そのモジュレーション幅、ビースト級。KORGショールームでArturiaのシンセ「MatrixBrute」に触ってきた

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  • author ヤマダユウス型
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そのモジュレーション幅、ビースト級。KORGショールームでArturiaのシンセ「MatrixBrute」に触ってきた
Photo: ギズモード・ジャパン

この奥深さ、こいつは沼シンセだ。

以前、よみうりランド駅に居を構えるKORGショールームにてMoog社の伝説的シンセ「Minimoog Model D」に触れてきたというレポートをお伝えしましたが、実は同日、もう1台試奏させていただいたシンセがあったんです。

それが、「MatrixBrute」。フランスのメーカーArturiaによる渾身のアナログシンセです。同社は元々ソフトウェアシンセの開発に注力してきましたが、2012年にArturia初となるピュアアナログシンセ「MiniBrute」をリリースして以降、ハード分野でも高い評価を得てきました。このMatrixBruteはそうしたハードシンセ路線の集大成ともいえるマシンなのです。

Video: ギズモード・ジャパン/YouTube
KORGショールームで「MatrixBrute」を触ってみた

MatrixBruteが初めてお披露目されたのは2016年のNAMM Show。そこから何度か発売延期を重ね多くのシンセファンをやきもきさせたものですが、ついに今年3月に発売と相成りました。その操作感とサウンドお伝えしようと思いますが、全てを語るにはあまりにも余白が足りません。それほどに超・豊かな表現性を秘めているのです!

シンセの基本的な仕組みは、こちらのシンセHow To記事をご覧下さい。

強力なフィルターでバリバリな加工を

音の流れはパネル左から順にオシレーター→フィルター→アンプという、基本的なアナログシンセと同じ。MatrixBruteは3基のオシレーターをもっており、うち2種はMiniBruteと同じBruteスタイル、1基はモジュレーションソースとしても利用できるようになっています。何かと助かるノイズ・ジェネレーターも搭載。

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Photo: ギズモード・ジャパン

オシレーターから出た音はミキシングされた後、フィルターへと送られますが、このフィルターがまた個性的。MatrixBruteには「Steiner-Parkerフィルター」と「ラダー・フィルター」という、2種類のフィルターが搭載されています。フィルターはアナログシンセを個性づける重要な要素なのはシンセHow To記事でお話しましたよね。Steiner ParkerはレアシンセSynthaconで知られるメーカーの名前で、そのフィルターはスムージィかつアグレッシブなキレがあります。一方のラダー・フィルターはMoogシンセに搭載されている、我々がよく知るフィルターです。

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Photo: ギズモード・ジャパン

この2種類のフィルターはそれぞれ切り替えられるだけでなく、直列/平行のルーティング設定も可能。一際大きいMaster Cutoffツマミをいじるだけで、とんでもなくゴキゲンでユニークなサウンドが飛び出してきます。もうキュイッキュイのブリッブリです。

メモリー機能と無限の可能性を秘めたマトリクス

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Photo: ギズモード・ジャパン

MatrixBrute最大の特徴が、右パネルの大部分を占めるマトリクス。この16×16のパネルを初めて見た時は「ピクロスかな?」と恐れおののいたものです。しかし触っていくうちに仕組みもわかってきて、なるほどこれは効率的だな、と。でもこうした深淵そうなインターフェイス、なんか良いですよね。

マトリクスではモジュレーション設定やステップシーケンサー機能、プリセットのセーブ&ロードなどが行なえます。1つずつ見ていきましょう。

マトリクス部の左列にはLFOやエンベロープなどが、上列にはVCOやフィルターなどが書いてあり、それぞれの機能が交わる部分のボタンをオンにすることで、どのモジュレーションソースをどの機能にアサインするかを設定していきます。例えばLFOとVCOが交わるボタンをオンにすればLFOで音程を動かせる、という具合です。1つのモジュレーションソースで複数の機能を変調させることもできるので、アイディア次第では複雑極まるモジュレーション・パッチングもできる。これが、無限大の音作りたる所以です。

そうして試行錯誤の末出来上がった音は、256のメモリーにセーブできます。アナログシンセはデジタルのように音源を呼び出したりするのが難しい一期一会のサウンドというのが通念でしたが、これならばライブ中の音色チェンジも思うままです。

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Photo: ギズモード・ジャパン

最大64ステップのシーケンサー機能は、REC状態にしてから鍵盤を押していけば簡単に構築できます。マトリクスのモードをシーケンサーに変えればゲート調整やアクティブステップのオン・オフなんかも可能で、適当なシーケンサーを流しながらツマミやモジュレーション・パッチングをいじるだけでいくらでも遊べてしまえそうです。これを応用すれば、ディケイの短いVCOやノイズを組み合わせて1台から出てるとは思えない複雑なパーカッシブフレーズを作ることも。プリセットにそんな感じの音があったんですけど、どうやって鳴ってるのか不思議でなりませんでした。

現代を意識してリブートされたジャイアントアナログシンセ

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Photo: ギズモード・ジャパン

まさにパワフル、まさにアバンギャルド。多くのユーザーの「こうあって欲しい」を濃縮還元し、使っているうちにもっと使い倒したくなる沼のような奥深さを秘めた1台であると感じました。ここで紹介した機能は氷山の一角、砂場の砂金に過ぎません。

MIDI、USB端子で現代的な機器との連携はもちろん、12イン12アウトのCV端子を活用すればモジュラーシンセとのディープなセッションも思いのままです。シーケンサーとして使っても良いし、逆に外部シーケンサーでMatrixBruteを鳴らしつつ千変万化のサウンドモジュレーションを楽しむのもよし。

……にしても、Minimoogを触った後だからなのか、価格設定は安いと感じてしまいました。そのお値段、298,000円(税別)。ですが、現在では楽器屋さんによってさらにお求めやすい価格になっています。

MatrixBruteは触れば触るほど出来ることがわかってきて、新しい感動と試行欲求にかられてしまいますね。楽器屋さんで見かけた際は臆せずマトリクスをいじり倒してみて下さい。最初はプリセットを呼び出して、そのモジュレーション構造を見てからいじるとわかりやすいと思います。

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Photo: ギズモード・ジャパン

贅沢すぎるMinimoogとの共演。もうここに住みたい……。

指先に感じる、レジェンダリー・サウンド。KORGショールームで「Minimoog Model D」に触ってきた

Photo: ギズモード・ジャパン

Source: Arturia

ヤマダユウス型