さんガエルが自分の子供のおたまじゃくし数匹を一つの水たまりに集め、放っていく場合があるそうです。

そうすると、バトルロワイアルが始まります。その水たまりで食べ物の争奪戦が始まり、食べ物がなくなると兄弟の共食いが始まります。しかも最後の一匹になるまで。「最初は何匹かのおたまじゃくしが入っていた水たまりに、最終的に一匹以上残っている状態は一度もありませんでした。」とSchulteさんは語ってくれました。

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image credit : Lisa Schulte / Journal of Zoology

肉食はカエルの世界では珍しくありません。実は、毒ガエルの親は子どもを育てる時に小さいおたまじゃくしを食べさせることがあるそうです。しかし、おたまじゃくしたちが自分たちの間で共食いを始めるというのは、科学者たちもびっくりだったよう。本当におたまじゃくしが同じ水たまりに置かれると共食いをするのか調べるために、彼らは全く同じ状況を作り出して観察することにしました。

まず、バリアビリスヤドクガエルが産んだ卵を15腹集めてプラスチックの容器の中で孵化させます。それぞれのおたまじゃくしは、30分ほど泳いでいるのが確認されました。数日後、テスト用のおたまじゃくしをバリアビリスヤドクガエルのメス・オス、種類の違うカエル、それと3Dで作ったカエルの模型と一緒に水たまりに入れます。そしておたまじゃくしがどのような反応を見せるか、それぞれと30分間観察しました。

Schulteさんたちは、おそらくおたまじゃくしは自分と同じ種類のバリアビリスヤドクガエルのオスの方へ、お父さんだと思って泳いで行くんではないかと予想。しかし、結果はそんな悠長なものではありませんでした。おたまじゃくし達の本能をなめてはいけません。これから兄弟の文字通り「骨肉争い」が始まるってわかっているようで、とにかく一緒に入れられた本物のカエルにものすごい勢いで近づき乗っかります

食べられないように必死になるおたまじゃくしにとっては、オスだろうがメスだろうが、違う種類のカエルだろうが関係ありません。とにかくカエル達の背中に逃げようとします。カエルが助ける助けないも関係ありません。とにかく近くに逃たのです。でも3Dで作ったプラスチック模型のカエルだけには集まってきませんでした。化学物質の信号の違いで察知しているのかもしれません。

南イリノイ大学の毒ガエル学者のJason Brownさんは、この実験に参加はしなかったものの、この結果を聞いて自分が実験をおこなった時の謎が解けたと説明しています。「ごく稀に、ものすごく大きなおたまじゃくしが一匹だけ、それまでは空っぽじゃなかった水槽にいるのを見かけることがあるんです。なかなかのツワモノですね。」と話しています。

SchulteさんとMayerさんは「今回の実験で、毒ガエルの親子コミュニケーションにおけるおたまじゃくしの役割の見方が変わりました。」と研究結果をまとめた論文を締めくくっています。これからも親に数匹一緒に入れられてしまったおたまじゃくしの行動を研究し、動物界の親子コミュニケーションについての研究を進めて行きたいそうです。人間界でも兄弟ゲンカはありますが、食うか食われるかというエンディングではないですもんね、やっぱり動物の世界は世知辛い…。

source: Journal of Zoology

Christie Wilcox - Gizmodo US[原文
(岩田リョウコ)

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