珍しい先天性の視力障害であるレーバー先天性黒内障。その遺伝子治療薬をアメリカ食品医薬品局(FDA)が承認する方向性で文章を提出したというニュースが話題になっています。短期的な効果に絞ると、視力障害がたしかに改善されるということが証明された結果です。もしこれが承認されれば、アメリカで初の先天性疾患に対する遺伝子治療となります。
Spark Therapeuticsによって開発された薬「Luxturna(ラクスターナ)」によって、21人のレーバー先天性黒内障患者を対象とした研究で、そのうち11人に大幅な視力の改善が見られたそうです。また小規模の改善も含めれば93%の患者で少なくともある程度の視力改善が確認されたとのこと。照明が十分でない部屋の中で障害物を避けるといった運動によって視力の改善が測られたそうです。
レーバー先天性黒内障は、RPE65遺伝子の変異が原因で引き起こされます。開発された治療薬はRP65遺伝子の正常なコピーを網膜細胞へと届け、欠如している酵素の生成能力を回復させることができるそうです。遺伝子のコピーを届けて細胞の働きを回復させるなんてもうSF映画のようですが、そんなことが実現できる時代になったわけですね。科学誌「The Lancet」で研究の詳細は確認できますが、長期的な観測データがないことは研究も認めています。患者が長期間に渡り複数の治療が必要かどうかも委員会は検討していくとのことです。
その一方で、「視力」には大幅な改善は見られなかったそうです。暗い環境での障害を避ける能力は改善されたものの、ボヤケていた文字がはっきり見えるようになった、というような改善の仕方ではなかったそうです。
「この治療法が承認されれば、アメリカ国内だけでも1000人から2000人は存在するというこの先天性障害の患者にとって朗報となる」とSpark Therapeuticsは述べています。値段はまだ発表されていませんが、他の遺伝子治療薬と同様、何百、何千万円となることが予想されています。
Image: Wikimedia Commons
Source: FDA, The Lancet
Kristen V. Brown - Gizmodo US[原文]
(塚本 紺)