Appleもだまされた。嘘の回復劇と健康アプリで荒稼ぎした開発者に巨額の罰金刑

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  • author 岡本玄介
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Appleもだまされた。嘘の回復劇と健康アプリで荒稼ぎした開発者に巨額の罰金刑
Image: GIizmodo

きれいな女性ですが、嘘つきでお縄頂戴です。

2013年、脳にガンが見つかったベル・ギブソンさん。その後ガンが治ったことをきっかけに、彼女は健康食をテーマにしたスマートフォン用アプリをリリースしました。アプリの収入から少しずつ寄付もしていく、慈善家のようだったギブソンさんでしたが……。

実は彼女のガンがウソだったことが発覚し、裁判所から多額の罰金を支払うよう命じられたのです。

25歳でオーストラリア人の彼女は、ガンがウソだっただけでなく自然療法で完治したと触れ込み、料理本アプリ『ザ・ホール・パントリー』から収入を寄付していたというのもウソだったそうです。

今ではアカウントを閉じているものの、当時の彼女のFacebookとInstagramには多くのフォロワーがおり、ガンがどのように治っていったのかを綴っていました。それはグルテンや乳製品、コーヒーなどの食品を断つのが良いといった投稿だったそうです。

ですが彼女は2015年に、「すべてが真実ではなかった」と告白したのでした。

このウソにより、彼女が稼いだ額は32万2000ドル(約3826万円)という驚くべき数字になりました。4月にこのウソが有罪と判決され、アメリカ時間の9月28日に罰金の額が決定。それは32万ドル(約3600万円)と、上記の収入にとても近い金額が言い渡されました。ちなみに彼女はかなり多くの額を寄付していたと話していたようですが、実際に寄付していたのはずっと少ない1万ドル(約112万円)と、ここでもまたウソをついていたことが発覚してしまったのでした。

オーストラリアのシドニー・モーニング・ヘラルド紙いわく、2013~2014年当時の各誌は、彼女の回復を奇跡だと取り上げ、彼女を「ガンを患っているのに愉快で恐れ知らず、健康と善行のためにすべてを捧げている」と褒め称えました。アプリもAppleから「ベストiPhoneアプリ」を受賞するなど持てはやし、Apple Watchリリース前には開発のヘルプにとアメリカまで出向するなど大活躍だったのでした。

写真はアプリのスプラッシュ画面と、発売前の試作品Apple Watchを操作しているスナップショットです。

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Image: GIizmodo

『ザ・ホール・パントリー』のスクリーン・ショットはApple Watchのプロモーションにも使われたほど。ですが2015年3月にウソがバレてから、ストアからひっそりと消えていったのだそうです。

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Image: GIizmodo

ABCニュースによりますと、彼女の罰金の内訳はいくつかの項目があるとのこと。その内のひとつは、脳腫瘍を患ったジョシュア少年に15万ドル(約1690万円)を寄付すると約束したのに、それを払わなかったことも入っています。彼とは自分と似た症状だったと嘆いていたのです。

内訳は以下の通りです。

・9万ドル(約1千万円):アプリの収入から寄付すると喧伝したのにしなかった罪

・5万ドル(約560万円):アプリ立ち上げ時に寄付しなかった罪:2014年母の日のイベントの収益を寄付しなかった罪

・3万ドル(約338万円)

・9万ドル(約1千万円):ほかの会社の収益から寄付しなかった罪

・15万ドル(約1700万円):1週間の収益100%をジョシュア・シュワルツ少年一家に寄付しなかった罪

ですが裁判所は、全合計額はとてもギブソンさんに支払う能力がないだろうと判断したため、冒頭の32万2000ドル(約3826万円)を支払うよう命令を出したのでした。ちなみに彼女はこの裁判には出廷せず。つまり説明も謝罪も、一切するつもりがないという現れなのです。

当時はさぞや人気の高いアプリだったでしょうが、罪状の全部がユーザーを騙したことよりも寄付をしなかったことを咎められているのですね。もしかすると、いくらウソで稼いだお金でも、寄付をするだなんて大見得を切らなければ莫大な罰金を背負わなくて済んだのかもしれません。

この辺にお国柄が出ている気がします。


Image: Gizmodo
Source: ABC News Australia
Matt Novak - Gizmodo US[原文

岡本玄介