「人の営みがなければ、ただのグレーな塊なんですよ。東京なんて」NAKED代表・村松亮太郎さんが「東京」について語った1時間
Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン編集部)

「人の営みがなければ、ただのグレーな塊なんですよ。東京なんて」NAKED代表・村松亮太郎さんが「東京」について語った1時間

都市とは人の営み。

東京駅のプロジェクションマッピングをはじめ、映像とテクノロジーを使った空間演出を手がけてきたクリエイティブ企業・NAKED Inc.(ネイキッド)。今回、彼らが手がけた最新作『TOKYO ART CITY by NAKED』は、東京の象徴的な建物を巨大模型で再現し、それらをプロジェクションマッピングやインタラクティブ技術を使って演出しています。

数々の近未来的な空間演出を手がけてきたNAKEDには、毎度その映像やテクノロジーに驚かされます。一方で、今回は2020年の五輪を控えたこのタイミングで「東京」をテーマにしているのが、テクノロジー以上に重要な意味があると思うんです。

TOKYO ART CITYを行なう意味を探りつつ、華やかなテクノロジーアートの裏にあるディープな東京への想いをNAKED Inc.代表・村松亮太郎さんとたっぷりお話してきました。

170809_naked_tokyo_art_city_p12.JPG
Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン編集部)
NAKED Inc.代表 村松亮太郎さん

ギズモード・ジャパン編集部(以下、ギズ):まず、今回のテーマ「東京」は、どういう経緯で決まったのでしょうか?

村松亮太郎氏(以下、村松):いろんな複合要因ちゃ複合要因なんですけど、何かのタイミングを狙ったわけではないんですよね。

2012年の末に東京駅でプロジェクションマッピングをやって以来、東京に限らず地方でもマッピングをやったりするんですが、僕の作品はどうしてもその場所の意味を含むんです。たとえば東京駅のプロジェクションマッピングを、隣のマンションでやってもまったく意味が違ってきますよね。

つまり作品の半分がリアルな建物で構成される以上、その土地のこととか、その場の意味をすごく考えさせられるんです。

なかでも、僕は東京の建物を使った作品が一番多いので、東京ってなんだろう?と考えることが多いんですよ。東京という場所そのものが持つ意味を考えざるを得なくなってきたというか。

ギズ:村松さん自身が感じてきたその東京を、今回のイベントで一度作品として可視化させようというわけですね。

村松:そうですね。あと2020年に東京五輪もあって、みんなが東京を気にするじゃないですか。東京についていろいろ考えてもいんじゃない?ってことを投げかけるには、いいタイミングですよね。東京に意識が集まっているこのタイミングで、過去現在、そして未来の東京について考える機会を提示できれば、みたいな意味もあります。

東京は人々の営みの蓄積

新宿
Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン編集部)
『新宿』エリア:都庁と新宿のビル群を巨大模型で再現し、プロジェクションマッピングで都庁の壁や夜景を表現

ギズ:作品についても聞かせていただきたいのですが、まず会場に入ってきたときの新宿・都庁のインパクトが凄いですよね。都庁のなかでは小さい人やエレベーターが動いていて、インパクトだけじゃなく細かいところも作り込まれています。そういうところまで、村松さんがディレクションされたんですか?

村松:そうですね。僕が総合的に演出を見ながら、実際に制作するスタッフまでNAKEDでワンチームを組んでいます。

そもそも、このイベントのコンセプトは「都市とはアートである」ですが、正確に言うと「都市とはアートである。そして成長する」なんですよ。2016年の末に今回のイベントのプロトタイプを半分のサイズで渋谷・ヒカリエでやったんですけど、都市ってずっと未完成なので、このプロジェクトもずっと未完成なんですよ。東京はずっと未完成なんですよね。

で、その東京って誰が作り出しているかというと、人々の営みなんです。東京にビル群があったりしますけど、それも人々が生み出したもの、つまり人の営みの蓄積でしかないんですよね。結局、夜景はひとつひとつのライトですし、車だって単に人が移動してるにすぎなくて。そういった感覚をちゃんと伝えたいので、おのずと細かい描写になってくるんです。

写真
全体演出:一定の間隔で、TOKYO ART CITYのすべての作品が連動する演出が行なわれる

ギズ:あともうひとつ細かい描写で気になっているものがあって。全体演出(写真参照)のとき、写真同士がつながったような映像が都庁や会場全体に表示されるじゃないですか? なぜ写真を使った表現にしたんでしょうか?

村松:今回のイベントは基本的には、街にあるモノ、物質的なところがベースになっていますが、この映像はネットワークやコミュニケーションを表現しているんですね。要は電波にのって、SNSとか物質的に見えないところで人と人のコミュニケーションが発生していると。そこもすべて含めて東京ですよね。

今回は未完成のアートだから、しょうがないっちゃしょうがないんですけど、相手が東京だからスケールがデカいんですよね。全部を表現しようとしても、しきれない部分がまだまだあって。でも見えない部分もあるってことをまずは表現したかったんです。

全体演出 光の住人
Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン編集部)
全体演出中はフロアの指揮をとるようにLDHのSAMURIZE from EXILE TRIBEがダンスを行なう

ギズ:でも、その全体演出のネットワークの表現によって、渋谷や新宿のエリアがひとつになるのはまさしく東京そのものだなって思いました。

村松:東京ってそれぞれのエリアが人の営みの集積地だから、すごくカオティックなわけですよね。それが東京っぽさになるわけだけど、それぞれの都市にもパリっぽさとか、ニューヨークぽさってあって。でもパリって、もっと統一性あるんですよ。

逆に東京は色んなエリアがあって、それぞれが結構バラバラなんですよね。それはパリとかよりも、東京のほうがよっぽど(エリア間の差が)激しくて。しかもエリア自体も常に変化してて。そのカオティックさが東京だなぁって思うんです。

実際、僕のパリの友達とかも、東京って面白いっていうわけですよ。僕ら東京にいる人間は「パリとか素敵じゃないか」と思ってるじゃないですか。でもその友達は「パリは変わらないからね」って。東京は、どんどん変わるし、新しいものがどんどん出てくるから面白いんですよね。

ギズ:変わることをネガティブに捉える人もいるじゃないですか? そういう意味では、村松さんは東京の変化をポジティブに捉えているってことですか?

村松:もっと言うと、ポジティブとかネガティブっていう概念をあまり持ってないかもしれないですね。視点の問題なので、すべてのものにポジティブな面ネガティブな面あるでしょうけど、みたいなスタンスに近いです。

じゃあ変化が止まるのか、というと止まらないでしょうし、進んで行くわけですから許容せざるを得ないんですよ。昔に戻って木の実とか食いますか?みたいなことにはならないわけですよね(笑)

ポジティブな面ネガティブな面を含む未来が待っているからこそ、過去から現在の自分たちの営みの意味性を見ながら、未来を考えようよ、と。

東京のミクロ、マクロ、一体感

170809_naked_tokyo_art_city-1.jpg
Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン編集部)
『東京俯瞰図』:それぞれのアイコンを押すことで東京のデータを俯瞰で見られる

ギズ:東京ってミクロな視点と、マクロな視点があると思うんですよね。さっきの新宿の演出、つまりミクロな視点を見たあとに、東京をマクロな視点で捉えたこの作品で、その考え方を体現されていたので響きました。

村松:はい、東京は人々の営みの蓄積だからまさにミクロとマクロの視点ですよね。

ミクロの集積地が作るマクロ東京っていうことだから、それらはセットというか。だから作品もそういう作りになっているのかな、と思いますね。

ギズ:あと、さっきも東京のエリア同士の関係性の話が出ましたけど、東京に住んでいると東京全体のつながり・一体感って意外とわからないんですよね。

村松さんは大阪出身ですが、大阪に居られるときの東京ってどのようなイメージでしたか?

村松:僕はもう東京のほうが長いので大阪にいるときの意識はあんまりなかったです。でも、海外に住んでいたこともあるので、世界の大都市から見て東京ってなんだろうと思うことが多いですかね。

ギズ:海外から見た東京にどういう印象をお持ちですか?

村松:まぁ、東京って変な街ですよね。多くの都市って、大都市でも土着性ってあるんですよね。関西もそうだと思うんですよ、大阪は大都市だけど土着性があって。世界的に見ると土着性があるのが普通なんですけど、東京だけそれがないんですよね。それがこのスケールであるのってちょっと変だよね、って思います。

あと海外から戻ってきたとき、レインボーブリッジに差しかかったときの景色が好きで。あれは英語のTOKYOなんですよね。海外の人が東京に来てこれを見たら、なんだこの街は、って感じるだろうなって。変な『ブレードランナー』感みたいなのが(笑)

ギズ:ずらーっと並んでいる高層ビルを一望できるあの景色ですよね。

村松:そうそう。あれを見ると、海外の人が東京を見てホットだなぁって思うのはわからなくもないですよね。

170809_naked_tokyo_art_city_p2.JPG
Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン編集部)

ギズ:東京の一体感ってまさに、そういう高層ビルを客観的に見たイメージなんですが、その感覚が東京に住んでいるのにわからないのがもったいないな、と思っていて。

村松:もっと大きな視野で物事を見ることと、自分自身の感覚を情報量に流されず持つこと、この両極端が重要かもしれないですね。(東京に住んでいる人は)どうしても生活圏みたいな自分にとって重要なところだけで生きてしまうので、自分の見える景色を見てると大きな視野では見えないというか。

ギズ:そういった意味では、この作品は大きな視野で見ることを直接的に表現しているわけですね。

村松:そうですね。まさに『東京俯瞰図』っていう作品ですからね。

テクノロジーは何を使うかとか、表現法はいくらでも変えられるんです。ただ考え方として、東京を俯瞰で捉えて、大きな視点で見てみるのが重要なんですよ。

たとえば、この作品は本当の人口分布や交通情報のデータと連動させています。人のアイコンを押せば人口分布が見られるし、車のアイコンを押せば交通情報が見られる。つまり、本当の東京がここに凝縮されていて、それを俯瞰で見られるんです。

本当の東京のデータが連動しているのは、東京を大きな視野でみるうえで結構重要な意味があると思っています。

渋谷の意味性だけで渋谷をつくる

渋谷 2
Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン編集部)
渋谷
Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン編集部)
『渋谷』エリア:渋谷のスクランブル交差点を再現し、TOKYO ART CITYのメインといえる空間になっている

村松:ここは渋谷のスクランブル交差点を表現しています。スクランブル交差点っていうのは、世界一人が通る交差点と言われています。世界一の交差点になるともはや交差せずに放射状になる。それが面白いと思って360度の交差点をテーマにしたんです。

スクランブル交差点 信号
Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン編集部)

上のライト(画像参照)は実は信号になっているんですよ、交差点の。これもデータを使っていて、本当の渋谷のスクランブルが青になると、こっちの信号も青になるんですよ。赤になるとこっちも赤になって。

ギズ:へぇ! 本物のデータを使っているんですね。

村松:で、青になると点、つまり人が歩き出すんです。で赤になると線、つまり車が走り出すんですよ。そういったことを映像で表現しています。

今回はやりきれなかったんですけど、企業さんとコラボレーションして、本当の渋谷の人の人流計測のデータもここに使いたかったんですよね。そうすると、ここの交差点の点も実際の渋谷を歩く人になるわけですよ。

データもそのひとつですが、東京(渋谷)の意味性みたいなものだけをギュッと集めて、再解釈したかったんです。「ここは渋谷じゃないけど、渋谷だよね」みたいな感覚を生み出すというか。

渋谷 ビル
Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン編集部)

村松:これも渋谷を表現しているんですけど、あのぐちゃぐちゃした感じはめくり上がらせたほうがわかりやすいなみたいな。渋谷のカオティックさをどう表現するかって考えたときに、対面させるほうが伝わると思って。

で、めくれあがっているから裏が地下鉄なんです。飛び出ているのは、実際の地下鉄の深さと縮尺を合わせてて…

…そういうことが、作品だけじゃ伝わらないのが問題だなぁって思ってます(笑)

ギズ:いやいや!(笑)

村松:この問題がいま難しくて、何を表現してるのか説明して作品を見せるケースが多いじゃないですか。僕はそれを避けたくなっちゃうんですよね。もっと直感的に感じてほしいし、自分で意味性を見出して欲しいんです。

人によっては作品から違うことを見出すかもしれないし、先に「こういうことを表現してます」って説明しちゃうと、思考を固定化させちゃうんですよね。ただ狙いは伝えたいし、どうしようかなって思っています。

ギズ:でも肌感として、これどういう意味なのかなって自分なりに考えてしまうので、それも含めて東京を考え直すきっかけとしてすごく良い機会だと思いました。

村松:結局、東京はひとりひとりの営みの集積でしかないので、作品から自分個人に繋げていただけるといいですね。そうすると、東京がどういう意味性を持っていて、ここで自分は何ができるの?とか、いろんなことを考えられるのかなと思います。

「ただのグレーな塊なんですよ。東京なんて」

170809_naked_tokyo_art_city_p6.JPG
Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン編集部)

ギズ:この展示を通して、東京がアート的な側面を持っていて、考え方次第ではより魅力的な街になる、ということを見にくる人に気づいて欲しいですか?

村松:アート的な側面に気づいて欲しいっていうよりも、それは意識の持ち方だと思うんですよ。どういう意識を顕在化させて東京にいるかによって、このイベントを見て気づくものって違ってきますよね。それは東京がアートであるということじゃなくても良くて、なにか気づきを持ってくれればいいかなって思いますね。それが未来の東京を作っていくことに関係していくので。

ギズ:そういう意味では、このイベントを見て東京の社会的な部分に意識をもつ人もいれば、東京の魅力をもう一度考えてみる人もいますしね。

村松:そうです。別に僕からこう思いなさいっていうことでもないし、それぞれの考えでいいわけですね。問いかけをしているだけなので、それぞれが何を思うかでいいんです。結局、重要なのは自分が東京を作っている自覚をもつことですよね。全員が。

たとえばファッションでも、自分が着ている服が東京の雰囲気みたいなのも作っているから、服装一個でそれは東京の一部なわけですよね。そういうのがそれぞれの人にあると思うんです。

あとこの前、ここでLDHのメンバー(PKCZ、SAMURIZE、RAMPAGE、FANTASTICS)がダンスバトルをしたんですけど、ステージで踊っている様子をみると、この空間がもっと渋谷になるんですよ。要はストリートダンス、ヒップホップは渋谷のカルチャーですから、ストリートダンスがここで行なわれることで、意味性としてここが渋谷になるんです。

ギズ:建物だけじゃなくて、ヒップホップなんかもここにカオスとして表現しているのは東京をすごくイメージしやすいですよね。

村松:もっというと建物のハードウェアそのものには意味がないんです。物質的なところじゃなくて、意味性が作品のすべてを作り出していますね。

グレーな箱
Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン編集部)

ギズ:新宿でも建物は無機質なブロックにして、あえてプロジェクションマッピングを使っているのは、そういう意味性を表現するためですか?

村松:そうです。人の営みがなければ、ただのグレーな塊なんですよ。東京なんて

なんで塊じゃないのか、なんで東京っぽさってあるのか。っていうと、人のライフ、営みがあるからなんですよね。

ギズ:ある意味、東京の土着性のなさがそこですよね。土着性がないからこそすべてが人に依るものというか。

村松:そこに人の営みを全部放り込むと、東京になる、全部消したらグレーになるっていうね。

ギズ:ポップカルチャーの他にも、東京を作り出している要素はあると思いますが、そういったものを加えてイベントをアップデートしていく予定もあるんですか?

村松:もちろんです。全部、途中なのでずーっと育ちますね。ただ次は場所探しが難航していて…。

僕、最初にビッグピクチャー(全体像)を描いてるんですよね。それをそのままやると3,000平米くらい必要なんですよ(笑)それは絶対無理で、作品が完成した状態で僕の思っていることを話すならまだしも、企画書だけじゃ誰もわからないだろうなと。企画書だけ見て、「よし3,000平米でやりましょう」って言う人はいないと思うので(笑)

だからプロトタイプの350平米から作り始めたんですよね。こういうことをやりたいってのを実際に見てもらうことで、(僕の考えていることに)気づいてくれる人もいるんでね。今はビッグピクチャーのうちの2割もやれていないって感じです。

2020年をすぎて東京はどうなる?

170809_naked_tokyo_art_city_p5.JPG
Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン編集部)

ギズ:では最後に。2020年に東京五輪がありますが、そういった大きなイベントを通して、東京という街はこれからどう変化していくと思いますか?

村松:最初に言ったように、2020年の五輪は東京というものを考えるいいタイミングだと思います。まずはちゃんと意識を持ってそれぞれが自分の視点で「東京ってなんなんだろな」と考えることが、東京をどうこうする前に必要かなと思います。

ギズ:個人個人のレベルでまず考えてもらうのが必要と。

村松:そうです。2020年の東京五輪は全員参加型みたいな話がありますけど、まさにそういうことで良いんじゃないかと思います。

つまり誰かが全体設計をして、大きくコントロールしていくよりも、それぞれの個人レベルでより自立的に機能する社会になっていくと思うんです。そう考えると、東京がどう変化するのかは僕には分かりようないかもしれないですね。

それぞれがそれぞれなりに東京と関わることで、“人の営みの集積が東京である”という事実がより浮き彫りになってくるのかな、とは思うんですけど。

170809_naked_tokyo_art_city_p8.JPG
Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン編集部)

TOKYO ART CITY by NAKED場所:東京ドームシティ・Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)

時間:10:00~20:00 ※最終入場は閉館30分前

会期:2017年9月3日(土)まで

詳しくは公式サイトより

『FLOWERS by NAKED』村松亮太郎さんインタビュー:“撮ってシェア”する時代、アートは“ネット文化のカオス”とどう付き合うべきか

Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン編集部)

Source: TOKYO ART CITY PROJECT

(山本勇磨)

あわせて読みたい

powered by