彼の足元に注目。Appleのジョナサン・アイブは私たちと同じ人間だったんだ!
Image: Brian Ach/Getty Images Entertainment/ゲッティ イメージズ

彼の足元に注目。Appleのジョナサン・アイブは私たちと同じ人間だったんだ!

彼の秘密は足元にあり。

Apple(アップル)のチーフ・デザイン・オフィサーとして、製品のデザインを監督しているジョナサン・アイブ。普段はなかなか公の場に現れないことで知られていますが、先日ニューヨークはチェルシーのアート・ギャラリーにて開催された、雑誌「The New Yorker」の編集者デビッド・レムニック主催のカンファレンス「New York TechFest」に彼が登壇しました。本イベントは、さまざまな業界の著名人が登壇し、今後のテクノロジーについて語るというもので、米Gizmodoの記者もこちらに参加してきたようです。ジョナサン・アイブを目の前で見た記者の、貴重なレポートをどうぞ!




いつもより暖かかった10月の午後、会場ではジョナサン・アイブがステージに立つことが決まっていました。私も少し早めに会場に着いていて、振る舞われている高級な寿司に目もくれず、会場の最前列に近いシートをゲットすることができました。少しお腹の調子が悪かったのですが、おそらくそれは先ほど飲んだジンジャエールのせいではなく、少し緊張していたのかなと...。

今やジョナサン・アイブはテクノロジー業界だけでなく、今日のあらゆる業界において有名人ですよね。それに、彼は私の人生にとっても普段から欠かせない人物なんです。Appleイベントに参加するたびに、必ずスクリーンに映し出される彼の姿を目にすることになるからです。その美しいプロダクトのフォルムや洗練されたアルミニウム素材について語っている彼は、まるで誰もが信仰する指導者のようでもあります。

20分ほど座って待っていると、いよいよ彼がステージに現れました。私は、最後にジョナサン・アイブがこうした公のイベントのステージに上がる光景を見たのがいつだったのかすら正直覚えていません。今まさにその貴重な瞬間を目の当たりにしようとしているわけです! ちなみに、ジョナサン・アイブが本当にステージの黒いカーテンの後ろから登場する姿を見て、内心不思議とホッとしました。

そして、早足で自分の席に向かうや否やなんと彼は途中少しよろけた様子を見せたんです。おそらく、その瞬間を目撃したのは私だけだったかと思いますし、そのよろけた理由を知っているのも私だけだったことでしょう。実は、ジョナサン・アイブは新品の靴を履いていたんです。

彼の履いていた靴はブランド「Clarks 」のWallbeeというモデルですが、同じ靴を私も持ってたので、これに関してはよく分かっています。このモカシンスタイルの靴には、ゴム質のべとつくソールがついていて、最初のその履き心地が、まるで半分乾いて固まった接着剤の上を歩いているような感覚なんです。彼の靴の底にはほとんど目立った汚れもついていなかったですし、底のすり減りも見られなかったので、私にはまだ彼がその靴を履き始めたばかりだということがすぐに分かりましたよ。靴はまだパリッとした新品のように見え、それこそステージに上がる前に箱から取り出したばかりのようにすら見えました。

彼は青色の靴下も履いていましたが、「暗めの青」や「明るめの青」というよりも、ただ純粋に「青色」としか呼べないような色です。一方で、着ているTシャツは明らかに明るい青色で、パンツは白色。それは、ちょうど彼が腕に着けているセラミックス製の新型Apple Watchと同じ色でした。ただ、私が座っている位置のせいもあり、彼の靴下がとにかく目に入るんです...。そこで、なぜ靴下がぐしゃっと下げられているのか気になって気になって仕方がありませんでした。まるで自分が「カジュアル」であるということを表そうとしているかのようでもあったのを覚えています。

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Image: Brian Ach/Getty Images Entertainment/ゲッティ イメージズ via Gizmodo US

実際にこうやってジョナサン・アイブが話しているのを目にして特に面白かった点が、彼の話し方が、いつもiPhoneを説明している動画とほぼ同じだったということでしょう。そう、白い背景で、真剣な表情でiPhoneについて説明するあの紹介動画です。レムニックから投げられた最初の質問は、デザインや製造工程などについての比較的簡単なものでした。ジョナサン・アイブの回答は、まるでリハーサルをしてきたかのような完璧な回答で、そう、ちょうどAppleストアのサイトで書かれている、魅力に溢れた聞こえの良いフレーズを聞いているようでした。彼のイギリス訛りのアクセントと、存在感のある大きな体も影響していたと思います。ジョナサン・アイブは皆さんが思っているほど小柄ではありませんよ。むしろ、ラグビー選手のようにガッチリしていて、思い悩んでいる大学教授のような厳格な面持ちでした。

しかし、故スティーブ・ジョブズについて話すときの彼はすごく柔らかい表情になっていたのが印象的です。レムニックはスティーブ・ジョブズとジョナサン・アイブをビートルズのメンバー、ポール・マッカートニーとジョン・レノンに例えていました。まぁ、ジョナサン・アイブは少し困惑しているようでもありましたけどね。彼は自分でありふれた表現を使ったことを恥ずかしそうにしていましたが、スティーブ・ジョブズと彼が「カチッ」とはまったような関係であったことを話していました。ジョナサン・アイブによると、2人はプロダクトのデザインに関しては、もはや言葉にしなくても根底で通じ合っているほどに理解し合っていたようです。でも、じゃあ今は誰とそのような関係にあるのだろうと逆に気になってしまいました。

会話が進むと、レムニックも「Apple社内で働くことについて」や「人類への貢献についてどう捉えているか」というような、少し冗談を踏まえた際どい質問も投げるようにもなりました。印象深かったのが、「もしあるとすれば、iPhoneはどんな誤った使われ方をするか?」と聞かれると、彼は「コンタスタント・ユーズ(毎日使ってしまうこと)?」と、ジョークで返し、笑いを誘っていたことです。同時に、「Apple Watchがその問題を解決してくれるはず」と提案して、再び笑いをとっていましたね。

ただ、おそらく会場の全ての人が抱いていたであろう「未来のApple製品に関するヒントは出てこないかな?」という淡い幻想は見事に打ち砕かれることとなりましたね。彼は、ディスプレイは面白いということと、いかに小さなチップで限られたスペースに多くの機能を詰め込めるかについて思いを巡らせるだけでした。また、レムニックに聞かれた後、最近の人工知能がきちんと動いていることにも触れていましたね。それほど驚くことではないかもしれませんが、失敗は好きではないものの、革命的な何かを生み出すときには失敗は避けられないものだと捉えていることも明かしていましたよ。

これにより、私はちょっとまた彼の履いている靴について考えさせられてしまいました。ジョナサン・アイブはこのイベントのためだけにこの靴を買ったんでしょうか? あまりこういった公の場に姿を現さない彼ですし、細かなデザインにこだわる彼ですから、意外とありえそうな話ですよね。スティーブ・ジョブズがいつもNew Balance 991を履いていたように、ジョナサン・アイブもいつもWallabeeを履いているんでしょうか? もしそうだとすれば、なぜ彼が靴を新調したのかは理解できそうです。この靴は強い雨に1、2回当たると、表面がゴワっとなるんですよ。ただ、あのぐしゃっと下げられた靴下はなんだったのでしょうか...? まぁこれもおそらく、ファッションだったのかもしれません。ちょっと、シンプルさを追求するゴッドファーザーのような彼からは想像し難いのではありますが。

彼の下半身にばかり注目しているのもおかしな話ですね...。ただ、考えてみるとあのWallabeeとステージでかいていた少しの汗が、ジョナサン・アイブがどんな人物なのかを一番よく物語っていたと思うんですよ。彼は正真正銘の「人間」ですし、私たちと同じです(私を含めた...)。ファッションのセンスの良い人たちと同じように、彼自身にも足元のセンスがあるということ。そして、限られた一部の人と同じように、彼はデザインの感性も素晴らしいというだけのことです。いや、「とにかく素晴らしい」というほうが正しいですね。

その後、インタビューが終わり、ジョナサン・アイブがステージを去るときも、彼はしっかりとした振る舞いでその場を去っていきました。階段で立ち止まり、足元を見つめ、ゆっくりと階段を降りていました。会場を出た私も、10月のおかしな暑い風を肌に感じながら、メッセージを送るために手元のiPhoneを覗き込んでいました。Appleストアの袋を持ったひとりの女性が私の前を通り過ぎ、Apple Watchをタップしながら信号を待つ男性が交差点で立っています。

彼らをぼんやりと見つめながら、私は先ほどのジョナサン・アイブのインタビューに想いを馳せていたんです。そして、デビッド・レムニックがインタビューの中で、多くの質問を投げかけながら、なんとかしてジョナサン・アイブから謙虚な回答を引き出そうとしていたことに気がつきました。もちろん、ジョナサン・アイブはそれらの質問には決して流されませんでした。

彼の話は、終始Appleが完璧なるデザインを追求していることや、機能性だけではなく、見た目も素晴らしい最高のプロダクトを作り上げることを目指しているという話に戻っていました。そして、改めて私たちの周りを見渡すと、ジョナサン・アイブ(そして、彼と一緒だったスティーブ・ジョブズとクパチーノの天才たち)が、今履いている靴と同じくらい身近になったプロダクトを作り出したことに改めて気づかされました。そう考えると、もはや彼がそこまでして謙虚であろうとせず、常にApple製品の素晴らしさを語っているのも不思議ではありません。もちろん、彼も同じ人間なんですけどね。



Image: Brian Ach/Getty Images Entertainment/ゲッティ イメージズ

Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文
(Doga)