Google発の自動運転企業、Waymoのいろいろヒミツな試乗会に行ってきた
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Google発の自動運転企業、Waymoのいろいろヒミツな試乗会に行ってきた

Waymo(ウェイモ)。Google(グーグル)の自動運転プロジェクトとしてスタートした後スピンアウトし、今はGoogleのグループ会社。トヨタやクライスラーなど、複数の車メーカーとプロジェクトをともにしてきました。今後、自動運転市場を牽引する立場で、ますますその存在を大きくしていくでしょう。そのWaymoが、先日マスコミ向けに自動運転車の試乗会を実施し、米Gizmodoがこれに参加してきました。体験したConger記者が見た自動運転の未来とは? 彼女の体験レポートをどうぞ。


Waymo試乗。まず言いたいのは、ただ車に乗ってきたという感じだったということ。Waymoにとって、これはいい感想ですよね。だって、普通の車と同じように安全で、特にロボットだという変わった印象を抱かなかったわけですから。 試乗会が行なわれたのは、サンフランシスコからバスで3時間ほどの秘密のテスト場。試乗会参加条件として伝えられていたのは、写真を撮らないことと勝手に歩き回らないこと(トイレに行くときも、2人のセキュリティ担当者がトイレまで付き添うという徹底ぶり!)。すべて、Waymo側のスケジュールにしたがって体験会はすすむわけで、Waymoが見せたいものを見せたいようにみせるという計算された会だったわけですが、それでも参加した意義を十分に感じました。「自動運転=自分が運転をしない車」という未来に対して懐疑的な私ですが、試乗してみてそのフツーっぷりに驚きました。 試乗したのはクライスラーの家族向けミニバンPacifica。もちろん、一般的なそれではなく、自動運転用のPacificaなので、車の上、両サイド、バンパーにはセンサーが搭載されています。しかし、見た目や乗り心地は、普通の家族向けミニバンそのもの。参加者が乗り込んだのは、2列目と3列目のシート。テストコース走行中は、1列目=運転席は完全無人です。その後、技術者が1列目に乗り込み、モニタリングをしていました。座席の後ろに取り付けられたタブレット端末には、ミニバンの走行しているルートやライブマップ表示がされていました。 車自体は普通の見た目でも、外から見るとやはり違和感あり。だって、動いている車の運転席に人が乗っていないわけですから。エンジンかけたままちょっと車をおりるとき、Pに入れ忘れて車がそのままソローっと前進してめちゃくちゃあせったときのことを思い出しましたね。

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車内に乗り込み車が走りだすと、運転席に人がいないという非日常感よりも、タブレット画面のほうに注目することに。後部座席に座ると、進行方向や通行人が見えにくいため、バンがどのように障害物に反応するのかは、タブレット越しでチェックしていたためです。 Waymoは、UberやLyftのようにウェブ&アプリ配車サービス市場への参入を計画しています。ゆえに、ブレットに表示された自動運転バンでのテストコースも、配車サービス系のデザインを感じました。タブレットの地図に表示されていたのは、歩行者、自転車、信号、工事現場などなど。WaymoのUXデザイン担当のRyan Powell氏曰く、この地図は乗っている人がより安全を感じるよう、走行先に何があるのかを見せるデザインになっているといいます。 タブレットでは状況解説も行なわれていました。たとえば、横断歩道の真ん中で立ち止まっている歩行者がいるとします。状況解説では、「こういう場合、多くの人間のドライバーは歩行者が目の前を通り過ぎるとすぐに車をすすめます」といったように、さまざまな交通シチュエーションの説明がなされるというわけ。自動運転車「見る」さまざまな情報(LIDAR、レーダー、そしてカメラからのデータなどなど)も、シンプルなアニメーションとなってタブレットに表示されていました。 Powell氏は「適量の情報を適切なタイミングで見せることには、非常に気を使っている」とこれを説明してくれました。「何をどのように、どう強調して見せるのか。どうキュレートするかが重要です」個人的には、このキュレーションがうまくいっていると感じた表示もあれば、見にくいと思ったもの(自転車やスケボーなど)もありました。

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今回走行したテスト場は、Waymoがここ6年ほど利用している場所。プロジェクト開始当初、まだGoogle内での極秘プロジェクトだったとき、Waymoが開発しようとしていたのは、高速道路でのアシスタント機能でした。エンジニアを道路に送り込みソフトウェアのテストをしていましたが、メールしたり化粧したり、居眠りしてしまうという報告があり、アシスタント機能ではなくフル自動運転に乗り出すべきだと判断したといいます。 車をスタートさせるのは、天井にとりつけられたコンソール部分にある青いボタン。高速道路のようなハイスピードはテスト中ださなかったとはいえ、走行は全体的にとても安全。カーブにさしかかるとき、他の自動運転車を追い越すときには速度をゆるめていました。とても注意深く、乗っているこちらも安心できるほどでした。交通量の多い交差点に差し掛かるときなど少しずつ車体を前進させる様子は、まるで人間が運転しているよう! 試乗会に一緒に参加した元Gizmodo記者(現Vice News記者)のWilliamは、テストコースを「まるで、映画『トゥルーマン・ショー』のようだ」と表現していましたが、これは確かにぴったりな表現! 何時間も同じ車が同じ場所をまわり続けたり、故障した車の傍で電話をかけ続ける人など、映画のワンシーンを抜き出して繰り返し再生している感じ。さらにコンソールのボタンを押せば、Waymoスタッフと電話が繋がり話ができるとなれば、誰かのためだけに作られた不思議な街感はますます増すばかりでした。

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もちろん、同じ状況に何度も出くわすというタスクはテストコースに必要なこと。同じことを何度もやれば、難しい場面でもより迅速に対応できるよう学んでいけますからね。「もし〇〇が起きたら」というテストを行なう専用のコースもあるといいます。もし、サインなしで急に前の車がバックしてきたら? もし、サイレンを鳴らした救急車が通りすぎたら? もし、夜道で土砂降りになったら? などなど。 さまざまな状況を学ぶのは、シミュレーションでも行なわれます。シミュレータを使うことで、現実では実現が難しい何十億マイルという距離を走ることができますからね。「2万5000台にあたるシミュレーションが、毎日常に走り続けています」そう語るのは、Waymoの開発部門の副リーダーDmitri Dolgov氏。シミュレーションでは、エンジニアは新しい障害物などを追加して検証。新機能を加えてのシミュレーションも行なわれているといいます。

8年の開発を経て、現在のWaymoはかなり賢いです。私の試乗中には、予定になかったハプニング(リスがテストコース内を横切った)があったものの、見事に対応しました。開発に次ぐ開発、テストに次ぐテストを重ね、ライバルも振り落とされていった今、Waymoが求めるのは現実の道での走行。「現段階ではこの分野は、まだまだ机上の空論です」そう語るのはCEOのJohn Krafcik氏。「目標は、目的は、このテクノロジーを世界で使うこと。つまり、公道に行くことです」 Waymoでは、すでにアリゾナ州にて自動運転車テストプログラムEarly Rider Programを実施中。プログラム開始初日だけで、1万人以上の参加登録(最終的な実施人数は不明)があったといいます。Waymoでは、乗客のよりスムーズなピックアップや、目の見えないユーザーへの音でのアプローチなど、さまざまな手段を模索しています。プログラムを通してあがってくるリアルな現場からの声はとても貴重で、Waymoの発展に役立っています。 ですが公道を走るということは、人の目に晒され、みんなあれこれ触りたがるということ。「走行中の自動運転車の目の前に飛び出してみた」なんて、YouTuberがやりそうなネタで恐ろしいですよね。公道でテストはしたいけれど、必要以上の注目を浴びるのは、Waymoにとっては困ったこと。なぜなら、Waymoの自動運転車の技術の大部分はまだ極秘事項だからです。

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たとえば、秘密の技術の1つがクラクション。試乗会でのテスト走行では、目の前にオープンカーが強引に割り込むというシーンがありました。ここで、ふと「自動運転車はクラクション鳴らすことがあるのか?」という疑問が浮かんだので質問してみると、その答えは可能とのことでした。もちろん、人間とは違うので怒りに任せたようなクラクションを鳴らすことはないようです。ただ、シーンによって鳴らす鳴らさないがあり、詳細は秘密。 クラクションのほかにも、乗車している人にはアクセスできない機能が多くあります。自動運転車のブレインが入っているトランクは開けることができません。車内後部座席からこっそり開けようとしても、感知されてバレてしまいます。 ただ、Waymoにとって公に向かう上で最も難しい問題となるのは、YouTuberでも秘密を詮索しようとする人でもなく、運転しなくて大丈夫だと利用者に理解してもらうこと、ハンドルから手を離してもらうことでしょう。自動車事故の大半は、ヒューマンエラーによるもの。「完全なる自動運転車ならば100%車に任せればいい、任せなくてはいけない」、これをどのようにドライバーに納得してもらうかというのが問題となるのです。プロダクトマネージャーであるJuliet Rothenberg氏は「ドライバーに完全なる乗客へとなってもらうためにパラダイムシフトが必要になる」と解説。Waymoの社員ですら、自身をドライバーだと認識したいという人が多いといいます。

運転というのはすでに人間にとって生活の一部であり、運転手というのはアイデンティティの1つなのでしょう。だとすれば、車に乗るときはいつも運転手だった人に、完全なる乗客という意識を持ってもらうのは、容易いことではないはず。Rothenbergc氏いわく、ドライバーから信頼を勝ち取る鍵は、予測性とコミュニケーションにあるとのこと。試乗した私が言えるのは、繰り返しますがこれに尽きます。普通の車と変わらなかったですよ、と。


普通の車と乗り心地が変わらないからこそ、ドライバーのみなさんの意識改革が必要なのでしょう。新しいものを受け入れる、自分の役割を変えるってのは難しいものだもんね。自動運転車の本当の問題は、技術ではなくて人の心ってことか…。

Image: Waymo
Source: Chrysler, Wikipedia

Kate Conger - Gizmodo US[原文
(そうこ)

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