省エネのために街灯をLEDに変えたら、光害が増えたという研究結果
夜のフロリダ

省エネのために街灯をLEDに変えたら、光害が増えたという研究結果


良案のはずが裏目に出た模様。

エネルギーの消費を減らすため、世界中の自治体が街灯をLEDに置き変えています。しかし新たな研究で、コスト効率の良いはずの光源を用いたこの解決策は期待された省エネ効果をもたらさないばかりか、これまでにないほど光害を悪化させているという事実が明らかになりました。

ある国際的な科学者チームは衛星に搭載されたセンサーを使って、夜間の地上の明るさの変化を理解、さらにLEDが地球規模での省エネにつながっているのかを見極めようと試みました。LED、OLEDそしてPLEDなどの固体光源の導入によって、フィラメント電球やガスといった従来の照明からそれらへの移行は大いにエネルギーを節約できると考えられ(そして願われ)ていたのです。しかし、最新の研究によると、LEDの使用によって多くの地方自治体ではエネルギーを節約でき、それによって照明をさらに使うようになるリバウンド効果を招いてしまったことがわかりました。

確かに新たな結果が示すように、世界中の屋外照明の量はこの数年の間に増えました。「その結果、ヨーロッパの半分と北アメリカの4分の1が大幅に修正された明暗サイクルを体験すると共に、世界は蔓延する『夜の喪失』を経験した」と、Scientific Advancesに掲載された新たな研究論文の研究者たちはつづっています。

この研究では、気象観測衛星スオミNPPに搭載された24時間対応バンド(DNB)が収集した高画質画像を分析。このセンサーの空間分解能は750メートル(2460フィート)で、500-900nmの波長の光を「可視」できます(人間が可視できる波長域は400-700nm)。従来の照明器具ではDNBが検出できる赤外線が放たれていましたが、LEDからはそのセンサーでは可視できないブルーライトが大量に出ます。そのため各都市が街灯をLEDに替えるにつれ、(人間の目には同じ明るさに映るものの…)衛星が観測した光の量は減るという結果に。

「そういった理由から、(例えそれが事実ではなくても)豊かな国々では暗くなっているだろうと僕は期待していました。ところが、豊かな国々では変わらないし、多くの国々では(光が)増えているのを観測したのです」と研究の主著者でドイツ地球科学研究センター(GFZ)の研究員であるChristopher Kyba氏は米Gizmodoの取材で語ってくれました。「それはつまり、LEDに替えることでエネルギーを節約している都市があるにもかかわらず、他の場所は新たなあるいは(新エネルギーを必要とする)明るい照明器具を導入して、もっと明るくなっているということ。だからそのデータは、世界的なスケールでLEDが街灯設備のエネルギー消費を減らしているという仮説とはつじつまが合いません


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Image: Carla Schaffer/AAAS


人工照明が発明されて以来、研究者たちはその安定した成長を記録し続けており、その傾向がいつ止まるのか疑問に思っています。20世紀の後半、電灯は年に3〜6%の推定成長率で増えました。今回の研究によれば、2012年から2015年にかけて地球の屋外の人工照明は毎年2.2%ずつ増えて、光の総量は毎年1.8%ずつ増えたことになります。この期間の夜間の照明について、60近くの国々が110%から150%という急増を見せ、一方20カ国は150%以上の高い増加率を経験。変わらなかったのは約40カ国で、夜間照明の低下率を経験したのは16カ国のみでした。

Kyba氏は、「もちろんこれらの増加率は世界各地で一貫しているわけではなかった」と指摘しています。アメリカやスペインのような先進国では照明の増加率は変わらないままでしたが、南アメリカ、アフリカとアジアのほとんどの国では増えていました。シリアやイエメンといった戦争で荒廃した国々では、屋外の照明の割合は減っていました。夜間照明においては、世界のほとんどが未だに第一世界(先進国)の夜間照明の水準に追いつこうとしていると新たな研究はと示します。

不穏なことに、この研究のデータで示唆されるよりも、提示された結果の方がさらにひどいかもしれません。というのも、前述したようにDRBは可視光線で短波長のブルーライトを検出できません。そのため地球の夜間はデータで示されるよりも明るいのです。

「この研究は私たちが推測した2つの点をデータで認めているから重要なんです。光害の増加率は世界規模で上昇し続けるということ、そして古いテクノロジーからLEDへの街灯の置き換えは全世界的なエネルギー使用量の減少という意味では期待された恩恵をもたらしていないということです」国際ダークスカイ協会の専属物理学者であるJohn Barentine氏は米Gizmodoの取材にこう語りました。「後者の問題は、いくつもの政府が公約したエネルギー使用量の減少に基づき、街灯をLEDに置き換えるよう説得させられたから特に重大なんです」とのこと。

今回の研究に関わっていないBarentine氏いわく、LED照明の改善されたエネルギー効率によって節約された分のコストは、光害と二酸化炭素の排出という点での環境への重大な影響とともに、より多くの照明の開発に向けられているとのこと。


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Image: Earth Science and Remote Sensing Unit, NASA Johnson Space Center
2010年と2015年にISSから撮影されたカナダ、アルバータ州のカルガリー。2010年と比較すると、郊外の多くの場所が夜でも明るく、数多くの住民がオレンジ色のナトリウム灯からLED灯に変えた。


「地球規模の光害の問題を、前代未聞かつ驚異的と言い表しても誇張ではない」と同氏は言います。「エネルギーの問題を超えて、夜間の人工照明は人間を含む地球上のほとんどすべての生き物の健康と幸せに大きな環境的な影響を及ぼします」

夜間照明は深刻な環境汚染であり、夜行性の動物や植物、そして微生物を混乱させると考えられています。さらには生物学的な概日リズムを乱して代謝異常を引き起こすので、人間の健康にも悪影響なのです。

エクセター大学の群集生態学者Thomas Davies氏は今回の研究には携わっていませんが、夜間における人工照明が世界的にはびこる汚染であることは周知の事実だけども、その普及率を推定することは技術的に難しいものだったと語っています。

「この研究はこういった技術的な問題の多くを克服して、人工照明汚染における全世界的な普及率の信頼できる評価を提供しています」と同氏は米Gizmodoに語ってくれました。「夜間の環境を照らすことが、環境と人間の健康において幅広い悪影響をもたらし得ると知っていることを踏まえると、その数字は本当に衝撃的です」とのこと。

Barentine氏は、この問題の解決策は実はとても単純なものだけど、夜間における照明との付き合い方を徐々に変えることが求められると言います。

「水平線上に光が直接漏れないように、すべての街灯設備を完全に覆う仕様にすれば、その問題は即座に半減できる」と彼は米Gizmodoに教えてくれました。「明かりを照らす範囲が限定されるように街灯設備がきちんと設計されて設置され、その範囲を照らすのに必要な分だけの明るさが提供されるのであれば、我々はさらに世界中の光害の量を減らすことができる。最後に、もっと温かみのある電灯を選ぶことで短波長のブルーライトの放出を最小限に留めて、光の生物学的な脅威を減らせる」とのこと。

Barentine氏いわく、こういった変化をもたらすもっとも効果的な方法は公共政策を通してなので、私たちはこういった方針が世界中の市町村、地方、そして国家の法へとこ組み込まれるよう働きかけるべきかもしれません。

これらの解決策は単純で理にかなっているものですが、夜間の照明が初めて使われる地域に押し付けるよりも、まずはそれが既に当たり前になっている先進国世界から取り組んでいきたいですね。



Image: NASA/JSC, Carla Schaffer/AAAS, Earth Science and Remote Sensing Unit, NASA Johnson Space Center
Source: Scientific Advances, International Dark-Sky Association
George Dvorsky - Gizmodo US[原文

(たもり)

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