SFの名作中の名作『ブレードランナー』のその後の世界を描いた、10月27日公開の最新作『ブレードランナー2049』。前作の雰囲気を持ちながら時代の流れも感じさせる近未来のビジュアルが大胆かつ迫力のあるショットで強調され、徐々に謎が明らかになっていくストーリー展開と共に観客の心を掴む本作。163分というかなり長い上映時間でも飽きさせない凄まじい作品でした。
そんな『ブレードランナー2049』、実は編集の初期段階では約4時間を超えており監督は前後編化も検討していたのだとか。
こっからだいぶネタバレな話をしますので、まだ観ていないという方はご注意ください!
その幻の「前後編」で気になるのは、あのストーリーを一体どこで切るつもりだったのかというところ。それに関して、編集を担当したジョー・ウォーカーがProvideo Coalitionでのインタビューでこのように語っています。
ウォーカー:Kが自分の過去を知り、童貞を喪失するのが前半ですね(笑)。翌朝から究極の自己犠牲を果たすという別の物語が始まります。「大義のために死ぬということこそが、最も人間らしいこと」というやつですね。
前後編はどちらも目を開けるところでスタートします。前編は巨大な目が開くところで始まり、後編はマリエットが目を覚まし、Kの部屋の中をこっそり歩き回るところから始まるというものでした。
大きな転換点であり、見せ場となる凄まじくエモーショナルでSFなシーンで区切られたら、後半が気になって気になってしょうがなかったでしょうね!
とにかくその前後編のアイデアは取り止められ、1時間近い映像がカットされ、今の形になったのだとか。だいぶカットされてしまっているように感じるかもしれませんが、記事によればカットされたものは、シーン間をつなぐ映像やセリフだったりで、大筋が変わるものではない模様。
しかし、『ブレードランナー』といえばリドリー・スコット監督が劇場公開版を嫌い、『ディレクターズ・カット』や『ファイナル・カット』が後に発表・販売されたタイトルとして有名。もしかして、『2049』にも『ファイナル・カット』が存在するんじゃないかと勘ぐってしまいますよね。それに対して、ウォーカーはこんな風に語っています。
ウォーカー:ドゥニ(・ヴィルヌーブ監督)は、削除したシーンをブルーレイに収録したくないようで、それは私もおおむね賛成しますね。一部のファンが興味を持ってくれるのはありがたいことですが、シーンをカットしたのには理由があり、我々は唯一無二の決定版『ブレードランナー2049』を目指したのです。
実際のところ、ストーリーが断片的に展開していく作品なので、シーン全体をカットしたところはそこまで多くありません。大きくカットすれば、構造が崩壊してしまうのです。全体の長さを短くしなければならないのですが、速さを求めてカットをすると観客を置き去りにして物語が進行してしまうのが、難しいところでした。
こう説明されると、人によっては長いと感じたであろう劇場公開版の163分がいかに絶妙だったかがわかってきますね。いや、でもカットされたパートもやっぱり観たい。観たくなってしまうのがファン心理だ……!
ちなみに、Provideo Coalitionのインタビューではより詳しく編集の意図について語られています。長めの英語インタビューですが、映画に魅了された人ならグッと来るに違いない話が詰まった読み応えのある内容となっています。
またしても、観たくなってしまった『ブレードランナー2049』。劇場であと何回観れるでしょうか。こりゃあ2回じゃ十分じゃないですよ。
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Source: Provideo Coalition via io9
(傭兵ペンギン)