あの「ぐるぐる360°動画」には元ネタがあった。Insta360、25歳の若き天才CEOにインタビュー
Photo: ギズモード・ジャパン

あの「ぐるぐる360°動画」には元ネタがあった。Insta360、25歳の若き天才CEOにインタビュー

マトリックスみたいにぐるぐるひゅー!

今年8月、人を中心にぐるっぐる回る映像が撮影できることで話題になった「Insta360 ONE」360°カメラ。その仕組みは“紐でカメラを回して撮影する”アナログな撮影方法ですが、マトリックスのように自分を中心にスローモーションでダイナミックな「バレットタイム撮影」を実現するには、実はかなりの技術が駆使されていたのでした。

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Image: Insta360
Insta360 ONEのバレットタイム撮影

今回、中国の深センからInsta360(Shenzhen Arashi Vision社)の25歳の若きCEO・Liu Jingkang氏(以下、JK)が来日。本人にインタビューしてきました。

バレットタイム撮影の開発の裏話や、現在開発中の360 AR機能について話してくれたり、Insta360 ONEの次期製品を1年以内に発表することを(ほぼ)約束してくれたりと、さまざまな情報を惜しげもなく話してくれましたよ。

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Photo: ギズモード・ジャパン
Insta360のCEO・Liu Jingkang氏。若くてイケメンです。

まずはCEOとバレットタイム撮影!

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Photo: ギズモード・ジャパン

まずはインタビューに入る前に、冒頭の画像のとおりJKさんと一緒にバレットタイム撮影にチャレンジ。さすがInsta360 ONEを開発した張本人、バレットタイムの回し方が上手でしたよ…。

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Photo: ギズモード・ジャパン

ぐるぐる回すための紐が、釣り糸のような透明のテグスにアップデートされていて、紐の映り込みが軽減されたほか、より安定した回転を実現したようです。

そして撮影したバレットタイム映像がこちら。

Video: ギズモード・ジャパン/YouTube

みんなで立って撮影しようとしたところ、思いのほかカメラが危なかったのでしゃがんで撮影。動画12秒ごろ、Insta360のマネージャーがJKさんを持ち上げて高くしようとしましたが、あえなく断念。でも楽しかったです。

バレットタイム撮影が生まれたきっかけ

それではJKさんに話を聞いていきます。まずは先ほど楽しんだ、Insta360 ONEの「バレットタイム撮影」について。

──Insta360 ONEのバレットタイム撮影は、ギズモードでも「ちょっと待てこれは何だ」と話題にし、その後種明かしとしてカメラの実機ハンズオンをしたところ、多くの人に読まれて話題になりました。

JK:ギズモードさんにはかなり早い段階で取り上げて頂きましたね!

──このバレットタイム撮影は他の360°カメラにはありませんし、非常にユニークな機能だと思います。この機能はどのような背景で生まれたのでしょうか?

JK:このアイデアは去年の年末、スイスのスキープレーヤー・Nicolas Vuignierさんの映像を見たことがきっかけでした。彼はiPhoneを紐で回して撮影した「バレットタイム映像」を公開していたんです。これがInsta360 ONEでも実装できないかなと思ったのが最初でした。

※その元ネタ映像がこちら。

Video: Nico Vuignier/YouTube

JK:Insta360 ONEは今年の4月にはほぼ開発が終了していたのですが、ONEの特徴的な機能である、6軸スタビライゼーションによる手ぶれ補正機能、映像に写り込んだ自撮り棒や紐を隠す機能、被写体が常に中心になるようにトラッキングする「SmartTrack」機能、この3つを用いればONEでもバレットタイム撮影ができるんじゃないかと考えました。3つの機能を合わせれば、Nicolasさんのように特別な器具も必要なければ、編集も必要なしで撮影できるじゃないかと。

さらにそこから3カ月の開発期間をかけ、カメラのフレームレートを120FPSまであげてバレットタイム撮影機能を実装しました。Optical Flow(映像のフレームを補完する機能)の技術を使えば240FPSまで上げることができるので、超スローモーション(1/8速度)でバレットタイム映像も撮影できるようになりました。

──バレットタイムを開発する上で苦労した部分はありますか?

バレットタイム撮影で、常に映像を平行に保つために必要なジャイロの開発に苦労しました。実際にカメラを紐で回すと紐がねじれるので、カメラ自体もねじれるように回転しちゃうですね。そのねじれ回転を平行に制御するのが難しかったです。

──だからONEに付属する紐も、柔らかな紐から、ねじれにくい固めのテグスに変えたんですか?

そうですね。ONEのジャイロは1秒で50回計算できる(50Hz)性能なんですけど、以前に付属していたオレンジ色の柔らかい紐だとねじれ回転が速すぎました。こっちのテグスにすると、回転が少ないのでうまく処理できるんです。

──バレットタイム撮影のようなワクワクする機能で、新しく開発しているものはありますか?

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Photo: ギズモード・ジャパン
これからInsta360 ONEに実装するという360 AR機能

JK:今は「360 AR」という新機能を開発中です。これはハードウェアはそのままInsta360 ONEを使うことができて、ファームウェアとアプリを更新すれば使えるようになります。

※開発中の映像を少し見せていただきましたが、360 ARは、360°の全方位で同時にARオブジェクトがトラッキングされるような機能でした。正式版では、360°映像全体にAR的なフィルターをかけ、さらにSNS映えするリッチな映像が撮影できるようになるかもしれません。

──つまりアップデートできるってことは、今Insta360 ONEを買っても360 ARの機能はリリースしたら使えるようになるんですよね?

JK:はい、使えます。ONEだけでなく、これまでのInsta360 NanoやAirでも使える予定です。私たちの製品はファームウェアを更新し続けるので、お客さんは長く製品を使って頂けるようになっています。

──この機能はいつリリースするのでしょうか?

JK:360 ARは頑張って今年中に出したいと思います

──他に開発しているテクノロジーはありますか?

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Photo: ギズモード・ジャパン

JK:他には6 Degree of Freedom(6軸フリー)のライトフィールドカメラを開発しています。このカメラはどういうものかというと、普通の360°カメラで撮った映像をVRで見ても、回り込んで物体を見ることはできませんよね。でもこのライトフィールドカメラだと、空間の奥行きのデータまで取得できるので、6DoFのヘッドトラッキングで空間内を歩くことができるんです。

このプロトタイプは60個のレンズですが、最終的には140個のレンズを搭載して、製品として発売する予定です。大きさは高さ1.5mくらいになります。

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Photo: ギズモード・ジャパン

JK:ほかにも「Super Resolution」という、写真をシャープに処理する機能も開発しています。これはシャッターを切るときに、CMOSイメージセンサーそのものを1ピクセル分、上下左右に高速に動かして、1回のシャッターで複数枚の写真撮影を行なうんです。複数枚の写真を計算して合成することで、普通よりも解像感の高い写真を撮影できます。

──ソフトウェアのほかに、新製品の予定はありますか?

JK:(今年9月に発売された)Insta360 ONEの進化形の製品を1年以内に出します。実は新機能のアイデアもありますが、今はまだ言えません。2カ月後に新しいアイデアがでるかもしれないですからね。


聞けば聞くほど開発中の機能を教えてくれるJKさん。本当はもっと詳しく話を聞きたかったところですが、タイムアップに…。中国の深センからやってきたスタートアップの若きCEOは、おそらく、天才。次々と自らアイデアを出して、すぐにテクノロジーとして実装しています。開発情報も隠さずに、話せるところはどんどん話してしまうという…。

Insta360 ONEは高スペックで魅力的でユニークな機能がたくさんあるのですが、正直まだまだ荒削りな部分もあります。でも荒削りな部分はアップデートをかけて後で洗練させていけば良い、それよりもスピード感もって開発して新機能をどんどん顧客に提供していくほうを優先している、そんな姿勢を感じました。こんな強力なハードウェアスタートアップ企業が中国からガンガン出てくるかと思うと、とっても楽しみな反面、日本のメーカーももっと頑張って欲しいと思うのでした。



Photo: ギズモード・ジャパン
Video: Nico Vuignier/YouTube

(mayumine)

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