現実社会が風刺されている? フィンランドで映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』を見てきた
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現実社会が風刺されている? フィンランドで映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』を見てきた

今年もこの季節がやってきました。街にはクリスマスの彩り、そして映画館には『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』! 12月13日、フィンランドで日本より一足お先に本作を見てきましたが、フィンランドではどういう受け止められ方をしたのでしょうか?

まずは相変わらず『スター・ウォーズ』熱の盛り上がっていない街中の様子からご紹介しましょう。相変わらず広告類は街中では目立たなかったものの、変わって見られるのは『スター・ウォーズ』フランチャイズとコラボする商品の数々(とは言っても日本の比ではありませんけどね)。ヘルシンキ中央駅にはスマートフォンOnePlus 5T「スター・ウォーズ・エディション」の広告(トップ画像)が映画そのもののポスター(下画像)よりもデカデカと張ってありました。また、このOnePlus 5Tのコラボモデルは映画上映前にも広告動画が流れて、『スター・ウォーズ』人気にあやかって売る気満々のよう。

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街の中心にあるショッピングモールKamppiの入り口付近ではコカ・コーラが映画とコラボして無料でコーラを配っていたりも。

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Kamppi横の映画館Tennispalatsiには一緒に写真を撮れるファースト・オーダー・ストームトルーパー・エクセキューショナーが置いてあったり。ここには『フォースの覚醒』の公開時にもファーストオーダー・ストームトルーパーが置いてありました。

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上映時にはジェダイのローブを着た人々や、こんなおしゃぶりをしゃぶったカイロ・レンのコスプレをしている人がお菓子やポップコーン(入れ物には『スター・ウォーズ』のロゴがプリントされている)を買う姿も。そんなフィンランドでの『最後のジェダイ』の評判はどうなのでしょうか?

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フィンランドの最大紙Helsingin Sanomatは本作に4つ星評価を与えています。カイロ・レンを「スクールシューター」(学校で銃乱射事件を起こす学生)に例えているのも印象的でした。別にカイロ・レンがルークのジェダイ・アカデミーでいじめられていたという意味合いではありません。原因となる出来事が存在し、犯人の中で募った怒りが、怒りの矛先を原因に向けながらもその周囲をも無差別に巻き込んで爆発する様がそう形容されているのです。

なお、日本では「学校では宿題も無く、いじめも無い」なんてまことしやかに語られるフィンランドの教育ですが、それらは全て間違っています。フィンランドでも実際に学校でいじめられていた子が銃乱射事件を起こしたことが3回あるのです。タブロイド紙Iltalehtiはそれよりも評価の高い5つ星。面白いのは、Iltalehtiは本作の宇宙戦が「ゲームで観られるような素晴らしい宇宙戦」であったと評価しているのに対し、Helsingin Sanomatは「『フォースの覚醒』や『ローグ・ワン』では良かったのに、本作はゲームみたいに見えて印象に残らなかった」などとしているのも興味深いところ。

また前作『フォースの覚醒』ではこれまでのシリーズでチューバッカ役を演じてきたピーター・メイヒューと共に、フィンランド人のヨーナス・スオタモが2人で演じていましたが、本作ではヨーナス・スオタモがひとりでチューバッカを演じたこともフィンランドでは注目を浴びています。

他に一緒に『最後のジェダイ』を鑑賞したフィンランド人と感想を話し合った中で興味深かったところが二点ありました。

まず一点目。ストーリー上のネタバレでは無いので書かせて戴くと、本作では兵器の販売に関して言及する下りがあります。その兵器販売者はファースト・オーダーにもレジスタンスにも兵器を提供しており、販売者は彼らの戦争で巨額の富を得ているのです。この『最後のジェダイ』で小さく描写されている部分は、特定の国への批判ではありませんが、現代兵器販売で儲ける者への批判とも読み取れます。そしてアメリカにせよロシアにせよ、そしてフィンランドもまたこの風刺の矛先に上げることができます。フィンランドの防衛用車両や航空機の製造販売を行なうPatria社(フィンランドの国が50.1%の株を持つ)は海外に兵器を販売しています。フィンランドの国防のために兵器開発をしても、元が取れないので、他国へ販売することで、自国向けの兵器製造を可能にしているというのが現実ではあるのですが、サウジアラビアやアラブ首長国連邦にも輸出をしています。サウジアラビアは有志連合としてイエメンで戦闘を行なっており、国連にも非難されています。昨年は現政権が独裁国家などに武器兵器を販売していたことが判明したのも記憶に新しいフィンランド。これまで単純な善と悪の戦いだけを描いていたサーガの中で、その戦争の後ろの金と兵器の動きを垣間見せた本作、もしかしたら映画を見たフィンランド人たちには一瞬目の前に現実の社会が映し出されていたかもしれません。

もう一点はレプリゼンテーションに関すること。レプリゼンテーションの面ではベトナム系アメリカ人のケリー・マリー・トラン演じるローズ・ティコが、サーガ初のアジア系準主役ということで注目を集めています。しかし『フォースの覚醒』、『ローグ・ワン』と映画シリーズが進むごとに人種、性別の両面でレプリゼンテーションが豊かになってきたなかで、『最後のジェダイ』では特に大きな驚きはありませんでした。「レプリゼンテーション」という言葉を使うことで、ディズニーの実写『スター・ウォーズ』シリーズは人種の多様性に配慮する努力をしているように見えるのは事実でしょう。しかしこれ以上メインのキャストに人種的多様性が増えない限り、白人系キャストが主な役割を占める中にちらほらと準主役級に他人種のキャストが織り込まれている現状は、ある意味では見せかけだけの代表(Tokenism)とも言え、真のレプリゼンテーションとは言えないでしょう。もちろんここには「シリーズの本質は初代三部作を中心とした物語であり白人中心になるのは必然だ」という目の背け方もできるでしょうが、ディズニーやスタッフが「レプリゼンテーション」という言葉を用いて人種の多様性を強調する限りは、今後新たに作られる三部作に関して人種の更なる多様性が求められることでしょう。

プレミア上映でも大好評だった『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』、ぜひ前情報の類いはなるべく読まずに劇場で体験してください!



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