ターゲティングか差別か。
USA Todayによれば11月29日、Facebookは広告主が特定の人種や民族を広告表示対象ユーザーから除外できないようにすると発表しました。ただし一時的措置とされていて、長期的にどうなるのかはまだわかっていません。
Facebookにおける人種ベースのターゲティング機能の存在は、非営利報道機関Pro Publicaによる2016年の調査で発覚していました。そのときFacebookは、住宅やクレジット、人材採用などの広告ではこの機能を停止すると言っていたんです。でも先週発表のPro Publicaの報告書によれば、住宅の広告では今でも黒人やユダヤ人、体の不自由な人などに向けて表示しないよう設定可能になっていました。
先週Facebookが発表した声明によれば、彼らは2016年のPro Publicaの報告書を受けて「安全措置」を設けてはいたのですが、「技術的なミス」で差別的な機能が残ってしまっていたとのこと。声明では以下のように説明しています。
これは我々の業務遂行の失敗で、私たちが約束を果たせなかったことは遺憾です。今年、私たちは多文化親和性ツールを悪用して住宅やクレジット、人材採用における差別を容易にする行為からの安全措置を追加しました。Pro Publicaが購入した賃貸住宅の広告は、追加の審査と承認を受けるはずでしたが、技術的なミスによってそれができていませんでした。
2016年のPro Publicaの報告書によれば、Facebookはユーザーに明示的に人種を聞いていないにもかかわらず、行動をベースに各ユーザーに「民族親和性」(ethnic affinity)を割り振っていました。つまり我々は、自分たちが知らないうちに「アジア人っぽい」とか「多分黒人」とか判定されてて、そのデータが広告にも使われてるんですね。それでFacebookの広告主用ツールを使うと、たとえば「アフリカ系アメリカ人」とか「ラテン系」とかを対象から外すことができていました。しかも対象外にする集団の選択肢に「白人」ってカテゴリはなかったそうです。また人種の判定は自動で行なわれているらしく、白人の何人かは「アフリカ系アメリカ人」とラベル付けされたことがあると言っています。ユーザー本人がこの「親和性」の設定を変えることはできません。
Facebookはすべての広告に関して、そのようなターゲティングからの除外をやめつつあると言っていますが、この措置は一時的のようです。29日、連邦議会黒人幹部会(CBC)委員長宛の12ページにわたる文書の中で、Facebookのシェリル・サンドバーグ氏は「我々のツールが不適切に使われないことをより確実にできるまで」問題の機能を無効にすると発表しました。CBCの議員たちは、2016年には、Facebookが米国の公民権法と公正住宅法を侵害していると主張し、法的措置を検討していました。公正住宅法では、大家が家を貸す相手を人種で選んではいけないことがはっきり決まっています。日本だと「外国人お断り」みたいなことが今でもあるようですが、アメリカではそれが法律で禁止されていて、だからそれを助長するような広告の制限も非常にグレー、ということみたいです。
ただCBCへの文書でも、去年この機能が発覚したときの説明でも、Facebookはターゲティング広告は便利だと強調してきました。たとえばラテン系の人の意見を集めた政策提言グループが資金集めをするなら、そのための広告をラテン系の人に集中させたいと考えるかもしれません。その思いと、自分が家を貸す相手は全部白人にしたいと思うアパートオーナーの思いは、どこがどう違うのか何とも言えません。ともあれ、問題解決はFacebook次第になっています。
今回の炎上の数週間前には、2016年の大統領選挙中のロシアによる情報操作にFacebookが加担してしまったことをシェリル・サンドバーグCOOがCBCに謝罪していました。ロシアのエージェントはFacebookの広告枠を購入し、銃を持った黒人女性の扇動的な画像にBlack Lives Matter(訳注:「黒人の命も大事だ」、黒人人権運動)のスローガンを貼り付けた広告を流して、保守寄りのユーザーの恐怖心を煽ろうとしていたようです。そのときサンドバーグ氏は個人的にCBCのメンバーに謝罪し、将来的にはFacebookの取締役会に黒人を入れると宣言していました。
さらにその4週間前には、別のPro Publicaの調査で「嫌ユダヤ人」を自称するユーザーへのターゲティングを一時的に許可していたことが発覚していました。今回の対応も最初から「一時的」って言っちゃってるし、自ら根本的に解決しようとしない限り、Facebook=人種差別的っていう炎上の火種はくすぶり続けそうですね…。
Image: Pe3k / Shutterstock.com
Source: USA Today(1, 2), Pro Publica, SPLINTER
Sidney Fussell - Gizmodo US[原文]
(福田ミホ)