フラッグシップなのに、と。
Lenovoのフラッグシップ・ゲーミングラップトップ「Legion Y920」(以下Y920)が発売され、米GizmodoのSam Rutherford記者がしばらく使ってレビューしています。全体的にはフラッグシップらしい性能であるものの、いくつか残念な点もあるようで…以下、どうぞ。
今コンピュータメーカー各社が、巨大で高価なゲーミングラップトップを売ろうと躍起になっています。彼らは差別化すべくあの手この手を繰り出していて、たとえばAsusのROG ZephyrusはNVIDIAの「Max Q Design」を採用、前例がないほど薄くて軽い本体にトップクラスのスペックを詰め込んできました。一方AcerのPredator 21 Xは、ラップトップの定義(みんなのお財布も)を押し広げ、怪物級のボディにありとあらゆる要素全部載せにしています。それに対しLenovoのフラッグシップ、Y920は他社とはちょっと違うアプローチを取っています。これまで大胆なデザインで知られてきたLenovoにしてはおとなしめで、やや残念なくらいです。
でもY920は、必ずしも出来の悪いラップトップじゃありません。標準の17インチボディにはIntel Core i7 HKプロセッサにNVIDIAのグラフィックス・GeForce GTX 1070、16GBのRAMとふたつのストレージドライブ(HDDとSSDひとつずつ)を搭載しています。3ワットの専用サブウーファー付きのパワフルなJBLスピーカーに、NVIDIAのG-SYNCをサポートしたフルHDディスプレイといったスパイスも効いているし、キーボード裏にはRGBライティングも内蔵され、深夜のゲームマラソンでも寝落ちせずに済みそうです。Lenovoはさらに独自のロープロファイル(浅め)なメカニカルキーボードも搭載しており、Lenovoらしい野心を感じます。ただ問題は、その出来があんまり良いと思えないことです。
Y920のキーは普通のラップトップと比べてはっきり感じられるほど硬く、動きも滑らかじゃないので、全体的に重い印象を受けます。ただその分、キーを押し切った底の部分でははっきりしたクリック感があります。僕個人的にもっと気に入ったのは、キーボードのバックライトのセッティングによって、最後に押したキーのところから光が波紋みたいに広がっていくことです。すべてのキーの後ろに独立したRGBライトがあり、タッチパッド周りとキーボードの後ろにも光る部分があるので、設定次第でラップトップ全体がディスコボールみたいに輝きます。ただしこの手の飾りは他社のラップトップにもあるので、むしろLenovoが差別化に失敗している証拠のひとつみたいに感じられます。
上の装飾的な部分は別として、Y920のデザインは非常にベーシック、かつ重量は10.1ポンド(約4.6kg)とかなりヘビーです。筐体は、フタがブラッシュトメタルであることと、リストレストがレザー調であることを除けば、全体的にプラスチックです。特に抵抗あるデザインでもありませんが、印象に残るってものでもありません。LenovoのYogaシリーズには特徴的な両方向にたためるウォッチバンド・ヒンジがあり、ThinkPadにはアイコニックな赤いドットがあります。Legionにはそういったトレードマークがなく、見た目的に地味に感じてしまいます。この黒と赤のカラースキームも、他のゲーミングラップトップに使い古されているので、もっと違うものにした方がいいんじゃないかと思います。

ただスタイル的に足りない部分は、機能性の部分で補完されていて、それは豊富なポートのおかげです。Y 920にはUSB 3 Type-Aが4つ、Thunderbolt 3対応USB-Cがひとつ、HDMI、DisplayPort、LANポートなど、思いつく限りのインターフェースが搭載されています。さらにViveやOculus Riftをつなぐのに必要なすべてのポートが同じサイドに搭載されているので、ラップトップの周りでコードがクモの巣みたいになることもありません。とはいえ、ポートがすごい!って感動するのは難しいことです。

パフォーマンスもとても良いんですが、そこもワクワクするポイントじゃないなと思います。たしかに『Rise of the Tomb Raider』をプレイしてみると、Y920は1920 x 1080の解像度で、100fpsを優に超えてきました。また『PlayerUnknown's Battlegrounds』では、4K解像度で70fpsほどでした。ということは、どんなゲームでもつねに60fpsを超えているくらいの地力があると思われます。また本当にヘビーで60fpsを下回るときでも、Y920のディスプレイにはNVIDIAのテクノロジー「G-SYNC」が採用されているので、見た目はなるべく滑らかになるように考慮されています。
ただ一番残念だったのは、デザインでもキーボードでもなく、Y920に搭載されなかったものなんです。それはNVIDIAの最新グラフィックスカード、GeForce GTX 1080です。Y920はフラッグシップなのに、今あるベストなゲーミングGPUを載せるオプションすらないのは、残念を通り越して不思議なほどです。価格面でもY920は安くなく、Lenovo.comでは2699ドル(日本向けには定価33万480円)となっています。DellのAlienware 17の最高スペックのものは、GeForce GTX 1080搭載かつ他のスペックはY920とほぼ同等で、2499ドル(約28万円)となっています。(訳注:本記事公開後にクーポンで25%オフとなり、日本でのクーポン適用後価格は24万7860円となりました。)

価格は高め、デザインは退屈というだけでもY920の先行きが心配になっていましたが、今回のテスト期間中さらにMSIのGT75VR Proが発表されました。GT75VR Proは3300ドル(約37万円)からでさらにハイエンドではありますが、こちらもSteelSeriesと共同開発のロープロファイルなメカニカルキーボードを備えています。で、GT75VR ProのキーボードはY920のものとは違い、打ち心地は滑らかでクリック感もあり、メカニカルキーボード搭載のラップトップが出てきたと聞いてまさに僕が期待したものが体現されていました。
その興奮と比べると、Y920には惹かれるものがありません。ただたしかにポテンシャルはあります。Lenovoは世界最大のラップトップメーカーのひとつなんだから、Y920にはパッションと炎を吹き込んで、他のゲーミングラップトップを蹴散らしてほしいものです。冴えないデザインに、キレイだけどイマイチなキーボードは、ましてこの価格では、十分とは言えません。

まとめ
・G-SYNCのおかげで、fpsが下がったときも滑らかに見えます。
・必要なポートはすべてあり、Oculus RiftやViveをつなぐときにも十分です。
・重量は10.1ポンド(約4.6kg)もあるので、しょっちゅう持ち歩くのには向いてません。
・独自のロープロファイルなメカニカルキーボードの裏には、ひとつひとつすべてにRGBバックライトが埋め込まれてます。
・ステレオスピーカーと3ワットのサブウーファーで、たしかにパンチがあります。
スペック
・OS:Windows 10 Home
・CPU:Intel Core i7-7820HK
・RAM:16GB
・ストレージ:HDD 1TB+SSD 512GB
・グラフィックス:NVIDIA GTX 1070、8GBのGDDR5メモリ搭載
・ディスプレイ:17.3インチ 1920 x 1080 G-SYNCディスプレイ
・Wi-Fi:Killer Wireless 802.11 Wi-Fi
・デュアル2ワットJBLスピーカー+3ワットサブウーファー
・寸法:16.75 x 12.41 x 1.43インチ(17.2 x 31.5 x 3.6 cm)
・重量:10.12ポンド(約4.6kg)
・ポート:4 USB 3.0 Type A x 4、Thunderbolt 3対応USB Type Cポート x 1、DisplayPort x 1、イーサネットポート x 1、ヘッドフォンジャック x 1、マイクジャック x 1、SDカードリーダー
Image: Sam Rutherford/Gizmodo US
Source: Lenovo
Sam Rutherford - Gizmodo US[原文]
(福田ミホ)