蚊をもって蚊を制す。細菌に感染した蚊を野に放ち一掃駆除へ、アメリカ環境保護局が承認
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蚊をもって蚊を制す。細菌に感染した蚊を野に放ち一掃駆除へ、アメリカ環境保護局が承認


最も危険な虫、蚊...!

蚊、大好き!という人はまずいませんよね。蚊にかまれた時の痒さ、夜寝ている時の耳元のプゥーンという音。嫌われている理由はたくさんありますが、マラリアなどの伝染病の媒介にもなっており間接的に毎年多くの命を奪っている害虫でもあります。

そんな蚊に対抗するためにアメリカの環境保護局が先日承認したとあるスーパー兵器が話題となっております。それはなんとボルバキアという細菌に感染させて生殖能力を失わせた蚊を野に放つというもの。計画では20州とワシントンDCで放たれるとのことです。これによってデング熱、黄熱病、ジカ熱といった伝染病のウイルスを媒介する蚊を駆除しようとしているわけですね。

生殖能力を失った個体を野に放って害虫を駆除するという方法は実は長い歴史があります。放射線を使って害虫の遺伝子に変異を起こし、生殖能力を失わせて、それを野生の害虫たちと生殖させることで、らせん虫のような害虫が駆除されてきました。アメリカではこの方法によって1982年までにはらせん虫の全駆除に成功しています。しかし蚊の場合、放射線を浴びてそれでも生殖行為をしようとする...ほどには強くないようです。そこで登場したのが今回のボルバキア手法なわけですね。

ケンタッキー州にある研究室でこの蚊は育成されます。ボルバキアに感染させられた蚊のうち、人をかまないオスの蚊だけを選び、駆除地域に放つことで野生の蚊と生殖活動をさせるとのこと。その結果生まれた卵は父系染色体が正常に発達しないため、孵化しないそうです。なるほど...孵化しない卵を生むことに多くの蚊が従事することで蚊の数がどんどんと減るわけですね。この方法であれば人体や環境に悪影響のある殺虫剤などを使う必要もありません。減少数もかなり効果的な成果をあげるはず、とのことです。

蚊からしたら悪夢ですが...科学ってすごいですね。このニュースは先日科学誌「Nature」で報じられ、米GizmodoがMosquitoMate、そして環境保護局に確認をとっています。MosquiteMateによるヒトスジシマカを新しい生体殺虫デバイスとして公式に登録したことを環境保護局は11月3日に認めました。5年間のライセンス契約で20州で販売されるとのこと。

「来年夏にはレキシントン地域での使用を開始する」とMosquitoMateのCEOであるStephen Dobsonは米Gizmodoに語っています。その後ナッシュビルやルイスビルといった近くの都市部へと拡大していくとのこと。

地方政府に販売していくと共に夏期限定のサブスクリプション制で一般家庭にも直接提供を考えているようです。自宅の庭の蚊をこれで一掃...なんてできたら最高ですね。

研究室で育てられた蚊を使って害虫を駆除しようという試みはMosquitoMate以外の施設や企業も行なってきています。しかし他企業のアプローチと比べると彼らのメソッドは比較的環境に対する悪影響が少ないと捉えられているようです。

英国のバイオテック企業Oxitecは遺伝子操作によって生殖機能を失わせた蚊を使ったアプローチに取り組んできており、同様に米国における承認を得るべく長年働きかけていますがまだ野生の蚊に対するテストは許可がおりていません。フロリダ州キーズではOxitecが開発した蚊の利用に対する反対の声が地元住民からあがり住民投票が行われた結果、テストを行なう別の地域を探さないといけなくなりました。

その一方でMosquitoMateが行なったキーズとフレスノにおけるテストはそれほど注目を集めていません。遺伝子操作ではなく自然界で起きる現象を利用しているからでしょうか、興味深い対比です。Dobson氏が米Gizmodoに伝えたところによると、「ヒトスジシマカを全国規模で活用する展望を持っている」とのこと。

また「蚊の中でも危険度が最も危険度が高いとされるものの一つ、ネッタイシマカを使ったテストもしたい」とのことです。どれほどの成果が見られるのか、来年の夏のニュースに注目したいと思います。



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Source: Nature
Kristen V. Brown - Gizmodo US[原文

(塚本 紺)

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