普通のコンデジではありません。
キヤノンから「PowerShot G1X Mark Ⅲ」が発表されました。発売は11月下旬の予定。2014年3月に発売されたPowerShot G1X Mark Ⅱの後継機です。価格はキヤノン オンラインショップで13万7700円(税込)です。
最大の特徴としては、キヤノン初のAPS-CサイズのCMOSセンサーを搭載したコンパクトデジタルカメラという点。しかも、キヤノンのハイエンドミラーレスカメラEOS M5と比較しても、遜色ない高い性能を持っています。そして、とにかく軽い。
今回触ってみて感じたのは、PowerShot G1X Mark Ⅲはまさに「コンデジ市場のゲームチェンジャー」です。これからコンデジを買おうと思っているすべての人に、「あと1ヶ月ちょっと待って! PowerShot G1X Mark Ⅲを触ってから決めて!」と言いたいくらいの好印象。
ということで、まずはPowerShot G1X Mark Ⅲの特長と前モデルの性能比較です。
G1 X Mark Ⅲの特長と前モデルG1 X Mark Ⅱとの違い
(左:PowerShot G1 X Mark Ⅲ │右:PowerShot G1 X Mark Ⅱ)
画素数:2,420万画素 │ 約1,280万画素(アスペクト比が3:2時)、約1,310万画素(アスペクト比が4:3時)
センサーサイズ:APS-C │1.5型
映像エンジン:DIGIC 7 │DIGIC 6
ISO感度:ISO100~25600 │ISO100~12800
焦点距離(35mm換算):24-72mm │24-120mm
連続撮影速度:最高約9コマ/秒 │最高約5.2コマ/秒
バリアングル・タッチパネル:あり │チルト・あり
動画撮影画質:フルHD 60p │フルHD
無線通信機能:Wi-Fi/NFC/BLE対応 │Wi-Fi/NFC
重量(本体のみ):375g │516g
進化というより転生という表現が似合うくらいのパワーアップ具合ですが、一番の進化はやはりAPS-Cサイズのセンサーを搭載しながらも軽くなったところでしょうか。数値を見てもそうですが、前モデルからマイナス141gと約27%ものサイズダウンに成功しています。手のひらに収まるサイズ感も好印象。グリップも程よく出っ張っており、片手でも持ち歩きやすいです。
年々重いカメラを持ち歩くのが辛くなってきたので、大型センサーを搭載しながらもコンパクトにまとまったカメラには相当魅力を感じちゃいます。コンデジなのでレンズ交換も必要ないですし。
唯一性能ダウンしている点としては、焦点距離と開放F値です。前モデルのG1X Mark Ⅱが24-120mm(35mm換算)、F2.0-F3.9だったのに対し、PowerShot G1X Mark Ⅲは24-72mm(35mm換算)F2.0-F5.6。この数値の違いは大きいですね。
ただズームだけいえば、キヤノンの最高峰レンズ、いわゆる大三元レンズも24-70mmを採用していますし、24-72mmという数値も妥協点としてはありかと。開放F値に関しては残念としか言えません。ズーム・F値をとるか軽量を撮るかですね。
ズームの動きは若干もっさりしているかな? まぁ最初にほんの少し気になる程度で使っているうちに慣れます。
あと変更点としては、EVFが内蔵なところ。コンデジといえどしっかりと構えて撮影したい人にとってはやっぱりファインダーは必須でしょう。ファインダーだいすき。デュアルピクセルCMOS AF搭載でAFスピードも素早いです。
操作周りは露出補正ダイヤル、電子ダイヤル、コントローラーホイールを備え、ファインダーを覗いたままでもガシガシ設定を変えられます。
背面液晶はバリアングル方式になりました。ハイアングル、ローアングルに大活躍です。いろいろな撮影環境に柔軟に力を発揮してくれます。あと自撮りも。まああまり撮らないですけど。
フラッシュも内蔵しています。
MENU画面もEOSシリーズのカメラと同じようになり、これまでのキヤノンの一眼ユーザーはまったく迷うことはなく使えます。即日実践投入できますよ。
PowerShot G1X Mark Ⅲのいいところ
APS-Cサイズ、ズーム、そして軽量。この3つが最初に思いつくところでしょうか。
特にAPS-Cサイズのセンサーを持つコンデジの選択肢ってかなり狭いんですよね。 リコーのGR Ⅱ、もしくは富士フイルムのX100Fくらいでしょうか(ライカ Xもありますが)。それぞれいいカメラですが、GR Ⅱ、X100Fともに広角よりの単焦点レンズです。
PowerShot G1X Mark Ⅲがそれらと違うのはズームです。APS-Cのコンデジでズームが付いているとなると他に選択肢はなく、まさに唯一無二のカメラです。
スマホカメラの性能が上がってきた今、あえてカメラを持ち歩く一つの理由としては、やはり望遠での撮影です。焦点距離が短くなったとはいえ、PowerShot G1X Mark Ⅲのズームはきっとありがたいと思えるシーンはでてくるはずです。
重量も軽く、サイズも小さいので毎日カバンに入れて持ち歩いてもいいかなと思えます。
また、内蔵EVF搭載、タッチ&ドラッグAF機能、AFのフレームサイズを小さくできるなど、細かい部分もかなり使いやすいようにできています。USB充電対応によりモバイルバッテリーでの充電も可。電池をいちいち取り外す必要はありません。
以前旅行先で電池を入れ忘れて文鎮化した一眼を丸一日持ち歩いた経験があるぼくにとっては、電池を取り外さなくていいというだけで超々魅力的です。
PowerShot G1X Mark Ⅲのわるいところ
残念なのが、開放F値がF2.8-F5.6と通しじゃないところです。ズームするとF値が変わり、設定を変更する必要がでてきます。それに加えて、上にも書いたとおりズームが若干もっさりしているので、「素早く起動して撮影」となると単焦点レンズを搭載しているコンデジの方に軍配が上がります。
PowerShot G1X Mark Ⅲは、コンデジの価値を極端に上げた
正直コンデジを買う機会なんて今後ないだろうと思ってたんです。最近主流のミラーレスカメラは、性能はいいし、軽いし、レンズ交換できるので汎用性も高い。 上位機種のレンズを使えば、小さいボディで驚くほどの描写が得られます。 ミラーレスカメラの進化が著しい中で、コンデジが候補にあがってすらいない人も多いでしょう。
でもPowerShot G1X Mark Ⅲの登場でそんな考えは吹き飛びました。 手に収まるサイズ感、レンズ一体型で軽量、キヤノンのハイエンドミラーレスに匹敵する性能、標準域をカバーするズーム。PowerShot G1X Mark Ⅲはコンデジのメリットを最大限に活かしています。
とにかくこれまでのコンデジという枠から完全に飛び抜けたカメラであるのは間違いないです。PowerShot G1X Mark Ⅲのための新しいカテゴリを作ってもいいぐらい。
未来のカメラはミラーレスカメラかと思いきや、その先にはコンデジがしっかりと待ち構えていました。
Photo: ささきたかし(ギズモード・ジャパン)
Source: キヤノン
(ささきたかし)