なぜ、タスマニアタイガーは地球上から消えてしまったのか。
絶滅していく種がどんどん増えている現代。大昔には隕石の衝突で大きな絶滅があったり、新しい種が繁栄することで古い種が絶えていったり、または食べられていなくなってしまったりと、絶滅にもいろんな原因があります。しかし近年では、狩りをはじめとする人間の活動が絶滅の大きな要因のひとつとなってきています。タスマニアタイガー(フクロオオカミ)も人間の捕獲を理由のひとつとして20世紀初頭に絶滅してしまった動物。どうして絶滅してしまったんでしょうか。
ヨーロッパからオーストラリアへ移民がやってきて、たった150年でタスマニアタイガーは滅びてしまいました。人間の捕獲以前から、すでにタスマニアタイガーの数はだんだん減りつつあったともいわれていますが、オーストラリアのチームが詳しい調査をしたところ、実はタスマニアタイガーの減少に天候変動が大きく関わっていたのではないかという可能性があるとわかったそうなのです。
「オーストラリアでの過去の気候変動が本土の在来動物に与える影響と、人間や外来種からの影響を理解することは、将来的な絶滅の危機への理解や環境保全への取り組みにとって大変重要なことです。」とJournal of Biogeographyの筆者は述べています。気候変動が与える影響と人間による影響とは別モノで、それぞれわけて対処していくことが重要ということなんです。
今回の調査では、オーストラリア本土とタスマニアに存在した81頭のタスマニアタイガーの組織サンプルを博物館から採取し、分析。できるだけ汚染されない環境で組織のDNA配列を解析し、タスマニアタイガーの数がどのように減っていたかを調査しました。
調査から算出されたデータによって、タスマニアタイガーの歴史がみえてきました。タスマニアタイガーの身体特徴は西と東のグループにわかれ、オーストラリアの西にいたタスマニアタイガーの体格は大きめだったようです。こういった特徴のバリエーションは遺伝的多様性と呼ばれていますが、この遺伝的多様性を保ったまま数が減ってしまったということは、タスマニアタイガーがとても早いスピードで絶滅してしまったことを意味しているのです。
これまでは、タスマニアタイガーの絶滅要因のひとつに野生のディンゴの存在が大きく関わっていると考えられてきました。しかしディンゴはタスマニア島には生息しておらず、実はタスマニアタイガーの絶滅にはあまり関係なかったのではないかとも報告されています。タスマニア島にはディンゴがいないことと、この遺伝学的データを総合すると、タスマニアタイガーはどうやらほかの理由で減少していってしまったと考えられます。研究者チームによればエルニーニョなどの不安定な気候がタスマニアタイガーの数を減らした原因だと考えられるとのこと。
しかし、今回の研究に参加していないオーストラリア国立大学の生物学者Colin Grovesさんはディンゴがタスマニアタイガーを絶滅に追いやったという仮説を完全に排除するにはまだ早いとしています。
種の絶滅をひとつの要因に絞るのは、きっと難しいことです。悲しいことですが、いろいろバッドな要因が重なってタスマニアタイガーはこの世から消え去ってしまったのかもしれません。もし天候が理由だとしたら、今地球にいる動物もエルニーニョなどの影響で絶滅に追いやられてしまうのでしょうか。困りましたね…。
Image by Baker; E.J. Keller/Smithsonian
Source: Journal of Biogeography
Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文]
(岩田リョウコ)