大きなアイデアと大きなハート。加藤悦生監督作品『三尺魂/3ft Ball & Souls』

大きなアイデアと大きなハート。加藤悦生監督作品『三尺魂/3ft Ball & Souls』

日本発の映画が海外の映画祭で注目や賞を集めることがどんどんと増えてきました。米io9のGermain Lussier記者は、2005年から続くテキサス州オースティンのSF映画祭Fantastic Fest(シネマ・チェーン、Alamo Drafthouse主催)で観た加藤悦生監督の長編映画『三尺魂/3ft Ball & Souls』のレビューを書いています。


大きなアイデアと大きなハートを抱えた映画。

クレイジーなコンセプトを現実問題に適用することに関しては、SFというジャンルがもっとも優れています。小規模な日本映画である加藤悦生監督の『三尺魂』はそれをまさにやってのけた映画です。

見ず知らずの他人である4人がオンライン掲示板で出会い、一緒に自殺することを決めます。自分について語ったり、なぜ自殺しようと思ったのか、お互いに伝えることは許されていません。ただ決められた場所に現れて巨大な花火を爆発させて一緒に死ぬだけ。この花火がタイトルにも含まれている「三尺玉」です。

しかし、花火を点火すると、自殺の日の朝に4人は戻されてしまいます。何が4人の死を妨げているのか、そして理由は何か。4人の登場人物たちはそれを解き明かそうとします。

加藤監督はタイムループのコンセプトとこの奇妙な状況を通じて、ゆっくりとそれぞれのキャラクターの素性を見せていきます。映画はスリル、驚き、そして時には笑いも交えて進められていきます。4人は次第に打ち解け合い、なぜ自殺しようと思ったのかを語り始めます。

映画は最後になるまで、加藤監督の狙いがはっきりとは分からない様になっています。ただ単純にミステリーを楽しむために作り上げられた設定なのか? それとも監督が持つクレイジーな考えを体現するメソッドなのか? そういう意味では観客も理解しようと推測をすることになります。これは登場人物が謎に囲まれている状況と重なって、映画にとってプラスに働いているように思います。

いくつかの例外を除いて、「三尺魂」は基本的に一つの部屋で撮影され、特殊効果は使われていません。非常に小規模な映画となっていますが、その親密さのおかげで登場人物が物語の中心にしっかりと据えられています。そのため4人はどれもよくできた登場人物になっています。それぞれが、他人には理解し辛い非常に複雑な問題を抱えていますが、どれも各人の文脈では理解できるようになっています。

一方で、本作は物語のメッセージをどれくらい分かりやすくしてしまうか、という点において大きくつまずいてしまっているようでした。映画を最後まで見ると、「メッセージが絶対に伝わって欲しい」という監督の気持ちの方が明らかになってしまっています。もはやメッセージ自体を叫んでいるといっても良いレベルです。

本作は加藤監督にとってはまだ二作目ですが、最後までは非常に美しく見せてくれた物語が、「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」のようなエンディングにつぐエンディングのような終わり方になってしまったのは残念でした。

しかし、本作はその大部分において非常に魅力的なコンセプトと大きなポテンシャルを抱えた映画となっています。観てよかった、と思わせてくれる中身をちゃんと持っています。

これは「三尺魂」の日本国外プレミアとなっており、まだアメリカでの公開は決まっていないようです。

(米io9編集部追記:Alamo Drafthouseは、彼らが運営するウェブサイトBirth.Movies.Death.の元編集者Devin Faraciが性的暴行の罪に問われた後に彼を再び雇用したことで物議を呼んでいます。Faraci氏は辞任しましたが、さらに新しい問題も明るみになっています。io9では一連の事態に落胆していると共に、Drafthouseの対応に同意しません。しかし我々は上映された映画については引き続きレビューを書き続ける責任があると考えています。)


Germain Lussier - io9 [原文

(塚本 紺)

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