眠るも起きるも自在? 睡眠を司る「オレキシン」の秘めたる実力

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眠るも起きるも自在? 睡眠を司る「オレキシン」の秘めたる実力

睡眠の大事さ、よく分かります。

体はもちろん精神にも大きな影響を及ぼすとされる、睡眠。寝不足だったり、不眠症だったり、お悩みの方も多いかもしれません。IBMのWebメディアMugendai(無限大)では、睡眠を司る物質である「オレキシン」を世界で初めて発見した、筑波大学・国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)機構長柳沢正史教授のロングインタビューが掲載されていました。

誰もが毎日するのに、よく分かっていない眠りについて。改めて知ってみませんか。

もりもり食べて、どんどん痩せる。睡眠を司る「オレキシン」のすごい効果

柳沢教授が発見したオレキシンとは、睡眠と覚醒の切り替えを制御する脳内神経伝達物質のこと。これにより、アメリカの製薬会社はオレキシンの受容体を活性化させない睡眠薬を開発。日本でも認可されており、睡眠に悩む人にとって大きな福音となりました。

しかし教授が現在開発に取り組んでいるのは、むしろオレキシンを活性化させようという正反対の領域。それを実現できれば、時差ぼけや薬の副作用、及びうつ病やアルツハイマーから来る日中の眠気を抑えることができるだけではなく、何とメタボリック症候群も改善できちゃうかもしれないんですって。一体どういうことなんでしょうか。

オレキシンで覚醒を維持すると、人は食欲が増しておいしく食べるようになります。しかし、長期にわたって観察すると、オレキシンの働きが強い人ほど痩せ、弱い人ほど太るという一見逆の結果が得られます。マウス実験でも、高脂肪食を食べさせるとマウスは通常太りますが、オレキシンを投与すると、よく食べるのに太らないのです。

なぜそうなるのか。確かにオレキシンは食欲を高めるのですが、半面、基礎代謝を増やしてエネルギーを多く燃やす働きがあるのです。その結果、消費するエネルギー量が、摂取したエネルギー量を上回って痩せるのです。オレキシン受容体作動薬でメタボリック症候群が改善するのはそのためです。

まさにもりもり食べてガンガン痩せる。そんな夢のようなことが期待できるほど、オレキシン、並びに睡眠って大事なことなんですね。

もりもり食べても、どんどん痩せる? 睡眠を司る「オレキシン」の秘めたる実力とは
Image: Mugendai(無限大)

この研究はすでにマウスでの実験で成果を上げており、ナルコレプシーと呼ばれる睡眠障害の発症を強力に抑え、正常なマウスにも覚醒を促すことが確認されたのだそう。期待は高まるばかりですよね。

まだほとんど分かっていない睡眠のこと。勝手な自己判断は危険

みなさんは「睡眠負債」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。睡眠不足が借金のようにじわじわ積み重なり、がんや生活習慣病、うつ病、アルツハイマー病などいろいろな病気のリスクを高めることで、疫学的にも証明されています。

Mugendaiではこの「睡眠負債」についても触れられているのですが、教授が警鐘を鳴らすのが、「眠らなくても大丈夫」や「睡眠時間を減らす方法」などの書籍や言説が飛び回っていること。睡眠の重要さについて、教授は以下のように語っています。

睡眠の機能はまだ殆ど分かっていないし、人の脳が必要とする睡眠量は、4時間程度では絶対的に足りません。必要な睡眠量には個人差がありますが、殆どの人は6~8時間のあいだに入り、平均すれば約7時間です。

確かに、そもそも分かっていないことに、あれこれ言えるわけないんです。睡眠の世界的権威である柳沢教授が言うのですから納得ですよね。

もりもり食べても、どんどん痩せる? 睡眠を司る「オレキシン」の秘めたる実力とは
Image: Mugendai(無限大)

他にも、オレキシンの発見は「偶然」だったという裏話や、「人はそもそもなぜ眠くなるのか」といった話題など、睡眠に関わる目からうろこのお話は、Mugendai(無限大)よりぜひ続きをお楽しみください。


Image: Mugendai
Source: Mugendai(無限大)

(渡邊徹則)