覆面の日本人アーティストAmPmにインタビュー。デビューシングルが530万回再生、リスナーの90%以上が海外の理由とは?
Image: AmPm – We are creative unit

覆面の日本人アーティストAmPmにインタビュー。デビューシングルが530万回再生、リスナーの90%以上が海外の理由とは?

AmPm(アムパム)という日本人アーティストをご存知でしょうか。日本ではまだそれほど知名度はないかもしれません。彼らはSpotifyでの総再生回数のうち94.8%が日本以外の国で再生されている覆面2人組のクリエイティブユニットです。

今年の3月にデビューシングル『Best Part of Us』がリリースされてからわずか4カ月でSpotifyでの総再生回数が530万回再生(7月時点)、5月時のマンスリーリスナーは150万人を突破しています。

数字を並べただけでは何も伝わらないと思うので、以下PLAY RECORDSより『Best Part of Us』をお聞きください。

Video: PLAY RECORDS/YouTube
Best Part of Us / AmPm feat. Michael Kaneko

今回、ギズモード・ジャパンはAmPmにインタビューしてきました。海外での驚異的な再生数の秘密、ストリーミング/サブスクリプションサービスの溢れる時代に生まれた新鋭アーティストの正体に迫ります。

数字が取れてなかったら見えなかった部分

ーーAmPmさんはいつから活動をされているのでしょうか?

AmPm_右:ファーストシングル『Best Part Of Us』を出した日がデビュー日という位置付けだとすると、今年の2017年3月ということになります。ただし、実際に楽曲自体が出来上がったのは2015年の年末です。それまでに何か活動していたわけではなく、そもそもプロジェクトとしてどうしようかというのが決まっていない状態で楽曲だけが先にできていました。

AmPm_左:プロジェクトを始めるにあたり、「アーティストとして」という意識は全くなく、今の空気感を感じて周りのミュージシャンやクリエイターの方を交えて何ができるんだろうというところを考えていました。僕らは本業がクリエイティブの会社なので、デザイン・音楽を使って面白いことをやろうと。

ーーAmPmさんはSpotifyでデビューシングルをリリースしてからわずか2カ月でマンスリーリスナーが150万人突破(5月時の過去28日間のユニークリスナー数)したいるとのことですが、具体的な理由はなんだと思いますか?

AmPm_右:私自身の本業としてプロモーションに携わる仕事をしているので、ちゃんと結果を出したいと思ったところがあります。リリースのタイミングもずっと探っており、厳密にいうとファーストシングルのリリースの直近、半年から1年くらいに遡っていわゆるビルボードチャートなどでどれくらいのBPMの曲が入りやすいのか、キーがどれくらいの曲が何週連続でトップ3に入っているのかというの見て、目星をつけました。

こういった検証をした結果、ここかなっていうタイミングでリリースをしています。あとは、当然Spotify以外にもいろいろなストリーミングサービスで配信をさせていただいてるんですけど、YouTubeやSpotifyは数字が出ちゃうじゃないですか。表に出ている数字はごまかしようがないので、そこは頑張ろうと意識しました。

ーーAmPmさんはSpotifyを通じて海外のリスナー(チリ、メキシコなど)を獲得していますが、どのように感じていますか?

AmPm_右:リリースしてから今に至るまで、まだ4カ月くらいなので、僕らとしても正直手応えというか実感がありません。僕らもなんで売れたのかというのはかなり検証しました。特にSpotifyでは局地的に数字が取れていますが、他のメジャーアーティストさんと比べても異様な数字になっています。

いろいろと検証したところで言えば、いくつか仕掛けたプロモーションが運良くハマったという点です。また、『Best Part Of Us』で歌っているMichael Kanekoというボーカリストがかなりネイティブに近い英語で楽曲を歌えたというところも大きいのですが、一方で完全に英語圏であるUSとUKのプレイリストには大手レーベルのアーティストさんたちがたくさんいらっしゃるので、なかなか入れないんですよね。逆に非英語圏のところであれば、まだ可能性があるというか、そこの隙間に入り込めたように思います。

そういう意味では今回いろいろな動きがあった中で、非常に壁を感じたというか、現実を突きつけられたというか。これが噂の音楽ビジネスかという(笑) 逆にここまで数字が取れてなかったら見えなかった部分だと思います。ただ現実としてインドネシアやメキシコ、チリといった国々の多くの人に聞いてくださったというのは素直に嬉しいです。今後は、USやUKのプレイリストに入ってみたいという気持ちは強くなりました。

ーーAmPmさんに海外のリスナーが多いのは、Spotifyに存在する100以上のプレイリストに楽曲が取り上げられたというのが大きな要因だと感じるのですが、このプレイリストという機能はどういった役割を担っていると思いますか? アーティストとして、リスナーとしての意見をお聞きかせください。

AmPm_右:一つは、私たちも純粋にリスナーとしてものすごく音楽を聴くので、こういったストリーミングサービスはすごくありがたいです。ある意味、定額で聴き放題なので。やっぱり他のサービスと比べてSpotifyのプレイリストって本当に多種多様ですし、数が無数にあるので飽きないですよね。他のサービスだとたくさんのプレイリストはあるものの、選曲が似てることもあって、目新しい楽曲を探すという機能は果たしてないんじゃないかなと思っています。

実際に、他サービスの人気プレイリストは有名なアーティストさんが占めてることが多いのですが、Spotifyに関していえば私たちも含めて無名の新人が入ってることもたくさんあります。そういう意味では新しいアーティストや楽曲を知るには素晴らしい機能だとは思います。

ーーAmPmさんはTuneCore Japan(*)というサービスを使って楽曲の配信していると伺いました。こういったサービスを使うことで誰もが簡単に自分の楽曲の配信をできるようになりましたが、インディーズとメジャーの関係性は今後どのようなものになると思いますか。

AmPm_右:もちろんTuneCoreのようなサービスを使うことでインディーズの人でもメジャーと同じように流通できるようになったのは事実です。しかし売れるということだけでいえば、プロモーションであったりとか、 人と人が直接会って話すような営業も含めたマンパワーも必要です。インディーズだとそこは物理的にかなわないので、絶対的な壁があるとは思います。

ごく稀に、 インディーズからメジャーを上回る楽曲が出ることはあります。ただ、それのどっちが良い悪いという考えも全くないんです。現実問題としてインディーズはインディーズでしかないなあと。インディーズもある程度、スマッシュヒットを出していきながら多少自分たちが使える予算を作ることで、やっとメジャーと戦える時が来るかもしれないですが、やっぱり時間がかかります。

(*):自分の楽曲を自ら世界中の配信ストアで販売できるサービス

解析できるものは解析する

Video: PLAY RECORDS/YouTube
Life is / AmPm feat.Hiro-A-Key

ーーSpotifyやApple Music、SoundCloudといったストリーミング/サブスクリプションサービスが浸透してきたことで音楽の聴き方が変わってきたと思うのですが、その中でアーティストとして心がけていることはありますか。

AmPm_右:特にSpotifyに関してはバイラルチャートという面白い仕組みがあるので、そこはAmPmのプロジェクトではすごく重要視しています。今回さまざまなプレイリストに入ったきっかけでもあるんですけど、バイラルチャートの仕組みはものすごく解析しました

実際にGitHubにはSpotifyのプログラマーたちがたくさんいるので、そこでもソースコードをかなり見て、どこの数字をバイラルに反映させてるのかという部分の仮説をたてました。その仮説に対して広告を出すなど、手を打ちましたね。結果としては狙い通り、動きました。運も良かったと思いますが。ですので、アーティストとしてストリーミングで心がけてるところとしては、解析できるものは解析するということです。

ーー今後はアーティストにもそういった能力が必要とされていくのでしょうか。

AmPm_右:そうですね。現実問題として、良い音楽であれば売れるということは全くないですから。そもそも良い音楽の定義は人それぞれだと思います。前提条件として、楽曲のクオリティは当然意識しなくてはならないところで、それに加えて音楽サービスを提供している会社に対しての営業活動であったり、もちろんSpotifyみたいにシステム的に動かしてるところであれば解析しなきゃいけません。そこはメジャーだからとかインディーズだからとか関係ないところだと思います。

ーー解析などを行なうには専門的な知識が必要だと思うのですが、ご自身でやられるでしょうか?

AmPm_右:やりますね。好きだからじゃないですかね。

AmPm_左:基本独学ですからね。デザインでもなんでも。

AmPm_右:特に今でもSpotifyはたくさんのアップデートを重ねているので、その辺もすごいなあとは思います。実際に僕らが注目されたのは、Spotifyのバイラルチャートの中でもアメリカのチャートとグローバルのチャートに入ったというところが大きなきっかけではありました。

僕らも意図的にバイラルの影響があるであろうところに広告を出したりとか、数字を作ったというところは一理あると思うんですが、一方で、もしかしたらエラーで自分たちの曲がチャートインしたんじゃないかとも思っています。実際には言うほどの広告費は使ってないですし。いくらなんでもグローバル、USチャートに入るって普通じゃないですよ。僕らの場合はエラーによるチャートインの可能性も非常にあるなと思っています。

ーーそれを踏まえた上で音楽の作り方で変わったことはありますか?

AmPm_右:いまは新曲も進めていますけど、あんまり意識してもしょうがないので自分たちが聴きやすい、聴きたい曲であること。あとは強いていえば曲を聴いて絵が浮かぶかどうかを重要視しています。例えば小説を読んでて絵が浮かんだりするじゃないですか。あれと同じような感覚です。

ーー最近はSoundCloudなどのサービスではジャケットのビジュアルがリスナーを惹く役割を担っていると思いますが、音楽とビジュアルの関係性についてどのようにお考えですか?

AmPm_右:すごい売れてるアーティストなら関係ないと思うんですけど、我々のような無名のアーティストであれば緻密に考える必要があります。例えば、新着一覧として画面上に出るじゃないですか。その中でやっぱり目だたなきゃいけません。例えば色で言えば、SpotifyはUIが黒いので、黒いジャケットを作っても埋もれます。一方では、AppleだとUIが白ベース。どこで重点的に売っていきたいか。バナー作る感覚と一緒ですよね。どうやったらクリック率が高くなるか。そもそもクリックされないといくら良い曲だとしても、聴かれもしないので。そこは意識しています。

ストリーミングサービスはメディアである

Video: PLAY RECORDS/YouTube
I don't wanna talk / AmPm feat. Nao Kawamura (Lyric VIdeo)

ーー今後はどのようなアーティストを目指していますか?

AmPm_右:今の時代の音楽、特にストリーミングサービスで言えばもうメディアだと思うんです。Spotifyは有料サービスもありますが、フリーモデルがある中でそれをどうやって成立させてるかと言えば広告があるからです。そこで収益を上げていくにはどれだけリーチするかという数字の話しかないわけで、僕らはその中にいる1記事みたいなものです。とはいえ、その記事でも多くのユーザーに読まれていたらまた特集で連載になるじゃないですか。そういう意味で僕らも数字は意識しなきゃいけないと思っています。

僕らがある程度の数字が取れるようになって来たら、今後もボーカリストや若手のアーティストをフックアップしていきながら活動していきたいです。SpotifyやAppleが大きな箱だとすれば、僕らはその中のショップインショップみたいなものですから、そこの影響力はもっと強くしていきたいなと思っています。ある意味アーティストとしてっていうよりもコンテンツとして、メディアとしてという意識のほうが強いですね。

これからの未来はそういう傾向が強くなると思いますから、僕らは先に実験台になって、メディアとして、コンテンツとして、心構えていきながら活動することで良いこと、悪いことがあるのかを検証していくつもりです。AmPmでの活動は仮に失敗しようが自分たちの責任なので、そこのノウハウと経験というのは他のアーティストに対して伝えていければと思っています。

ーー今後のリリースやLive活動について教えてください。

AmPm_右:間に合えば7月中には新曲を出せる予定です。そして年内に10曲までリリースしたいなと思っています。次の6曲目、7曲目はなんとなく構想はあるのですが、残り3曲は全くノープランなので、時代の流れというものも読みながら制作できればいいかなと。

例えば今年で言えば、ジャミロクワイ、ゴリラズが新しいアルバムをリリースしてちょっとUKが熱くなったかと思いきや、マンチェスターでテロがあった後、アリアナグランデが、他のアーティスト達とチャリティライブやったじゃないですか。あれでまた流れが変わっちゃったなと。トレンドが変わるのが年々加速しているので、状況を読みながらリリースしていければと考えています。

ーーEPやアルバムといった形でまとめではなく、1曲ずつ出すというのも戦略なのでしょうか?

AmPm_右メディアだからじゃないでしょうか。記事をまとめて出さないですよね。メディアであれば毎日なんらかの更新があると思いますが我々も同じです。コンスタントに出していかないと僕らみたいなのはすぐに忘れ去られちゃうので。

ーー1曲のほうが戦略や解析はしやすいということはあるのでしょうか?

AmPm_右:そうですね。アルバムになってしまうと、複数曲とか収録されていても、アルバムを1つの作品として見ちゃうので、なかなか軌道修正がしにくいです。今の時点でアルバムやリミックスものを出すのはちょっと検証しにくいので、しばらくはリリースしないと思います。それでも、曲が溜まってくればアルバムを出す可能性はあるかもしれません。

ライブのオファーは国内外から来てますが、もしかしたら夏時期に海外でやるかもしれないです(*)。ただ、正直ライブに関してはこのスピードで売れると思ってなかったので準備ができていません(笑) 海外は状況と内容によっては出演の可能性があるかもしれないです。

(*):8月9日(水)にインドネシアのジャカルタ国際展示場(JIExpo)にて開催されるアジア初のSpotify大型イベント「SPOTIFY ON STAGE」に出演予定。入場は無料で、インドネシアの13歳以上のSpotifyユーザーであれば、特設サイトから、どなたでも応募できます。

ーー最後に、インターネット(ブロードバンド)以前と以後で最も音楽が変わったことはなんだと思いますか?

AmPm_右:変わったこと…ないんじゃないですか? 音楽を聴く、それがレコードなのかCDなのかデジタル配信なのか、なんらかを通して聴くことには変わりはないので。手段が変わっただけで、音楽は聴きますし。もしかしたら以前よりも音楽を聴く時間は増えているんじゃないんですかね。今後もストリーミングじゃないまだ見ぬ何かになるかが現れるかもしれないですけど、結局何かを通じて音楽を聴いて楽しんだりとか気持ちを切り替えたりと、音楽の持つ意味合い自体は変わらないと思います。

強いて言うなら、音楽がよりメディア的になるのであれば、マーケティングの要素は大きくなってくると思います。その結果、ビッグデータを解析して人工知能が曲を作るとか、そういったこともあるでしょう。いま囲碁や将棋が人工知能と戦ったりしているのと同じで、人間が作ったものと人工知能が作ったものでどっちが売れるのかという論争も起きるでしょうし、もしかしたら公にされてないだけで、既にあるかもしれません。エド・シーランがロボットかもしれないし(笑)

純粋にリスナーとしてというところで言えば、自分が聴きたい曲が今あるのかないのか、結果として、ロボットが作ったものでも良い曲であったらそれはそれでいいんじゃないかなと思います。インターネット以前とか以後とかどっちでもよくて、良い曲とたくさん出会い、良い音楽を聴いていきたいです。

***

「解析できるものは解析する」という言葉は予想していませんでした。しかし、コンテンツを消費する手段が変わり、消費速度も加速する現代において、実は従来よりも"何が流行しているのか"、"再生数"など「見えやすくなった部分」があるのは事実です。与えられた環境を利用するだけでなく、その環境を作り上げているものがなんなのか?を突き詰めたことが、AmPmというアーティストを世界につなげたのだと感じました。

ただし、そういった時代ではあるものの、「音楽の本質は変わらない」とも語るAmPm。あくまでも彼らの目的は、自分たちの音楽を届けるということ。従来のアーティストの形を壊すような存在にも感じられますが、同時に、アーティストの一つのあるべき姿のようにも感じました。今後の音楽、そしてアーティストの未来が垣間見えたような気がします。

Source: Spotify

Image: AmPm – We are creative unit
Source: YouTube(123), Spotify, AmPm – We are creative unit
Reference: TuneCore Japan
取材協力:Spotify Japan, TuneCore Japan

(K.Yoshioka)

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