古代類人猿の頭蓋骨の化石が見つかったけれど...
Image: Fred Spoor

古代類人猿の頭蓋骨の化石が見つかったけれど...

研究とは異なる見方にも注目。

1300万年前の幼い類人猿の頭蓋骨が北ケニアの地層から発見されました。ほぼ完全な状態の頭蓋骨を発見したのはニューヨーク州立大学ストーニーブルックのIsaiah Nengo氏率いる研究チーム。類人猿や人類の進化過程に関する新たな分析結果をNatureに発表しました。

おおよそ2300万年前から500万年前、新たな環境に馴染んだ原始的な類人猿が多様化しはじめ、アフリカからユーラシアに広がったとされる中新世。この時代については古生物学的な証拠が非常に不足しています。

古代類人猿の化石は人類のそれよりも稀少で、言うまでもなく進化の過程を知るうえで重要な手がかりです。それにも関わらず、1700万年前〜700万年前の類人猿の完全な頭蓋骨はこれまでアフリカで発見されることなく、1400万年前〜1000万年前の頭蓋骨に関しては少しもありませんでした。

新しい類人猿の頭蓋骨の分析結果

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Image: Christopher Kiarie
新たに発見された「アレシ」の頭蓋骨。砂岩が部分的に取り除かれた状態

新たに発見された類人猿は、ニャンザピテクス属の新種として「ニャンザピテクス・アレシ」または略して「アレシ」と称されました。現代の類人猿や(600〜700万年前に類人猿から枝分かれした)人類よりもはるか昔に生息していたとされています。研究者たちによると、アレシは現存する類人猿すべての共通祖先にもっとも近しいことが示唆されています。

頭蓋骨を分析した結果、アレシは現代のテナガザル類に近似していることが示されました。ただ、テナガザル類直結の先祖ではないことから、異なる種の動物から似通った身体的特徴が現れる収斂進化ではないかと考えられています。

Video: NPG Press/YouTube

頭蓋骨の年代測定は、化石が発掘された岩層の分析やアルゴン同位体の測定によって行なわれました。研究者たちがシンクロトロン放射を用いて頭蓋骨の3D画像を生成し、化石の内部を調べたところ、幼い類人猿の歯は化石化する過程で欠けていたものの、未萌出歯や奥歯の歯根は無傷のままであることがわかりました。性別は明らかになりませんでしたが、化石化した歯の構造から約16ヶ月で亡くなったことは判明しました。これは、木の年輪を数えるようにレイヤーの数を数えるやり方が取られたのだそうです。

一連の分析のすえに研究者たちはアレシをテナガザル、ゴリラやチンパンジーなどの大型類人猿、そして人類を含むヒト上科のグループと結びつけました。

頭蓋標本を分析したところ、大人に成長していれば11.3キログラムほどあったであろうことが示唆されています。アレシは頭の大きさに比べて非常に小さな鼻と口が特徴で、見た目はテナガザル類に類似しているものの、耳の半規管は著しく小さいことが指摘されています。これは霊長類の動物が枝から枝へ激しく体を揺らして動くときなどの方位や振動の感知に使う部位であることから、アレシは木から木を身軽に移動するような猿ではなく、まぎれもなく類人猿だと示されました。

Video: NPG Press/YouTube

分析結果には懐疑的な意見も

一方で、次のような意見もあります。

歯の発達や脳の大きさ、内耳の分析など今回の研究がとても徹底的であることを評価しながらも、結論に飛躍があると指摘するのは、トロント大学文化人類学教授のDavid R. Begun氏。特に、「ニャンザピテクス属が独特なグループに属することや、プロコンスル(2300〜2500年前のあいだに生息し、現在は絶滅した霊長目)やEkembo(2000〜1700万年前に生息)などの種よりも現代的だと結論づけることには同意できない」と述べています。

ニューメキシコ州立大学の人類学者であるBrenda Benefit氏は、研究には携わっていない立場で「ニャンザピテクス属が現存するすべての類人猿の共通祖先にもっとも近しい」という著者の主張について「私は懐疑的です。プロコンスルやEkemboのような中新世の類人猿もまたその候補にふさわしいと考えているためです。この新たな標本は著しく完全な状態で、この時期の類人猿がどのように育ったか(猿ではなく類人猿のように)ということや、脳の大きさ(類人猿よりも猿のように)など多くを教えてくれたことは確かですけどね」と、米Gizmodoにコメントしています。

こうした議論に新たな展開があるとしたら、それは次の化石が発見されたときになるでしょう。より多くの標本が揃うまで...といっても、今回のニャンザピテクス・アレシのように古代の類人猿や人類の進化過程を結びつけるような化石証拠が発掘されるのは、また次の世代になるかもしれません。そうこうしているうちに自分も化石化しちゃうんじゃないかと...なんていうのは大げさですが、それほど今回のアレシの化石が学術的に貴重な標本であることはまちがいなさそうです。

Image: Fred Spoor, Christopher Kiarie

Video: YouTube 1, 2

Source: Nature

George Dvorsky - Gizmodo US [原文

(Rina Fukazu)

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