「SNSで社員に全生活を配信させちゃう会社」が舞台の映画『ザ・サークル』監督インタビュー:「『ずっと働きたい』と主人公が思えるような会社を目指しました」
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「SNSで社員に全生活を配信させちゃう会社」が舞台の映画『ザ・サークル』監督インタビュー:「『ずっと働きたい』と主人公が思えるような会社を目指しました」

社会派っぽさとSFっぽさが絶妙に融合。

2017年11月10日に公開された映画『ザ・サークル』は、「行きすぎたSNSが暴走を始める」というキャッチコピーがなんとも今風。何が起こるかと言えば、ひとりの若い女性が自らの全生活をSNSで配信、予想もしなかったトラブルに見舞われてしまいます。

そんなの見えてる地雷な感じがしますが、彼女だって理由なくそんなことをするわけではありません。巨大SNS「サークル」の運営会社に勤めている彼女は、広報活動の一環として自らの生活を公開するんです。あくまでお仕事。

彼女の勤めるサークル社は、一言で言うならGoogle(グーグル)みたいにデバイスも作るFacebook。SNS(Webサービス)を運営しつつも、それに紐付くスマートフォンなんかも作っています。サークル社は新製品として、どこからでもSNSに写真や動画をアップできる小型カメラを発表、主人公のメイはその広報担当に抜擢され、新製品を使ってできるPRとして自分の生活をSNSで配信するという設定です。

四六時中SNSに配信する主人公はすぐに膨大なフォロワーを獲得。しかし、オフィシャルな行動だけでなく、家族や友だちとの大切な会話も見知らぬフォロワーたちにシェアしてしまいます。その結果、壊れていく周囲との関係。生活を配信する本人にはその覚悟があるからいいのですが、周囲の人たちのプライバシーが思わぬところで侵されてしまうんです。まず被害を受けるのがSNSに配信している当人ではない、というのがキツい。

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サークル社のオフィスで真剣に働く主人公・メイ(エマ・ワトソン) © 2017 IN Splitter, L.P. All Rights Reserved.

そんなトラブルを引き起こしてしまう会社だから、ブラックな会社なのだろうと思うかもしれませんが、そうではありません。サークル社は、運営するSNS(サービス)に関連するデバイスも作る会社という点ではGoogleっぽく、オフィスの雰囲気はApple(アップル)が近いです。トム・ハンクス演じるCEOはスティーブ・ジョブズをオマージュ。テック企業のイデアと言っていいんじゃないかと。

今回は、映画『ザ・サークル』のジェームズ・ポンソルト監督にインタビュー、本作の舞台となるサークル社がどんなコンセプトで描かれているのかをうかがいました。

信念と利益を同時に追求するCEOが導く会社

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メイとサークル社CEO・ベイリー(トム・ハンクス)。会社を導くカリスマが若手社員を新製品(どこからでもSNSに写真や動画をアップできる小型カメラ)の広報担当に抜擢したのが「SNSの暴走」の始まり © 2017 IN Splitter, L.P. All Rights Reserved.

──物語のテーマである「SNSの暴走」。そのきっかけとなったのはサークル社CEO・ベイリーです。彼がメイにかける言葉は宗教家のようでさえありました。監督は彼をどのような人物として描いたのでしょうか?

ジェームズ・ポンソルト(以下、ポンソルト):「カルトのリーダー」的な部分と「テック企業のCEO」的な部分を両方持ったキャラクターとして彼を描いたつもりです。

彼は「自分のやろうとしていることは正しい」と信じているんです。すべての人の情報と経験を収集し分かち合うことで、人々は階級を超えて平等になり、世界は民主的な場所になる、と。

しかし、彼は政治家ではなく、民間企業のトップ。収益を出し株主に応えることが何よりも大事な立場の人間です。自分の正しさを信じていたとしても、そこに真心はあるのかという問題になってきます。

その一方で、自分の正しさを信じているからこそ、彼の言葉には説得力があります。「(SNSでメイの生活を全配信して)常に人から見られる状態をつくる」という彼のアイデアは、私たちからすると怖いことだし、「ちょっといかれてるな、この人」と思うところでもあるんですが。

──ベイリーは新製品のプレゼンの中で「知ることはいいことだ、しかし、すべて知ることはもっといいことだ」と言っています。このセリフについて、監督個人はどんな見解を持っていますか?

ポンソルト:私たちがもっている好奇心に関わるものでしょう。「テック企業のプレゼンでよく聞くタイプのセリフ」ではないかと思います。

つまるところ、サービス向上のために、我々はもっとあなたがたのことを知りたい…「個人情報を提供してくれ」ということですよね。提供した情報をもとに広告を見せたり、商品を売ったりすることで、サークル社のようなテック企業は私たちの個人情報を金銭化・収益化しています。それを踏まえると、ジョージ・オーウェル的なセリフだなと。

たとえば、利便性のためにスマートフォンを手に取った我々は、自分たちの情報を自ら企業に明け渡すようになっていますよね。表立ってはすべての情報を同じように、均等に分かち合えるという、民主主義的な考え方のようにも感じますが、その結果としてお互いをスパイするような社会を創りあげているのではないでしょうか。私たちはすでにある種の監視社会に身を置いていると思いますが、それは消費者ベースの資本主義社会でもあるんです。

──サークル社は物語の後半で自社のサービスであるSNSが行政インフラとなることを目指し始めます。現実にはそんなテック企業はまだないようですが、GoogleやAppleのサービスは私たちの生活に深く浸透しています。こうした状況を監督はどう考えていますか?

ポンソルト:意識しているにせよ、していないにせよ、実際にそうしたことは起きていると思うんですよね。

たとえば、2016年のアメリカ大統領選では、TwitterもFacebookも効果的なツールになり、当時候補者だったトランプ大統領はSNSによってカオスを醸成し選挙戦を変えました。

マーク・ザッカーバーグは、議会の前でFacebookというプラットフォームが選挙戦において、他国やユーザーにどんな風に使われ、フェイクニュースをつくり、アメリカの民主主義を攻撃したのかを証言しなければならない状況になっています。人ひとりでは御せないほど、SNSは大きな存在になっていると思うんです。今は実際にひとつの国の選挙戦すら左右することができるような力を持ってしまっています。日本でも起きうることだと思いますよ。

未来的でユートピアみたいなオフィス

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ポンソルト監督は「良い仕事がしたい」と懸命に働くメイの姿に共感を覚え、原作者から本作の映画化権を獲得したとのこと Photo: ギズモード・ジャパン

──サークル社のオフィスは、某大手テック企業を思わせるデザインでしたが、どんなコンセプトで作られたのでしょうか?

ポンソルト:サークル社のデザインについては、原作小説が主なインスピレーション源です。その一方で、先進的なテック企業であるGoogleやApple、Facebookで働いている友人がいるので、取材にも行きました。

オフィスではどんなエネルギーが感じられるのか、働く人は幸せそうなのか、壁にアートはかかっているのか、社員たちのデスクはカスタマイズして利用されているのか、それとも均一な感じなのか、色彩はカラフルなのか…そういった点を見てきました。

また、スカンジナビアやアメリカの未来的な建築物を大いに参考にしました。そうした建物の多くは、ガラスを多用した、オープンで自然と共存しているかのようなデザインであり、ユートピア(理想郷)みたいです。実際、そうしたオフィスを採用しているIT企業は多いですよね。

ここでずっと働きたい」と主人公のメイが思えるようなデザインを目指しました。営利企業であるサークル社は収益を何よりも望み、スタッフにはなるべく多くの時間をオフィスで過ごして欲しいはずですから。もちろん、自発的にね。全体主義的・ファシズム的な怖い場所には絶対にしたくありませんでした。


理想を持った経営者がSNSという巨大ネットワークの暴走が引き起こす。その舞台はIT企業が持つ理想的なイメージを体現した会社であり、主人公はそこで懸命に働くひとりの女性。この構図がなんともディストピア。成熟し巨大化テック企業とそのサービスへの不安感が表現されているのかも。

そんな映画『ザ・サークル』は2017年11月10日(金)より、TOHOシネマズ 六本木ヒルズ他で全国ロードショーされています。

Photo: ギズモード・ジャパン
Image: © 2017 IN Splitter, L.P. All Rights Reserved.
Source: ギャガ

(かみやまたくみ)

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