ノイキャン具合はどう?
今年各社から出そろってきた完全ワイヤレスイヤホン(bluetoothイヤホン)ですが、ソニーはそこにノイズキャンセリング機能を搭載した「WF-1000X」を投入してきました。米GizmodoのAdam Clark Estes記者がレビューしてますので、どんな使い心地か、以下どうぞ!
WF-1000Xのことを初めて聞いたとき、何か聞き間違いじゃないかと思いました。ソニーが完全ワイヤレスイヤホンを出すってだけじゃなく、そこにアクティブノイズキャンセリング機能を搭載するっていうんです。これはワイヤレスイヤホン界初の快挙で、実際、わりとすごいんです。
ただしこの「わりと」ってのがポイントです。元々小さいデバイスに機能を詰め込もうとすれば、やっぱり無理も出てくるってことです(主にバッテリーとかバッテリーとか…)。ノイズキャンセリングの性能も限定的で、耳に入れた瞬間から完全な静寂…ってものでもありません。それでも、WF-1000Xでできることにはみなさん驚くと思います。
これは何?:ちゃんと使える、完全ワイヤレスイヤホン
価格:200ドル(日本ではオープン価格、ソニーストアで税抜2万4880円)
好きなところ:すっきりしたデザイン、使いやすい、音も良い
好きじゃないところ:バッテリーが短命すぎ
普段使いのために作られたソニーらしいデザイン
ソニーはほかの完全ワイヤレスイヤホンがそうである以上に、Apple(アップル)のAirPodsを意識しているようです。AirPodsと同じように、1000Xシリーズのイヤホンは充電ケースに入っていて、そこから取り出すと瞬時に音楽再生デバイスとつながります。さらに、ソニーのWF-1000Xは汗だくで運動するワークアウト向けというよりも、町中など日常生活向けに作られています。つまり防水じゃなく、フィット感もたとえばBoseのSoundSport Freeとかと比べるとゆるめ。価格は200ドル(日本のソニーストアでは税抜2万4880円)と、1万6800円のAirPodsより高いんですが、ノイズキャンセリングと引き換えということかもしれません。
1000Xシリーズのイヤホンはどれも、すっきりしてソニーらしいデザインです。色はブラックとゴールドがありますが、どちらもちょっとツヤ感のあるメタリックな仕上げで、しっかりしたプラスチックの本体といいコントラストが利いてます。
付属のイヤーピース部分はシリコンとフォームの両方あり、どちらにもメリット・デメリットがあります。シリコンのほうが密着感がありますが、汗をかいてもずれにくいのはフォームです。イヤホンの前面では、透明のプラスチック部分からアンテナが透けて見えます。両イヤホンの下側にはボタンがあり、左側が電源とノイズキャンセリング、右側がマルチ機能となっています。ボタンは押しやすいですが、間違って押しちゃうほど軽くもありません。

WF-1000Xを使っていてうれしいのは、デバイスとの接続プロセスです。というか、そんなプロセスが必要ないことです。ケースから出すと、左のイヤホンが最後に接続したもの(たいていスマートフォンですね)を見つけて即座につながり、女性っぽいロボットの声がつながったことを教えてくれます。たまに音が左側だけで流れ出すことがありますが、そのときは右側のマルチ機能ボタンを押すと左右が同期してくれます。
ただ、特にニューヨークのユニオンスクエアあたりみたいな混み合った場所では、左右の接続がたまに切れてしまうことがありました。が、一瞬でちゃんと復活しました。この種のイヤホンではよくある問題ですが、ソニーのイヤホンは僕がこれまで試したほかのメーカーのものよりややマシだと思います。

誇張しすぎないクリアな音質
でもフィット感と接続性は、ワイヤレスイヤホンの評価軸の一部に過ぎません。音質も当然大事で、この点もWF-1000Xはしっかり押さえてはいますが、多少の制限はあります。1000Xシリーズは、クリアでよくチューニングされた音、特に中音から高音が得意のようですが、低音に関してはそうでもありません。チャンス・ザ・ラッパーの『Somewhere in Paradise』を聞いたときは、最初の方のドゥン…ドゥン…という音がよく聞こえず、でも最後のほうでトランペットとかコーラスが入ってくると、いい音で聞こえました。
でも低音が弱いというのは、必ずしも悪いことじゃありません。WF-1000Xの兄貴分ともいえるワイヤレスヘッドホン、WH-1000XM2と聴き比べてみたところ、WF-1000Xのほうがよりシャープな音なので、低音重視のWH-1000XM2よりやや現実に沿った音だと感じました。WF-1000XではたとえばTotoの『アフリカ』のシンセサイザーはいい意味でキンキンするほどクリアで、マリンバもパリッとしていました。WH-1000XM2だとよりビッグな感じがして、それはそれで良いんですが、ディテールが聞こえにくくなっていました。
それからノイズキャンセリング機能があるとはいえ、WF-1000Xの音量はマックスにしてもそれほど大きくありません。そのことは地下鉄みたいなうるさい場所に行くとはっきりわかりました。

バッテリーは課題
このへんで悪いところもお伝えしときましょう。この高級小型犬みたいなイヤホンのバッテリーライフは、ひどいです。ほかの完全ワイヤレスイヤホンと比べて、ちょっとどころじゃなく消耗が激しいです。ソニーの公式発表でもフル充電で最大3時間としてますが、AppleのAirPodsもBoseの完全ワイヤレスイヤホンも5時間といってるんです。
つまり競合の半分ちょっとしか持たないってことで、実際使うとその短さを痛感します。「今日はこのイヤホンで集中して、たまったメール処理するぜ!」なんて思ってても、充電のためにちょいちょい休憩しなきゃいけなくなる感じです。というか、僕がそうでした。でもたとえば通勤とかの細かい時間で使うだけで、合間にケースに入れて充電できるなら、この点もそんなに問題ないと思います。あとはノイズキャンセリングをオフにすると一般にバッテリーの保ちが良くなるはずですが、なんでかソニーは、ノイズキャンセリングオンでもオフでもバッテリーは最大3時間しか保たないといってます。

そんな欠点もありますが、僕はWF-1000Xがいたく気に入りました。フィット感もいいし、僕の好きな曲がいい音で聞けます。電話の声までよく聞こえました。でもたしかに、バッテリーが2倍長持ちするとか、左右の接続が全然切れないとかだったらな、とは思います。WH-1000XM2みたいにエクストリームなノイズキャンセリングだったら最高だとも思います。
ただ僕はそれでも、WF-1000Xはすごくいいと思います。未来感があって、映画『Her』とかいろんなSFに出てきたワイヤレスイヤホンってこういうことだったんだ、という感じがしますね。未来感ってのは、小さくてすっきりしたデザインで、魔法みたいに感じられる瞬間があるってことです。バッテリーライフと接続性に関してはソニーの宿題ではありますが、それってほかのメーカーもみんな同じことですからね。

まとめ
・超コンパクト・快適・見た目良しを同時に実現。
・素晴らしい音質ですが、低音とボリューム感にはちょっとだけ欠けます。
・価格はAirPodsよりちょっと高いんですが、Boseの完全ワイヤレスイヤホンより安いです。
・バッテリーライフはゴミのようですが、使い方次第では別に問題にならないかも。
Image: Gizmodo US
Source: SONY, YouTube(1, 2, 3)
Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文]
(福田ミホ)