デタラメはいかん。
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、「ホメオパシー」関連の製品を取り締まる方針を先日発表しました。ホメオパシーとは、「病気の症状を起こすものをあえて摂取する」などといった根拠の認められていない民間療法のこと。これまでFDAの施策が寛大だったために、規制をかいくぐって流通していました。
ところが、FDAによればそれも終わりを告げるそうです。発表によると、同局がターゲットにしている製品は、喉の痛みのためのハーブティーなどという軽いレベルではなく、より深刻な病気を治療できると宣伝されています。つまり、まともな臨床試験も行なわずに浅い希望だけをパッケージングし、治療を求めて必死な人々に売りつけているのです。以下は、FDA局長、Scott Gottlieb氏による声明文です。
近年、ホメオパシーと銘打たれた製品が、一般的な風邪からガンに至るまで様々な病気の治療を謳って、今まで以上に大きな勢いで販売されています。その多くで、人々は治癒に無意味かも知れない製品に信頼とお金を預けてしまっています。無意味なだけでなく、最悪の場合、粗雑な生産や試験されていない成分、または利用者に適切に公表されていない原材料を使うことで、回復不可能な状態に陥ってしまうかもしれないのです
これは、Gottlieb氏が局長に就任して初の摘発ではありません。11月には、ガンを治療、あるいは完全に治癒すると謳ったマリファナベースの製品を販売していた企業4社に、FDAは警告状を送っています。また同月、デタラメで、時に危険な治療を行う幹細胞治療クリニックに対する取り締まりも強化すると発表しています。
今回のFDAの発表は、ホメオパシー製品に対してリスクベースの取り締まりを行なうための、新たなガイドラインの草案が含まれています。
草案では、安全性への疑問が報告されている製品、深刻な病気を治療する製品、「搾取される可能性のある層」に向けられた製品、そして経口摂取、あるいは塗布以外の方法(注射など)で摂取する製品に注目するとあります。
これは幹細胞治療クリニックに対して提案しているガイドラインと近いアプローチで、「1つの新たな規制を行なたび、過去の規制2つを緩和しなければならない」と発令したトランプ大統領に対する、FDA局長の言うところの「規制による規制緩和」の良い一例です。
同局によると、ホメオパシー製品はつい最近まで非常に小さいマーケットでしたが、現在では30億ドルの価値を持つ業界へと急成長しました。ハリウッド女優のグウィネス・パルトローが起業し、CEOを務めるGoop(グープ)はその代表ですが、女性の秘部に一日中入れると「気を活性化させる」という翡翠の卵や、「NASAの宇宙服と同じ材料」で「体のエナジー周波数を調整する」という意味不明なことを謳うただのシールを120ドル(約1万3千5百円!)で売っていたりしたことでも問題になっています。
そもそもホメオパシーとは、病気に対し「健康な人間が摂取すると、その病気と同じ症状を引き起こすもの」を摂取することで治療するという考え方。つまり、症状を抑えるものを摂取する近代医学とは逆ですね。もっと奇妙なのはここからで、摂取する物質を水で徹底的に薄め、もはや科学的にいってただの水になったもの(薄めるほど治癒効果が倍増すると考えられている)を砂糖玉に染み込ませ、患者はそれを摂取するのです。つまり、ただの砂糖を食べているだけです。
ほぼ間違いなく疑似科学ですが、米国では1938年の食品医薬品化粧品法がホメオパシーの工法でできた物を薬品と指定して以来、国に認可された疑似科学として存在していたのです。そういった根拠の薄い科学に基づいた医療や薬品を監視しているNGO団体、Center for InquiryがFDA、および連邦取引委員会(FTC)に対して請願を行なった結果、FDAは2015年にホメオパシー関連製品の規制について聴聞会を開き、FTCは去年、ホメオパシー関連製品は証拠なしに効果を宣伝してはならないと発表したのです。
上記のガイドラインの草案が実際に採用されるまで、一般市民からの意見を集める期間が90日間あります。しかし今すぐに採用されてもいいくらい遅すぎる、はじめの一歩といえるでしょう。
Image: Shutterstock
Source: FDA(1, 2, 3), Wikipedia(1, 2), STAT, goop, The Medical Journal Australia
Kristen V. Brown - Gizmodo US[原文]
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