Netflixに気になるところを聞いてみた。『ヴォルトロン』配信の裏側や、アニメの予算はどうなってるの!?

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    Netflixに気になるところを聞いてみた。『ヴォルトロン』配信の裏側や、アニメの予算はどうなってるの!?
    Image: Netflix

    Netflixで配信中の合体ロボット・アニメ『ヴォルトロン』、驚くほどに面白いですよね。

    本作は、日本のアニメ『百獣王ゴライオン』を輸入&編集してアメリカで独自に展開していった1984年のアニメ『ボルトロン』のリブート作。権利的な問題により日本での配信が難しいのではと思われていただけに、見れるようになったのは本当に嬉しい限り。

    しかし、喜ぶと同時になんで今になって配信できるようになったのか?ソフト版は出るのか?Netflixのアニメって予算が凄いって本当? などなど気になるところもたくさんありますよね。というわけで今回はNetflixのファンのみなさんがきっと気になっているに違いないところをNetflixのマーケティング担当、中島啓子さんに聞いてきました!

    Video: Netflix Japan/YouTube

    ──なぜNetflixは『ヴォルトロン』をオリジナルシリーズとして独占配信することを決めたのでしょう?

    Netflix 中島さん:日本から始まったIPでありながら海外でもはや日本以上に人気になっている作品がいくつかあり、『ヴォルトロン』もそのひとつでした。

    そしてNetflixはいまや190カ国で配信されており、アメリカでは約3分の2の世帯が導入しているという事情もあるので、いろいろな国で通用することはもちろん、ファミリー層にも響く作品を求めており、『ヴォルトロン』はまさに最適な作品だったのです。

    ──しかし、そんな『ヴォルトロン』は日本での配信がだいぶ遅れましたよね。何か事情があったのでしょうか?

    Netflix 中島さん:契約の中身に関わるのでそれに関して具体的な話はできないのですが、例えば我々の主力オリジナル・タイトルのひとつである『ハウス・オブ・カード』は日本でNetflixがサービス開始となった当時は、日本での配信の独占権を持っていませんでした。しかし、2016年に入ってシーズン4のタイミングから独占配信ができるようになったんです。

    『ヴォルトロン』も似たような状況で、今までは日本国内での配信が出来ないという契約になっていました。

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    Image: Netflix

    ──配信されて本当に良かったです。日本語吹き替え版も素晴らしいクオリティなのですが、これは日本での配信が決まってから準備されたものなのですか?

    Netflix 中島さん:すべての作品に日本語吹替がつけられるわけではないのですが、『ヴォルトロン』は大元が日本の作品ということで、日本のアニメファンは日本語で見たいだろうというところもあって、吹替版が制作されました。

    一方、日本産のアニメに関しては現地語の吹替版があまり作られていないのですが、それは海外のファンが原語で聞きたいという需要が高いというのもあります。Netflixはどの国からでもほぼすべての作品を字幕・吹替に切り替えて見られるので、今は海外のコアなアニメファンがあえて『ヴォルトロン』を日本語で楽しむこともできるようになっているんです。

    ──そういったローカライズはどういった手順で行なわれるのですか?

    Netflix 中島さん:今は(英語ではない作品は)まず英語に訳してそれを各国の言語に翻訳しています。本当は原語から直接翻訳をし、その過程で元の意味が失われるのをなるべく防ぎたいのですが、今年はオリジナルコンテンツが600作品も登場しています。それを同時配信しなければならないので、とにかく膨大な数をローカライズする必要があり、効率を考えた上で現状はこうなっています。

    ──ネット上などでの反応を見る限り、『ヴォルトロン』は海外では大人気で、日本でも徐々に話題になってきていると感じているのですが、だいたいどれくらいの人が見たのでしょうか?

    Netflix 中島さん:実はNetflixは会員数やサービス全体の1日あたりの視聴時間などは出していますが、個別の作品の視聴数やそのランキングといったデータは出さない方針なのです。

    Netflixは定額制であり、いつでもどこでも好きなだけ見てもらえるサービスなので、単純に視聴数の多い作品が我々にとって最も重要な作品であるとは捉えていません。

    我々としては1日により多くの時間を視聴して過ごしてもらいたいと考えています。なので、毎日見てもらうためには大きな予算で作られた重厚な作品だけでなく、低予算で作られたライトで楽しい作品も同じく大事なのです。

    というわけで細かなデータは出せないのですが、『ヴォルトロン』は海外ではかなり見てもらえているという実感があります。

    一方日本はサービスが始まって2年目であり、これから一般に伸びていくというところで、まだコンテンツを能動的に探してくれるファンのほうが多いと感じています。そんな中でも、『ヴォルトロン』は日本のユーザーのみなさんの盛り上がりを感じている作品です。

    VLT_PD201_01220005_RGB
    Image: Netflix

    ──出さないデータと言えば、配信コンテンツの一覧も出していないですよね?

    Netflix 中島さん:それぞれの作品ごとに配信終了日が設定されている関係もあり、更新が追いつかないので間違った情報を出さないためにもそういったデータは提供していません

    ──でも、内部としてはいろんなデータを見ているんですよね。

    Netflix 中島さん:視聴回数や時間だけでなくさまざまなデータを見ています。3分で見るのをやめたとか、何話までイッキ観したとかもチェックしています。

    例えば、会社員のユーザーの方が一日にあるシリーズ作品を3時間も見ていたら、可処分時間から逆算してもだいぶその作品を気に入ってくれたと認識できます。

    また先程ランキングは出さないといいましたが、社内向けのランキングは出しており、これは単純な視聴数ではなく、いろいろなデータを加味したものが用意されています。

    ──最近は残念ながら打ち切りになってしまうオリジナル作品なども出てきていますが、やはりその判断もそういったデータに基に行なうのですか?

    Netflix 中島さん単順に人気かどうかだけでは判断していません。繰り返しにはなりますが、興行成績ランキングで1位になるようなメジャーな作品をユーザーのみなさんが見たいわけではなく、エッジな作品が見たいと思っている方もいます。なのでそういった作品を欠かすことはできないんです。

    ただ、データに基いてどれくらいの人が見てくれているかは考慮に入れており、そこから逆算して予算を組むので、その中で作れるものならばOKで、そうでなければダメというようにはなっています。

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    Image: Netflix

    ──今Netflixでは、「マッチ度」という形でそれぞれのユーザーへ向けたオススメ作品のようなものが出てきますが、あれはどういったデータを基準に選ばれているものなのでしょうか?

    Netflix 中島さん:例えNetflixで視聴数の多い作品でも、そのユーザーはきっと見ないだろうなと言う作品はあまり表示されないようになっています。

    しかし、例えばAというジャンルの作品ばかり見ているユーザーに、たまにBというジャンルの作品をオススメすることもあります。我々はエンターテイメントは新しいものを知る喜びでもあると捉えており、そういった新しいジャンルに興味を持ってもらえればさらに視聴時間が伸びると考えているのです。

    また、オススメを出す上で作品に紐付けしているタグは単にジャンルや俳優、監督などだけではありません。作品のトーンや色味などもタグ付けしています。例えば私はダークファンタジーが好きなのですが、そうすると単純なファンタジーではなく、暗い作品がオススメとして出てくるようになります。

    タグは約8万通りあるので、たまに「なんでこれがオススメなの?」と疑問に思われることがあるかもしれませんが、ユーザーのみなさんの視聴状況などのビッグデータに基いてアルゴリズムが導き出したものとなっています。

    ──ちなみに、Netflixオリジナルの作品がいつか見れなくなるということはあるんですか?

    Netflix 中島さん:こちらも契約の詳細になるので細かいことはお伝え出来ません。作品ごとによるのですが、永久的な独占契約は結んでないものもあるので、期間はまちまちです。

    VLT_PD207_01122118_RGB
    Image: Netflix

    ──Netflixのオリジナル・アニメの展開は本当に楽しみな作品ばかりで、ネットでも大きな話題となりました。特に、Netflixのアニメは日本の一般的なアニメに比べて予算が大きいなんていう話もネットで出ていましたが、実際どれくらいの規模で作られているんですか?

    Netflix 中島さん:これもまた契約の内容になってしまうので具体的な数字は出せないのですが、高いと思います。理由としては、まずNetflixは映像を4KもしくはHDRで作ることを基準にしているからです。

    Netflixでは、今配信されている作品を5年後にNetflixに入った人が見ても、画質的なクオリティに遜色がないようにしたいと考えています。

    なので、単純に高画質な映像を作るということにお金がかかるはずなので、予算もその分高いものになっています。

    高画質での配信は、クリエイターの方々からも思い描いた通りの繊細な描写ができるということで、かなり喜んでもらえています。

    ──ちなみに、『ヴォルトロン』のソフト版は出る可能性はあるのでしょうか?

    Netflix 中島さん:基本的な考えとしては、SVOD形式の配信権を独占契約させていただいているので、ソフト版の展開に関しては関知していません。弊社では把握しておりませんが、『火花』やマーベルのヒーロードラマのシリーズは日本でもソフト化されている前例があるので、『ヴォルトロン』のソフト化も可能性は否定できません。

    ──『ヴォルトロン』のシーズン4、もう待ちきれないんですが、日本も遅れず配信となりそうですか?

    Netflix 中島さんシーズン4は10月13日(金)に日本含め全世界同時配信となります!




    肝心なところは見事に躱されてしまいましたが、Netflixの「オススメ」の仕組みなど、気になっていた疑問が解決しました。予算が大きいという今後のアニメの展開も楽しみな所。

    また『ヴォルトロン』のシーズン4は日本も遅れずに配信というのは嬉しい! ソフト版は海外でも今のところまだ出ていませんが、メイキングとかの舞台裏も気になるので期待したいですね。

    Image: Netflix
    Source: Netflix, YouTube

    傭兵ペンギン